秋田道 湯田IC~山内PA間では今秋から本体工事に着手予定
NEXCO東日本東北支社 4路線合計約63kmの4車線化事業を推進
東日本高速道路株式会社
東北支社
前 建設事業部長
大築 正明 氏
常磐道 橋長1,300m以上の木戸川橋が事業工程上で重要に
Ⅰ期線建設時にプレキャストセグメント工法を用いた2橋はPC橋、鋼橋両方を検討
――常磐道の4車線化事業(合計約14km)について、各区間の事業化年度と進捗状況を教えてください
大築 浪江IC~南相馬IC間(1.9km)が2019年度末、相馬IC~新地IC間(6.0km)が2020年度末、広野IC~ならはSIC間(5.6km)が2021年度末に、それぞれ事業化されています。
浪江IC~南相馬IC間は発注手続き中、相馬IC~新地IC間は詳細設計実施中、広野IC~ならはSIC間は測量・調査を実施しています。
――構造物数は
大築 浪江IC~南相馬IC間は橋梁が2橋で構造物比率は約7%となります。相馬IC~新地IC間はⅠ期線では橋梁が6橋あり、広野IC~ならはSIC間はⅠ期線3橋となっています。各区間ともトンネルはありません。
常磐道 4車線事業化区間(いわき工事事務所管内図)
事業区間のⅡ期線として確定している橋梁
事業区間の橋梁(Ⅰ期線)一覧(Ⅱ期線として確定している橋梁は除く)
――事業区間で特徴ある構造物は
大築 広野IC~ならはSIC間には、橋長1,300mを超える木戸川橋があります(Ⅰ期線は1,392.5m、PC13径間連続箱桁+PC14径間連続箱桁橋(プレキャストセグメント工法))。事業工程上、非常に重要になりますので、橋梁形式と架設方法などの検討を行っています。
木戸川橋(Ⅰ期線)
――Ⅰ期線ではプレキャストセグメント工法を採用していますが
大築 同区間のⅠ期線3橋のうち、木戸川橋と井出川橋(737.8m、PC11径間連続箱桁橋)で同工法を採用しています。両橋の間にはならはPAがあり、建設時にはそこをセグメント製作ヤードとして使用できたことから採用を決定しました。しかし、PAは供用済みですので、Ⅱ期線では製作ヤードの確保を含めてPC橋と鋼橋の両方を検討しています。
――浪江IC~南相馬IC間の2橋は
大築 橋長104mの請戸川橋(鋼2径間連続2主鈑桁橋)と、34mの室原橋(PCポータルラーメン橋)となります。
請戸川橋(左)と室原橋(右)(Ⅰ期線)
請戸川橋は下部工を浪江工事として発注済みです。基礎形式は場所打ち杭、直接基礎、下部工形式は逆T式橋台となります。上部工の発注は未定ですが、高圧線が近接していて、クレーン架設では厳しい条件となるため、送出し架設を計画しています。
室原橋は基礎形式が鋼管ソイルセメント杭、下部工形式が逆T式橋台です。国道114号を跨いでいるため、下部工においても国道を規制しながら施工していかなければなりません。
――基礎に鋼管ソイルセメント杭を採用した理由は。また、採用工法を教えてください
大築 地盤条件としては場所打ち杭が適していたので、場所打ち杭の検討を行いましたが、配置可能な杭径・杭本数では安定照査を満足しなかったことから、Ⅰ期線で採用した鋼管ソイルセメント杭の適用を検討し採用することとしました。なお、採用工法は未定です。
――相馬IC~新地IC間で特徴ある橋梁は
大築 Ⅰ期線での最長の橋梁は大野台希望の橋で421mとなります。上部工形式は鋼8径間連続鈑桁橋で谷部を跨いでいます。
大野台希望の橋(Ⅰ期線)
大きな課題とはなっていませんが、Ⅰ期線の側道施工時にP6橋脚の脇の法面が崩落して補強を行いました。そのため、同じ位置に橋脚を構築できないので、支間割りを変更して設計しなければなりません。
――他5橋の下部工の設計で課題はありますか
大築 大きな課題はありません。
磐越道 地滑り地帯を有する西会津トンネルは対策工を検討
只見川橋はⅠ期線と同形式の鋼上路式逆ローゼ橋を採用予定
――磐越道の4車線化事業(約9km)について
大築 会津坂下IC~西会津IC間を2回に分けて事業化しています。まず、西側のⅡ工区(7.1km)が2019年度末に、その後、会津坂下IC付近のⅠ工区(1.7km)が2020年度末に事業化されました。
両工区とも詳細設計中でⅡ期線の構造物詳細は未定ですが、Ⅰ期線ではトンネルが3チューブ、橋梁が6橋あります。
磐越道 4車線化事業区間(会津若松管理事務所管内図)
事業区間の橋梁・トンネル(Ⅰ期線)一覧
――事業区間の特徴・課題は
大築 Ⅱ工区にあるトンネル3チューブは、最長の鳥屋山トンネル(Ⅰ期線:2,580m)のほか、いずれも延長が1,000mを超え、Ⅰ期線での合計延長では約5kmとなっています。このうち、西会津トンネル(Ⅰ期線:1,018m)は地滑り地帯を有し、Ⅰ期線施工時には西側坑口で地滑りが発生しました。このため、有識者を交えて対策工の検討を行っています。
西会津トンネル(Ⅰ期線)西側坑口
また、只見川橋はⅠ期線が鋼上路式逆ローゼ橋となっています。只見川の片門ダムの下流に架かっていて景観的に優れていることから、Ⅱ期線も同形式を採用する方針です。基本詳細設計は現在契約手続き中です。
只見川橋(Ⅰ期線)
――鳥屋山トンネルは
大築 Ⅰ期線では供用後に盤ぶくれが発生し、過去に緊急的にインバートを設置しています。新たな盤ぶくれの発生を抑制するために、インバート設置のためのリニューアル工事が必要になります。そこで、秋田道と同様にⅡ期線供用後にⅠ期線を通行止めにして対策工事を行う計画となっています。
――Ⅱ期線では最初からインバートを設置する計画ですか
大築 その計画です。西会津トンネルもインバートを設置します。
――3チューブのⅠ期線との離隔は
大築 トンネル中心間隔で30m程度となります。
仙台北部道路 JCT近くに位置する成田高架橋は交通運用を考えながら施工
――仙台北部道路の4車線化事業は
大築 2020年度末に利府しらかし台IC~富谷JCT間(5.8km)の事業化がされています。詳細設計中で、Ⅰ期線では橋梁が2橋あります。
仙台北部道路 4車線化事業区間
事業区間の橋梁(Ⅰ期線)一覧
――Ⅰ期線2橋の橋長、形式は。また、Ⅱ期線の形式はⅠ期線と同形式を想定しますか
大築 利府しらかし台IC側から、石積高架橋、成田高架橋となります。石積高架橋は橋長241m、成田高架橋は橋長325mでいずれも鋼6径間連続鈑桁橋です。交差条件もそれほど厳しくありませんし、地盤の問題もありませんので、Ⅰ期線とほぼ同じ形式になると思います。
石積高架橋(左)と成田高架橋(右)(Ⅰ期線)
――Ⅰ期線との近接施工など、施工上の課題がありましたら
大築 離隔は確保していますので、上下部工ともに通常の施工ができます。
大きな課題とは言えませんが、成田高架橋は富谷JCTの近くに位置しています。仙台北部道路が仙台都市圏高速環状ネットワークを形成する道路で交通量が多く、JCTという交通が輻輳する箇所の近くでの施工となりますので、交通運用を考えながら施工していく必要があります。
(仮称)いわき小名浜ICは工事全面展開中
SICの花巻PAと山形PAは舗装・施設工を実施
――追加IC新設事業について教えてください
大築 常磐道の(仮称)いわき小名浜ICは工事を全面展開中です。東北道の(仮称)栗原ICは土工の工事契約を締結したところです。
いわき小名浜ICの施工状況
――ランプ橋などの構造物については
大築 高速道路事業としてはありません。
(仮称)いわき小名浜ICは福島県が整備を進めているいわき小名浜道路と接続するICで、常磐道を横断する橋梁2橋の工事を当社が受託しています。1橋は2022年12月に架設済みで、残る1橋は今夏に架設する予定です。
(仮称)栗原ICも宮城県のみやぎ県北高速幹線道路と接続していて、東北道を横断するランプ橋1橋、跨道橋1橋の新設および跨道橋2橋の撤去を受託事業として行っています。
――SIC新設事業は
大築 東北道の花巻PA、東北中央道の山形PAは舗装・施設工を行っています。
花巻PAスマートICの施工状況(左:上り線/右:下り線)
山形PAスマートICの施工状況(左:上り線/右:下り線)
東北中央道の(仮称)天童南は土工工事に着手、(仮称)高畠は発注手続き中、東北道の(仮称)白石中央、常磐道の(仮称)小高は設計中、東北道の(仮称)八幡平は測量準備中となっています。(仮称)高畠のみが東京方面のハーフ形式で、他はフル形式となります。
(仮称)白石中央では、国道4号を跨ぐランプ橋2橋を予定しています。
――最後にICTの活用について
大築 土工の設計ではCIMを全面的に採用して、それを活かした形でICT土工の施工ができるように受注者と検討していく予定です。
また、遠隔立会などのツールを使いながら、省力化にも努めたいと考えています。遠隔立会は受注者の希望に応じて対応していく形をとっていますが、出来形計測などの検査で活用しているほか、ウェブ会議などでも使用しています。
――週休2日制工事について
大築 今後発注する工事は全面的に採用していきます。
――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)