総管理延長約1,400km。橋梁は約1,200橋、トンネルは約130チューブを管理
NEXCO東日本東北支社 東北道原瀬川橋床版取替工事は同社初の迂回路を設置して施工
NEXCO東日本東北支社は、高速道路10路線と一般有料道路8路線の合計18路線1,396.1kmを管理している。供用後40年以上経過した区間は3割で、10年後には管内橋梁の約8割が供用後30年以上となる。老朽化が進行するなかで、2023年度にはリニューアルプロジェクトとして21橋の床版取替工事を実施する予定だ。その内容を含めて管内の維持管理状況を、吉原健一管理事業部長に聞いた。
経過年数に加えて凍結防止剤散布の影響により老朽化が進行
床版取替工事 2024~2025年度は約70橋を計画
――管理エリアの概要からお願いします
吉原部長 東北支社では東北6県の高速道路10路線(1,281.1㎞)と一般有料道路8路線(115km)の合計18路線を管理しています。総管理延長は、1,396.1kmとなります。
管理延長の約5割の区間で供用後30年が経過しており、更に供用後40年以上経過した区間が約3割あります。経過年数に伴う老朽化に加えて、大型車交通量の増加、凍結防止剤などの厳しい使用環境により、老朽化が進行しています。さらに、10年後には管内橋梁の約8割が供用後30年以上経過することとなり、東北道はもとより、八戸道、山形道等の横断道においても老朽化の進行が予想されます。
老朽化が進行した構造物をいかに計画的に、かつ着実に修繕していくのかが課題となっています。
――高速道路リニューアルプロジェクトの進捗状況と、どのような取組みをされているか教えてください
吉原 2021~2025年度の中期経営計画では、約130橋で床版取替工事を予定しており、2021年度に13橋、2022年度には17橋の施工を行いました。2023年度は21橋の予定で、2024~2025年度には約70橋で計画をしています。
床版取替工事(予定)一覧表(NEXCO東日本東北支社提供。以下、同)
これまで、同一規制内で複数橋の施工を実施するなど、渋滞対策や工事期間の短縮を図りながら事業促進に取り組んできました。また、渋滞予測に基づいて繁忙期の夏を含めた通期(春夏秋)での施工や、2023年度では渋滞回避のために4車線確保できるように迂回路を構築した床版取替工事を進めており、さらなる事業促進に取り組んでいます。
リニューアル工事の多くは規制が伴うため、高速道路を利用するお客さまに対し、長期の規制や広域迂回などにもご理解とご協力をいただくことが必要であり、お客さまに対するリニューアル工事の積極的な情報発信は工事の実施と同様に大変重要と考えています。
交通量の多い区間の工事では、土日などの休日は渋滞が見込まれることから、さらなる規制日数短縮のため、工期短縮に資する技術提案を取り入れることが可能な契約制度を用いているところです。
迂回路の仮橋延長は約310m 上部工はプレガーダー橋を採用
鳴瀬川橋床版取替工事 約4,000㎡の床版取替えをⅡ期にわたる分割施工で実施
――渋滞対策として別線迂回路を設置して4車線を確保する取り組みは、4月の本社定例会見でも特徴的な工事事例として紹介されていました。東北道の本宮IC~二本松IC間に架かる原瀬川橋と同橋に近接する杉田川橋での床版取替工事での取組みですね
吉原 迂回路を設置して工事を行うのは当社で初めてとなります。迂回区間の総延長は約820mで、そのうち約310mに仮橋を構築しています。7月上旬から迂回路を使用した車線運用を行い、下り線、上り線の順で施工していきます。
原瀬川橋床版取替工事 概要
約820mにわたる迂回路
――仮橋の構築はどのように行いましたか
吉原 上部工はプレガーター橋を採用しました。河川と斜め方向に交差しているため、最大40m程度のスパンとなっている箇所もあります。架設は仮橋の側方から200tと350t吊クローラークレーンを用いて順次行いました。
上部工(プレガーター橋)の架設。最大支間長は40m程度となった
基礎は杭基礎を採用していて、杭長は30m程度となっています。杭基礎は、ウォータージェット併用バイブロハンマー工法を採用しており、部分的に貫入できなかった層にはダウンザホールハンマー工法も使用しました。
支持杭の打設
――床版取替面積が大きいなど、他に特徴的な工事はありますか
吉原 東北道の大衡IC~古川IC間に架かる鳴瀬川橋・下り線(橋長404m、鋼3+3径間連続箱桁橋)では、A1~P6間約4,000㎡の床版取替えを実施します。当該区間の断面交通量は30,000台/日を超え、ゴールデンウィークやお盆以外にもシルバーウィークや3連休に大規模な渋滞が発生することが予想されました。さらに、橋長が約400mと長く、対面通行規制では施工可能時期が限られることから、橋軸方向で施工を分割し、Ⅱ期にわたり施工を行うこととしました。
鳴瀬川橋 全景
また、同橋のA1側近傍には三本木PAがあるため、A1側に十分な施工ヤードが確保できないことも課題となっていました。そこで、まず2023年度秋のⅠ期施工でA1側より1径間程度、先行して床版取替を行うこととしました。これによりA1~P1間を施工ヤードとして使用することが可能になります。次に、2024年度春のⅡ期施工では、橋梁の中央付近よりクレーン2台を用いた両開き施工で工程促進を図っていきます。
鳴瀬川橋(上り線)プレキャスト床版架設要領図(参考図)左:A1~P1/右:P1~P6 ※拡大してご覧ください
分割施工での既設床版と新設プレキャストPC床版の接合は、短期間ですが雪氷期間を跨ぎ供用することとなりますので、RC接合にて連続構造にすることとしました。Ⅱ期施工では、このRC接合部をウォータージェット工法で幅150mm程度を撤去することになりますが、現計画では大きなクリティカルとはならないと考えています。
――東北道の仲田橋床版取替工事では、下川原橋(Gランプ)の床版取替工事も行います。1車線である同橋の施工はどのように行っていますか
吉原 下川原橋は盛岡ICのランプに架かる橋梁となります。2022年度には国道46号へのOFFランプ側を施工し、2023年5月~7月に国道46号からのONランプ側を施工しました。1車線となりますので、橋梁部を含む約200mで終日片側通行規制を行って工事を行いました。
下川原橋(Gランプ)床版取替工事
コッター床版工法やスリムファスナーを採用して工程短縮を図る
――工期短縮の事例では
吉原 東北道の陣場橋では「コッター床版工法」を採用しています。床版接合にコッター式継手を用いることで間詰部のコンクリート打設が省略できるため、工期短縮を図れます。2022年度に上り線を施工し、2023年度は下り線を施工します。
陣場橋床版取替工事では「コッター床版工法」を採用
また、2022年度に施工した東北道の越河橋(上下線)では、超高強度繊維補強コンクリート(UFC)を使用して間詰部を小さくできる床版接合工法「スリムファスナー」を採用しています。
越河橋床版取替工事では「スリムファスナー」を採用
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