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総管理延長約1,400km。橋梁は約1,200橋、トンネルは約130チューブを管理

NEXCO東日本東北支社 東北道原瀬川橋床版取替工事は同社初の迂回路を設置して施工

東日本高速道路株式会社
東北支社
管理事業部長

吉原 健一

公開日:2023.07.28

供用後30年以上経過した橋梁は全体の53%
 トンネルでは48%

 ――管内の橋梁の内訳は
 吉原 約1,200橋を管理しており、そのうち鋼橋が39%、PC橋が44%、RC橋が17%となっています。延長別では50m未満が49%、50m以上が51%、供用年次別では30年未満が47%、30年以上40年未満が19%、40年以上が34%となっております。
 ――トンネルについては
 吉原 130チューブを管理しています。そのうち、NATM工法が77%、在来工法が22%、開削工法が1%です。延長別では500m以下が37%、501m以上1,000m以下が26%、1,001m以上3,000m以下が32%、3,001m以上5,000m以下が5%で、供用年次別では30年未満が52%、30年以上40年未満が26%、40年以上が22%です。

定期点検結果 Ⅲ判定は橋梁約15%、トンネル約30%
 対応に時間の要するものは変状確認後、5年を目途に補修

 ――橋梁とトンネルの定期点検結果は
 吉原 2022年度末時点での健全性判定区分の内訳は、橋梁ではⅠが約10%、Ⅱが約75%、Ⅲが約15%、トンネルではⅡが約65%、Ⅲが約30%です。
 ――点検結果に基づく対策の進捗状況は
 吉原 点検結果から毎年新たな変状箇所が確認されていますが、設計が伴うなどで対応に時間の要するものについては変状確認後、5年を目途に補修するように努めています。また、第三者被害が想定される補修等については、適宜緊急、応急的な補修を実施しています。
 ――構造物の劣化状況と対策をお教えください
 吉原 橋梁では、主に凍結防止剤の散布や交通の繰り返し荷重などの要因により変状が発生しています。床版の損傷についてはリニューアル工事でRC床版をPC床版に更新しています。弱点となりやすい床版同士の接合部には防錆処理された鉄筋を使用し、塩害に対して耐久性を向上させています。また、床版の更新にあわせ、壁高欄の更新や床版上面に高性能床版防水を施工しています。防護柵としての剛性の向上や高い防水性能による橋面からの水の浸入防止を図り、長期健全性の保持が期待できます。同時に、補修後も繰り返し発生していた橋面のポットホールの発生頻度を減少させることで、走行性、安全性の向上も図っています。
 トンネルでは、周辺の土圧変化により生じる路面隆起が発生しています。対策として、インバートを設置して閉合構造とすることで構造的な安定性を向上させ、走行安全性と建築限界の確保を図ります。また、地山中の湧水や地下水などにより地山が脆弱化して緩むことで生じる覆工への過度な土圧への対策として、覆工コンクリートの内面補強などを実施することで、トンネル覆工の安定性が向上するとともに、はく落などによる第三者被害のリスクに対応しています。
 ――具体的な橋梁の劣化事例と対策は
 吉原 東北道の原中橋ではコンクリートの浮き、剥離が発生し、変状箇所を除去したうえで防錆剤入り断面修復・表面被覆工を実施しました。


原中橋 劣化状況(左)/施工中(中央)/施工後(右)

 ――トンネルでのインバート設置工の実績がありましたらお願いします
 吉原 磐越道の鳥屋山トンネル(上下線)で春・秋の2期に分割し実施しました。今後の必要箇所については調査を含め検討中です。
 ――覆工コンクリート補強の実施トンネルと施工方法は
 吉原 東北道の梨木トンネル(上下線)、佐比内トンネル(上下線)、兄畑トンネル(下り線)、坂梨トンネル(上り線)で実施しました。炭素繊維シートを用いた繊維接着工法を用いて施工しています。


覆工コンクリート補強工と施工完了

高性能床版防水は2021~2025年度で約230橋を施工予定
 ASRよりも塩害での劣化が顕著

 ――床版防水工の施工状況は
 吉原 高性能床版防水(グレードⅡ)仕様を標準とし、中期経営計画(2021~2025年度)では床版取替工事とあわせて施工するものも含めて約230橋を予定しています。2021年度と2022年度には約70橋(約4万㎡)で施工しています。
 ――塩害やASRによる劣化は確認されていますでしょうか。劣化が確認されている場合はその状況と対策をお願いします
 吉原 ASRについてはほとんど確認されていません。塩害については凍結防止剤散布の影響から、下部工・橋台ではコンクリートを膨張させ、ひび割れ、剥離、鉄筋露出などの変状が確認されています。これらのひび割れ、剥落部から凍結防止剤などが内部まで侵入することも影響し、鉄筋腐食の促進、水の影響などから劣化を加速させていると考えています。これらの劣化がさらに進行した場合、剥離、剥落などの第三者被害も引き起こす恐れもあり、下部工などで断面修復や表面被覆などの対策を行っています。
 ――具体的な事例では
 吉原 先に挙げた東北道の原中橋などがあります。

耐震補強対象橋梁は約410橋
 東北道・天狗橋 鋼V脚式連続ラーメン橋の耐震補強を実施予定

 ――耐震補強の進捗状況を教えてください
 吉原 大規模地震発生時に速やかに機能を回復するための耐震補強、いわゆる“さらなる耐震補強”の対象橋梁は管内では約410橋あります。そのうち中期経営計画(2021~2025年度)では約80橋の耐震補強を順次進めます。
 管内の対象橋梁のうち、約3割については工事契約済みで、順次着手しております。


秋田道・柳田橋の耐震補強事例

 また、管内にはロッキングピアを有する橋梁が35橋ありますが、対策はすべて完了しています。
 ――長大橋・特殊橋で耐震補強を実施もしくは計画している橋梁がありましたら
 吉原 東北道の安代IC~鹿角八幡平IC間に架かる天狗橋(橋長上り線181.5m、下り線171m)があります。鋼V脚式連続ラーメン橋で、上部工・下部工ともに補強が必要な構造となっています。「さらなる耐震補強」として、大規模地震発生時の緊急輸送路機能をいち早く確保するために耐震補強工事を実施します。


天狗橋 全景

 ――補強工事の内容は
 吉原 現在、設計中となっています。
 ――施工にあたっての課題は
 吉原 急峻な山岳地帯に位置し、国道282号や鹿角市道、一級河川米代川と交差しており、狭小ヤードでの施工が課題となります。

2023年度は約80橋で支承と伸縮装置の取替えを予定
 鋼橋塗替え塗装は2023年度に約5万㎡を予定

 ――支承と伸縮装置の取替え実績と予定は
 吉原 2022年度は約60橋で支承と伸縮装置の取替えを実施しています。2023年度は約80橋で支承と伸縮装置の取替えを実施する予定です。
 ――鋼橋の塗替え実績と予定を教えてください
 吉原 2022年度は八戸道の稲庭橋(上下線・0.9万㎡)、漆畑橋(上下線・0.7万㎡)など、約10橋(約6万㎡)で塗替え塗装工事を行っています。2023年度は、東北道の一本木川橋(0.3万㎡)など約10橋(約5万㎡)で施工する予定です。


稲庭橋 施工前と施工後

漆畑橋 施工前と施工後

 ――金属溶射などの新しい重防食の採用は
 吉原 塗替え塗装での採用実績はありません。
 ――PCBや鉛などの有害物を含む既存塗膜の処理について
 吉原 旧塗膜を調査し、有害物質の含有量の調査を実施し、基準値を超えて含有している場合、湿式による作業や有効な防護具の着用などにより、作業従事者が吸引することのないよう対策を実施しています。
 ――耐候性鋼材を採用している橋梁とその健全度は
 吉原 管内では7橋で採用しており、いずれも健全性判定はⅡでした。採用橋梁は、八戸道・大鳥第二橋(上下線)、常磐道・新川橋(上下線)、仙台北部道路・沢乙高架橋、石積高架橋、成田高架橋となります。いずれの橋梁でも耐候性鋼材部の変状にみられる、凍結防止剤の漏水や飛沫塩の影響による腐食劣化については、現時点で構造上支障となるものは確認されてません。

防災対策では水守隊によるのり面の排水掃除を実施
 迅速な復旧のためには技術伝承を行っていくことが必要

 ――近年、豪雨による土砂災害が相次いでいます。防災に対してどのようにお考えで取り組んでいるか、教えてください
 吉原 土砂災害への対策には、日頃からののり面排水の通水性確保が重要と考えています。植栽による枝葉・土砂堆積により雨水が排水溝から越流することによるのり面土砂が洗掘・流出することを防ぐため、各管理事務所に排水掃除専門の部隊(水守隊)を設置し、のり面の排水掃除を実施しています。



「水守隊」によるのり面の排水掃除

 また、防災対策は多岐にわたりますが、災害発生時に速やかに復旧できるように、グループ会社を含めて資機材の手配などを日ごろから準備しています。迅速な復旧のためには、技術伝承をしっかりと行っていくことも必要です。災害が頻発、激甚化していますので、これまで以上に、リスク感度を上げて対応していかなければなりません。
 ――管理用地以外のいわゆる“もらい災害”については
 吉原 2022年8月には、東北自動車道の小坂IC~碇ヶ関IC間で豪雨による用地外からの土砂流入が発生しました。全社的に取り組まなければならない課題ではありますが、用地外の地盤状況についてレーザースキャナーなどを活用し、リスクの把握を進めています。



土砂流入の状況と応急対策

メンテ東北 車線規制時に色と音と振動で通過車両に注意を促す「高速用簡易パンフ」
 エンジ東北 橋梁張出部の塩害対策としての「簡易水切り」などを展開・販売

 ――維持管理における新技術・新製品などの活用事例をお願いします
 吉原 橋梁における老朽化対策では、橋梁張出部の塩害対策としての「簡易水切り」や特殊施工機械により、桁と下部工(橋台)との隙間が12cm以上あれば施工できる塩害対策電気防食補修工法「GECS工法」(いずれもネクスコ・エンジニアリング東北)などがあります。


簡易水切りとその施工事例

GECS工法

 また、橋梁に付属する検査路などで、腐食劣化による老朽化から撤去・再設置する際に高耐久に優れるFRPなどの材料の採用を検討中です。
 規制時の安全対策では、簡易に設置可能なハンプ(オレンジ色のリング状)により、色と音と振動で通過車両に注意を促して居眠り・脇見運転の発生を抑える「高速用簡易パンフ」などがあります(ネクスコ・メンテナンス東北)。


高速用簡易ハンプ

 雪氷期の安全対策では、夜間の視程障害時に路肩ライン位置を表示してドライバーの運転支援を行う「帯状ガイドライン」や、雪氷作業者後方の路面上に緑色のラインを表示して作業者への衝突防止を図る「セーフティライン」があります(いずれもネクスコ・エンジニアリング東北)。


帯状ガイドライン

セーフティライン

 ――FRP製やアルミ製検査路の採用はまだ管内ではありませんか。採用実績がありましたら、路線名と橋梁名を教えてください
 吉原 採用橋梁は、東北道の保戸沢橋(本線橋、ランプ橋)、秋田道の満屋橋などとなります。
 ――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)

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