道路構造物ジャーナルNET

関係機関と膨大な協議を行い、都市部の厳しい現場条件下で事業を着実に推進

首都高速道路 更新・建設局 総勢150人で大規模更新事業4件・新設事業1件等を担当

首都高速道路株式会社
更新・建設局
局長

諸橋 雅之

公開日:2023.11.15

鮫洲埋立部 プレキャストボックス設置が完了 調整コンクリートを施工中
 東品川桟橋部 年度内に橋脚構築が完了予定

 ――東品川桟橋・鮫洲埋立部更新事業について
 諸橋 高速1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部(延長約1.9km)は1963年の開通から50年以上が経過しました。1日平均約7万台という重交通路線に加え、海面に近接していることから厳しい腐食環境にあり、コンクリートの剥離や鉄筋の腐食などの損傷が多数発生していました。そのため、長期的な安全性を確保する観点から2016年から更新事業に着手しています。事業完了は2028年度の予定です。


事業概要図

 ――現況は
 諸橋 将来の上り線を暫定的に下り線として利用して、迂回路を上り線として使っています。現在は、更新下り線の工事が進んでいます。


施工ステップ図

 鮫洲埋立部(約0.6km)は、プレキャストボックスの設置が完了して躯体ができあがりましたので、調整コンクリート等を施工中です。それが完了したら東品川桟橋部の進捗に合せて舗装工に移行します。


鮫洲埋立部では調整コンクリート等の施工が進む

 東品川桟橋部(約1.3km)は、橋脚構築と桁架設を実施していて、年度内には橋脚構築が完了予定です。
 ――鮫洲埋立部での施工上の特徴は
 諸橋 狭隘な現場でのプレキャストボックスの運搬、設置が課題のひとつになりました。そこで、改造した30t級フォークリフトを用いて運搬から設置まで行い、予定通り完了することができました。


改造した30t級フォークリフトでプレキャストボックスの運搬、設置を行った

 ――耐久性向上の取組みでは
 諸橋 中空のプレキャストボックス構造の採用により、維持管理性の向上とともに耐久性向上を図っています。また、鉄筋はすべてエポキシ樹脂被覆鉄筋を採用しました。

東品川桟橋部 鮫洲埋立部側の狭隘部の桁架設では縦取りも採用
 恒久足場は高速大師橋と同様の「NSカバープレート」を採用

 ――東品川桟橋部は橋脚構築と桁架設が進んでいるとのことですが、具体的な進捗状況と施工方法は
 諸橋 桁架設は都道316号の交差部から両方向および更新区間両端から行っており、交差部からと芝浦側からの架設はほぼ完了し、現在は鮫洲埋立部側の橋脚設置と桁架設を進めています。


更新下り線の架設順序

 線形的に高くなっている更新区間は、旧羽田線を作業構台として使えましたので、橋脚を設置する箇所の旧羽田線のみを撤去したうえで、橋脚を設置し順次桁を架設していきました。ただ、更新下り線はモノレールと近接しているので、クレーンのブーム旋回時にモノレール上空を侵す架設等の際には、き電停止中に施工しなければなりませんでした。モノレール上空を侵すことなく架設できる軽量の合成床版を採用して昼間の架設も行うなど工程短縮に努めましたが、モノレールとの離隔が大きかった更新上り線の架設と比べると時間がかかっています。


線形が高くなっている更新区間での架設

合成床版(底鋼板)の架設

 さらに時間がかかっているのが、現在進めている鮫洲埋立部側の施工です。この区間は、鮫洲埋立部と隣接するため更新線の高さが低くなっていることに加えて、大井連結路と交差し、モノレールとの離隔も最小2mととても狭隘な区間になっています。そのため、重機などが作業構台から直接進入できないことから、鮫洲埋立部側から芝浦側に向かって、旧羽田線の撤去、橋脚設置、桁架設を橋脚間ごとに実施しています。
 大井連結路との交差部の施工では、大井連結路による上空制限があってクレーンベント工法での桁架設ができないため、縦取り設備を用いて桁を架設しました。


鮫洲埋立部側の狭隘区間での架設。大井連結路との交差部では縦取りで架設を行っている

 ――縦取り架設以外は、クレーンベント工法となりますか。使用したクレーンは
 諸橋 基本的にはクレーンベント工法を採用しています。架設には、100t吊~220t吊クレーンを使用しています。径間ごとの作業半径や最大架設重量に応じて最低限の吊上能力のものを選定しています。
 都道や河川との交差部では一括架設を行っていて、300t吊や550t吊のクレーンを用いています。
 ――架設ブロックのサイズと総数は
 諸橋 1径間約45mの鈑桁(3主桁)を5つのブロックに分割しています。総ブロック数は約400個となります。
 ――防食対策では、橋脚基部は工場製作時にステンレスライニングを表面に溶接し、そのほかの部分はAl-Mg溶射を行った後に重防食塗装を施しています。桁には、景観性と維持管理性を確保し、外部からの劣化因子を遮断するために、中空構造の恒久足場を設置すると聞きました。採用する恒久足場は
 諸橋 「NSカバープレート」です。高速大師橋と同じものを採用しました。


更新線に設置された「NSカバープレート」

池尻・三軒茶屋出入口付近 橋脚基礎と一体化されている地下躯体の補強を実施中
 池尻の入口と出口の位置入れ替えと付加車線増設で渋滞対策

 ――池尻・三軒茶屋出入口付近更新・付加車線増設事業は
 諸橋 本事業では多数の損傷が発生している床版の更新と、渋滞対策として池尻の入口と出口の位置入れ替え、付加車線の増設を行います。事業延長は約1.5kmです。


事業概要図

 まず、床版更新についてですが、当該区間の橋脚基礎は東急田園都市線のトンネルと国土交通省が所管する共同溝と一体構造となっています。また、池尻と三軒茶屋出入口がセンターランプであることから幅員が広くなっています。そのため、橋脚横梁の張り出しが通常の橋脚よりも長くたわみやすい構造となっており、その構造上の特性から床版下面に亀甲状のひび割れが多数確認されています。1971年の供用開始から50年以上が経過し、交通量が約11万台/日(2022年度平日平均)という重交通路線であることも床版損傷の一因であると考えられます。そこで長期的な安全性の確保を目的として、耐久性の高い床版に更新することにしました。


事業区間の構造と現況

 また、床版更新にともない、現在の構造基準に基づき路肩の拡幅が必要となるため、池尻~三軒茶屋間の幅員を両側に最大約0.75m拡げます。
 ――床版更新事業に先行して地下構造物の補強工事を実施していますね
 諸橋 東急電鉄に委託して進めてもらっています。
 ――東京オリンピック後には補強工事は完了する予定とのことでした
 諸橋 最終電車通過後、線路点検もあるので、補強工事の施工時間がとても限られています。差し筋での補強を行っていますが、限られた時間内で昔の構造物に対して慎重に施工しているので、まだ数年かかる予定です。
 ――交通量約11万台/日、高架下には国道246号が走り、その国道横に建築物が連坦しているという非常に厳しい条件下で、どのように床版更新を行っていくのか、検討していることがありましたら教えてください
 諸橋 交通に与える影響を最小限にするために、東品川桟橋・鮫洲埋立部では迂回路を活用し、高速大師橋では通行止め期間を2週間にする工夫を行い、日本橋区間は更新線を完成させて一気に切り替える方法で更新事業を進めています。しかし、ここではその決め手がありません。コロナ禍で首都高全体の交通量が最大3割減少した時でさえ、本区間だけは渋滞していました。これだけ交通量が減少しても渋滞がなくならないボトルネックは相当深刻です。
 検討を重ねた結果においても、長期間にわたって1車線規制や通行止めを繰り返さなければなりません。東名高速につながる大動脈である3号線で交通影響を低減するためにどのような工法を採用すべきか、現在も検討を続けています。
 ――耐久性の高い床版に更新するとのことですが、構造上の特性から軽量化を図るために鋼床版を採用しますか
 諸橋 施工方法検討と併せて検討していきます。
 ――最大約0.75mの拡幅は構造上、問題ありませんか
 諸橋 問題ありません。
 ――渋滞対策としての付加車線増設事業は
 諸橋 中央環状線と接続する大橋JCT供用後、前述のような新たな渋滞発生箇所となってしまいました。下り線は、大橋JCTからの合流直後に池尻の入口があり、その先の登り坂がボトルネック区間となっていて線形的に不利な条件が揃っています。上り線についても三軒茶屋入口と池尻出口、大橋JCTの位置が近く、分合流が錯綜しています。
 そこで、池尻の出入口を付け替え、付加車線を増設する渋滞対策を更新事業と合わせて行います。出入口の付け替えにより、下り線は池尻入口から流入する車両がボトルネック区間の先で本線に合流できるようになり、上り線は三軒茶屋入口と池尻出口の位置が離れますので分合流の錯綜が緩和されます。さらに、付加車線の増設でよりスムーズな分合流の実現を図ります。現在、上り線は三軒茶屋入口と池尻出口の間が3車線で、池尻出口から大橋JCTまで2車線となっていますが、付加車線増設により大橋JCTまで3車線を確保できるようになります。


事業区間の現況と付加車線増設後

 ――付加車線の延長は
 諸橋 上り線が約400m、下り線が約300mです。
 ――どのように付加車線を設置していきますか
 諸橋 具体的な施工方法については今後検討していくことになります。

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