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秋田道 湯田IC~山内PA間では今秋から本体工事に着手予定

NEXCO東日本東北支社 4路線合計約63kmの4車線化事業を推進

東日本高速道路株式会社
東北支社
前 建設事業部長

大築 正明

公開日:2023.06.29

 NEXCO東日本東北支社では、秋田自動車道、常磐自動車道、磐越自動車道、仙台北部道路の4車線化事業(約63km)と追加IC(2箇所)、スマートIC(7箇所)の建設事業を進めている。各区間の事業化年度が2018年度末~2021年度末であることから、調査・設計中の区間が多いが、2018年度末に事業化された秋田道の湯田IC~山内PA間では、山内トンネルの掘削を今秋から開始する予定だ。各事業の詳細について、大築正明前建設事業部長(6月28日付で東北支社副支社長に転任)に聞いた。

秋田道約35km、常磐道約14km、磐越道約9km、仙台北部道路約6kmを4車線化
 2022年度には仙台南部道路今泉IC~長町IC間(約2.9km)の付加車線が開通

 ――所管事業の概要から
 大築部長 東北支社管内での高速道路本線の新規建設事業はすべて完了しており、所管事業は暫定2車線の4車線化事業と追加ICおよびスマートIC(以下、SIC)の新設事業となります。2022年度には、仙台南部道路の今泉IC~長町IC間(約2.9km)の付加車線と、東北自動車道・菅生SICが開通しました。
 4車線化事業は、秋田道、常磐道、磐越道、仙台北部道路の4路線(約63km)で進めています。秋田道は北上西IC~横手IC間(約35km)、常磐道は広野IC~ならはSIC間、浪江IC~南相馬IC間、相馬IC~新地IC間の合計約14km、磐越道は会津坂下IC~西会津IC間(約9km)、仙台北部道路は利府しらかし台IC~富谷JCT間(約6km)となります。
 追加ICは東北道の(仮称)栗原ICと常磐道の(仮称)いわき小名浜ICの2箇所、SICは7箇所の建設事業を行っています。東北道の(仮称)八幡平、花巻PA、(仮称)白石中央の3箇所、東北中央道の(仮称)天童南、山形PA、(仮称)高畠の3箇所、常磐道の(仮称)小高です。
・記事中の写真・図版はすべてNEXCO東日本東北支社提供

秋田道4車線化 トンネルが事業区間の約4割を占める
 湯田IC~山内PA間(7.7km)の構造物比率は約47%

 ――4車線化事業の詳細について、まず秋田道からお願いします
 大築 3区間に分けて事業化されています。湯田IC~山内PA間(7.7km)が2018年度末、山内PA~横手IC間(7.7km)が2019年度末、北上西IC~湯田IC間(19.5km)が2020年度末の事業化となっています。


秋田道 4車線化事業区間

 進捗状況は、最初に事業化された湯田IC~山内PA間については山内トンネル工事と黒沢工事(黒沢川橋他1橋の下部工工事)の2件が契約済みとなっていて、残りの工事も今年度内には契約手続きを進めていきたいと考えています。山内トンネル工事は、今春から工事用進入路の工事を実施していて、今秋にはトンネル掘削を開始する予定です。
 山内PA~横手IC間については今年度内の工事発注に向けて詳細設計中で、北上西IC~湯田IC間は土質調査を行っています。
 ――事業区間(北上西IC~横手IC間)の特徴は
 大築 山岳地帯を通過するため、構造物が非常に多く、事業区間の約4割(約14km)がトンネルとなっています。そこが工程上のクリティカルになると考えています。また、JR北上線や奥羽本線を跨ぐ橋梁が3橋あることも特徴となっています。
 また、湯田IC~横手ICのⅠ期線のトンネルで盤ぶくれが確認されていて、リニューアル工事を行わなければなりません。その工事に先立ってⅡ期線を建設して、交通を一旦Ⅱ期線に切り替えて、Ⅰ期線を通行止めにしたうえでリニューアル工事を行います。
 ――構造物数とその比率について教えてください
 大築 湯田IC~山内PA間は、トンネル2チューブ(黒沢トンネル、山内トンネル)と橋梁が3橋あり、延長比で約47%となります。
 山内PA~横手IC間は、調査・設計中区間のため詳細は未定ですが、基本的にはⅠ期線と同じ構造を予定しており、Ⅰ期線ではトンネルが3チューブ、橋梁が8橋あります。
 北上西IC~湯田IC間は、Ⅰ期線がトンネル7チューブ、橋梁11橋となっています。こちらも概ねⅠ期線と同じ構造になると思います。



事業区間のⅡ期線として確定している橋梁・トンネル ※拡大してご覧ください(以下、同)

事業区間の橋梁・トンネル(Ⅰ期線)一覧(Ⅱ期線として確定している橋梁・トンネルは除く)

 ――湯田IC~山内PA間の構造物について。今秋から掘削開始予定の山内トンネルの延長、掘削工法および施工方法は
 大築 延長は2,438m、NATM工法で掘削していきます。山内PA側から湯田IC側に向かって、片掘りで施工する計画です。Ⅰ期線と並行していますが、トンネル中心間隔で30m程度離隔を確保しています。


山内トンネル(Ⅰ期線)山内PA側坑口

山内トンネル 工事用進入路の施工状況

 ――地山状況はいかがですか
 大築 Ⅰ期線建設時に特に大きな課題はありません。補助工法を使わなければならない箇所はあると思いますが、掘削で苦労するような地山ではないと思います。
 ――施工にあたってDXの活用は考えていますか
 大築 受注者である奥村組と施工の省力化、安全性の観点からどのようなICT技術を現場に導入できるかを調整しているところです。当社としても積極的に業務効率化や業務改善につながる技術を導入していきたいと考えています。
 ――工事用進入路は、延長が長かったり、仮橋を設置する必要はありますか
 大築 そのようなことはありません。現場には現道から数百メートルでアクセスできます。ただ、秋田道の側道を移設しなければならない箇所があり、その移設を本体工事に先駆けて行っています。


側道(市道)の付替え工事

 ――黒沢トンネルは
 大築 Ⅰ期線は延長520mのトンネルです。NATM工法を採用して掘削していきます。黒沢トンネル工事として、今年度第2四半期に発注を予定しています。
 ――現時点で施工上の課題がありましたら教えてください
 大築 山内トンネルと同様にⅠ期線施工時には大きな課題はありません。

国道107号、JR北上線、黒沢川と交差する黒沢川橋
 黒沢川橋、黒沢橋は張出架設、田代沢橋はガーダー架設を予定

 ――橋梁3橋について、橋長と構造形式からお願いします
 大築 湯田IC側から、田代沢橋、黒沢橋、黒沢川橋となります。
 田代沢橋は橋長85mの2径間連結PCコンポ橋で、基礎は場所打ち杭と直接基礎、下部工は3橋とも同様で逆T式橋台、柱式橋脚です。黒沢橋は橋長131mのPC2径間連続箱桁橋、基礎は深礎杭、大口径深礎杭となります。黒沢川橋は橋長446mのPC5径間連続箱桁橋、基礎は深礎杭、大口径深礎杭、直接基礎です。
 ――黒沢川橋は橋長が446mありますが、交差物は
 大築 国道107号とJR北上線、黒沢川を跨ぐ橋梁となります。JRを跨ぐ箇所については上下部工ともにJR東日本に委託して工事を行います。


黒沢川橋(Ⅰ期線)/工事用進入路の工事に着手している

 ――大口径深礎杭を採用していますが、その箇所と杭長は
 大築 P1~P3橋脚が大口径深礎杭となり、杭長は最長で約13mです。支持層が深いため、採用しました。
 ――橋脚高はどのくらいになりますか。また、現時点で施工にあたっての課題や工夫はありますか
 大築 P4橋脚が最高で22mとなります。施工計画は今後、受注者と打ち合わせをしていきます。
 ――黒沢川橋他1橋の下部工工事は黒沢工事として契約済みとのことでしたが、具体的には
 大築 黒沢川橋の下部工と黒沢橋のP1橋脚およびA2橋台を施工するもので、鉄建建設が受注しています。黒沢橋のA1橋台は別工事としての発注となります。


黒沢橋(Ⅰ期線)

 ――工事の進捗状況は
 大築 現在、施工計画の検討を行っています。
 ――桁はどのように架設していきますか
 大築 黒沢川橋、黒沢橋ともに張出架設を予定しています。
 ――発注は
 大築 黒沢川橋(PC上部工)工事として3月に発注しています。開札は7月中旬の予定です。同工事では、黒沢川橋、黒沢橋、田代沢川橋の3橋の上部工を施工します。
 ――田代沢橋はPCコンポ橋ですが、Ⅰ期線と同形式ですか
 大築 Ⅰ期線はRC5径間連続中空床版橋であり、形式は異なります。Ⅱ期線においては、交差条件より2径間を前提に上部工形式を検討し、経済性に優れるPCコンポ橋を採用しました。
 同橋ではガーダー架設を予定していますが、ガーダーがⅠ期線側に近接することになりますので、Ⅰ期線の交通に配慮しながら設置することになります。


田代沢橋(Ⅰ期線)

山内PA~横手IC間 相野々橋は交差条件により支間割り変更も
 北上西IC~湯田IC間 山深い区間のため工事用道路についても検討

 ――山内PA~横手IC間の構造物は詳細設計中とのことですので、Ⅰ期線での特徴的な構造物を教えてください
 大築 同区間のⅠ期線で橋長が最も長い橋梁は相野々橋(PC4径間連続箱桁橋)で348.2mです。横手川が蛇行している箇所を3回交差しています。他の構造物と同様に基本的にはⅠ期線と同形式で設計を進めていますが、同橋のように河川を渡河する箇所については、橋脚が同じ位置に構築できない可能性があります。それらの箇所については、支間を変えて経済的な支間割りになるように検討をしています。


相野々橋(Ⅰ期線)

 また、Ⅰ期線では中空床版橋が3橋(一部径間を含む)あります。中空床版の採用はしていませんので、版桁などを検討していくことになると思います。その他、奥羽本線を跨ぐ柳田橋(27.3m、PC単純ポストテンションT桁橋)、国道13号を跨ぐ新町橋(131m、RC7径間連続中空床版+PC単純ポストテンションT桁橋)があります。
 トンネルでは、大沢トンネル(444m)の東坑口はⅠ期線施工時に地滑りが発生して施工に苦労したと聞いています。
 ――北上西IC~湯田IC間の特徴・課題は
 大築 延長が長いトンネルが多いことです。Ⅰ期線7チューブのうち、最長は和賀仙人トンネルの3,775mで、このほか湯田トンネル(2,413m)、垰山トンネル(1,321m)、鷲之巣トンネル(924m)があります。山深い区間となりますので、工事用道路をどのように計画するかを検討している状況です。また、地滑りが多い地帯で配慮しなければならないことは分かっていますが、具体的な検討には至っていません。さらに、パークゴルフ場の下を通過する山口トンネル(250m)があり、その施工方法についても検討を進めていかなければなりません。
 橋梁はⅠ期線11橋のうち、橋長100m以上のものが7橋となっています。特徴的な橋梁としては、鬼ヶ瀬川橋という橋梁があり、Ⅰ期線は鋼2径間連続トラス橋です。


鬼ヶ瀬川橋(Ⅰ期線)

 同橋は河川や鉄道、町道などと交差し、狭隘なヤードでの施工となることに加え、鉄道上の上部工架設が課題となります。また、近傍のほっと湯田駅や国道からの眺めが良いので、景観性に配慮した橋梁の計画が求められます。

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