当NETの姉妹メディアである「週刊鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。4回目は、瀧上工業の瀧上晶義社長と、高田機工の中村達郎社長の記事を掲載する。
――22年度の業績は
瀧上 売上高が186億1,700万円(連結)、営業利益が3億6,300万円、経常利益が8億2,500万円で増収増益となった。各部別でまず橋梁事業は、全体の発注量が4年連続20万t割れの厳しい状況だ。鋼道路橋の発注量が前年比18%減と厳しく、受注競争の熾烈化が続いている。一方、保全工事は堅調に推移し、当該事業の重要性がますます高くなる環境下にある。こうした状況の中で、当社はグループ企業も含めて新設橋梁、保全工事ともに大型案件を受注することができたと同時に、技術提案とECI方式による対象工事の契約で、橋梁部門の受注高は290億6,000万円(前年同期比156%増)となった。
次に鉄骨事業では、民間設備投資に持ち直しの動きが見られるものの、首都圏の再開発案件の遅延による工場山積みの低下や資材価格が高値安定で推移し、電力、運搬費等のコストアップから、経営環境は決して良好とは言えない。鉄骨部門の受注高は42億円(同30%増)、鋼構造物事業の総受注高は332億7,000万円(同128%増)となっている。
一方、損益では橋梁事業が受注量の増加で工場の稼働は改善し、道路橋中心に設計変更の増加と新規の連結子会社の業績を取り込んだことで売上高・営業収支が増加。また、鉄骨事業では、4年前から積極的に取り組んでいる一般の大型工事が受注増となり、生産量は増えたが、橋梁、鉄骨ともに工期の延伸によって、予定していた山積みが大きく変動するなど、材料価格の高騰も影響し、昨年と同様に厳しい結果となった。
――中期経営計画も3期目に
瀧上 一昨年度から始まっているこの計画は、コロナ禍を契機として社会環境の変化に合わせて「柔軟で強靭な企業体質」を目指している。その実現のために各事業の基盤強化に合わせて入札だけに頼らない企業体を作り、最終年度の今期も、多角化戦略に取り組む。
具体的な事業計画、課題として鉄骨事業は、年間の生産目標である1万2,000t体制を目指す。特に首都圏における大型プロジェクトの受注で存在感を示していく方針に変りなく、今期から来期にかけて、本社工場に約20億円を投じ、これまで混在していた橋梁・鉄骨の各ラインを分離した生産体制に再編する。これに合わせて、老朽化している溶接機や各加工設備を一新し、生産性向上に努め、大型工事に対応できる生産体制を確立させる。また橋梁事業では、引き続き、国土強靱化計画の中で、着実に受注量確保に注力し、技術提案力と積算精度の向上を図る。
一方、保全事業では約30~40億円の売上高を確保する中、現在も高速道路の床版取替えや橋梁の耐震補強工事の受注活動を続けている。今後もグループ各社の力を結集し規模に限らず受注拡大を目指していく。
武豊北IC・Bランプ橋
――組織改革や人材確保、育成、その他の活動は
瀧上 まず昨年末に課長以上の50代(13人)を中心に『10年後のグループを考える』をテーマに議論を始めている。また、事業創造本部を立ち上げた。この組織では、橋梁・鉄骨、海外の各事業に当てはまらないビジネスシーズを育成して、グループ経営を強化していくことになる。
また、今年の4月に11人の新入社員を迎えた。彼らは会社で取り組むべきSDGs活動を推進するにあたり、自ら、街中のゴミを拾いながら走る・歩くというスウェーデン発の『プロギング』というプロジェクト企画を立ち上げてくれた。現在、地元・半田市とは共同開催のイベントを計画中だ。また、昨年度から新しい人事評価制度がスタートし、人手不足が叫ばれる中、2024年問題を控え、労働環境改善にさらに取り組む。現状、今期は売上高210億円、営業利益8,000万円、経常利益5億円を見込んでいる。
(聞き手・和田徹、文中敬称略)