道路構造物ジャーナルNET

塩害の影響大きく、鋼・コンクリートとも対策必要

愛媛県 1巡目の修繕は橋梁・トンネルとも着実に進捗

愛媛県 土木部
道路維持課長

近藤 俊恒

公開日:2023.01.25

橋梁、トンネルとも修繕着手率は100%
 表面含浸工を多く使う

 ――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況についてお答えください。また具体的な損傷状況と補修補強内容についても例挙して下さい
 近藤 法定点検結果を踏まえて、順次、修繕計画などを策定・更新し、「点検」「診断」「措置」「記録」のメンテナンスサイクルの取組みを進めています。橋梁の修繕着手率は100%に達しており、一巡目の点検結果に基づく修繕は2022年度までにおおむね完了させ、修繕が完了した橋梁から順次、予防保全型管理へ移行させています。今後は、国、県、市町が連携して、老朽化対策の取組みを加速させていきます。2巡目の点検状況を見ても健全度Ⅱの部位がⅢに劣化するという事は比較的少なく、予防保全型への移行はできると考えています。
 例えば、一般県道砥部伊予松山線の松前町内にある出合橋(1979年供用、鋼I桁橋、210m)は、上部構造では、主桁、対傾構、横構は防食機能の劣化がd判定と診断され、床版は各径間の両端部と張出し部において、疲労によるひび割れが見られたことから、これもd判定と診断されました。さらに張出し部には局部的にe判定の鉄筋露出が見られたため、ひび割れ補修、断面修復、表面含浸(リフレα40)と塗装塗替え工により、補修を行いました。


出合橋樹脂注入状況


出合橋断面修復状況

出合橋含浸材(リフレα40)塗布状況

 また、一般県道坊屋敷小田線の内子町内にある立石橋は、1959年に竣工した橋長10.5mのRC単純T桁橋ですが、2017年11月の定期点検において、主桁端部に剥離・鉄筋露出が見られました。原因は被り不足と漏水と思われますが、前回点検時(2013年5月)より損傷が進行しており、早期対策が望ましいことから、ひび割れ補修、断面修復、表面含浸工(スーパーシールド)により、補修を行いました。



立石橋含浸材塗布(スーパーシールド)状況

 ――同様にトンネルについても長寿命化修繕計画の進捗状況は
 近藤 1巡目の点検でⅢ判定と診断した箇所については全て補修に着手しています。次の点検までに修繕は完了する予定です。

耐震補強は414橋中407橋が完了
 残りの橋は架け替えも選択肢

 ――橋梁など耐震補強対策の進捗状況および落橋防止装置の設置状況および今年度の予定について教えてください
 近藤 愛媛県が管理する道路で耐震補強の対象となる橋梁は414橋ありますが、2021年度までに407橋で対策完了しました。2022年度は残り7橋の対策を実施および検討中です。
 一般県道今治大三島自転車道線の今治市内にある来島海峡歩道橋、国道319号の四国中央市内にある小川橋などです。残っている橋梁の中には架け替えの方がコストが安いケースもあり、検討中です。

 ――耐震補強はいわゆる耐震性能3で進めていますか。それともより復旧しやすい2で進めていますか
 近藤 橋梁の重要性などを鑑みて決めています。より交通量が多い、または緊急輸送道路としての重要性が高い橋梁については耐震性能2で補強しています。
 ――熊本地震の教訓を鑑みて、予め段差防止工を桁下に付けたり、可撓性踏掛け版を用いたりして、地震時においても路面に大きな段差を付けないよう、耐震補強で実施する例も増えていますが、愛媛県ではどう考えていますか
 近藤 現在のところ行ってはいませんが、緊急輸送道路の確保のため、検討していきます。

上部工補修は今年度93橋を予定
 床版防水の設置状況は未把握

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修のここ3年の実績と2022年度の施工計画について教えてください
 近藤 上部工補修補強については、2020年度は172橋、21年度は98橋を施工しており、22年度は93橋を予定しています。
国道317号の松山市内にある黒田橋は、1971年に竣工した橋長99mの鋼アーチ橋です。94年に鋼部材の塗装塗替えが行われ、96、97年には車道部の床版下面を鋼板接着補強し、同時に落橋防止装置も設置しました。しかし、定期点検において、アーチリブ、補剛材などの鋼部材全体に塗装の経年劣化による防食機能の劣化が生じています。さらに鋼板補強が施されていない歩道部床版下面にうき、ひび割れが生じています。端部からの漏水やひび割れからのエフロレッセンスも発生しており、内部鋼材の腐食も懸念されます。


黒田橋の損傷状況

塗替え塗装などが完了した黒田橋

 そうしたことから今年度、令和3年度に断面修復・ひび割れ補修・伸縮装置止水工・塗替え塗装工・橋面防水工を行いました。
 国道379号の砥部町内にある鍛冶屋谷橋は1998年に竣工した橋長19.3mのプレテンPC床版橋です。床版の間詰コンクリート部、橋台で広範囲に漏水や遊離石灰が見られています。要因としては、舗装にひび割れやわだち掘れなどが多く確認されることから、橋面からの漏水による影響と推測しています。
 そうしたことから、ひび割れ補修・断面修復・橋面防水を実施しました。


鍛冶屋谷橋橋脚の損傷状況およびひび割れ注入状況

同断面修復工法

鍛冶屋谷橋の床版防水工など施工状況

 一般県道松山川内線の東温市内にある川内橋側道橋は、1976年に竣工した橋長59.6mの3径間単純H形鋼橋です。前回の塗装から26年が経過し、主桁や横桁などの鋼部材全体に防食機能の劣化が見られ、塗膜の剥離や点錆が生じています。また、床版のデッキプレートの継ぎ目に腐食による欠損箇所が見られました。橋面からの漏水により、部材の継ぎ目で腐食が進行したと推測されています。
 そうしたことから、表面含浸工・水切設置工・FRPシート工を実施しました。


川内橋側道橋の損傷状況

塗替え状況

FRPシート工

含浸材施工状況

 ――床版防水の未施工もしくは劣化による損傷もあるようですが、床版防水工の設置状況は把握されていますか
 近藤 床版防水については新設の橋梁や桁の架け替えを行った橋梁、また舗装を全面打替えした橋梁については、全ての橋梁で床版防水を設置しています。但し、全橋梁に占める床版防水の設置状況は把握していません。また、施工方針や採用する工法、グレードについては、各橋梁の損傷状況や、施工条件などを考慮して、補修方法を決定しています。
 ――橋面からの漏水が散見されていますが、床版防水をしていないと、今後は劣化が急速に進む可能性もあるのでは
 近藤 確かにそうした可能性はあります。今後留意していきます。

今年度伸縮装置取替は10橋で実施
 塩害は飛来塩分だけでなく、建設時の海砂、凍結防止剤の影響もあり

 ――支承取替やジョイントの取替およびノージョイント化について今年度の施工予定箇所数と取替える際の工法・種類を教えてください
 近藤 今年度は支承交換の予定はありません。伸縮装置の補修及び取替は10橋で行う予定です。
国道378号の大洲市内に架かる綱掛橋は、伸縮装置において、漏水や滞水、変形・欠損、土砂つまりなどによる劣化や損傷が見られ、橋台基礎部の腐食、遊離石灰の原因となっています。そのため、耐久性および止水性に優れた鋼製伸縮装置への取替を予定しています。
 また、一般県道中山砥部線の伊予市に架かる平成橋(橋長41m、単純I桁プレートガーダー橋)は、伸縮装置において、止水材の劣化や桁下面への漏水が見られ、桁端部の劣化や支承の防食機能の劣化の原因となっていることから、耐久性および止水性に優れた鋼製伸縮装置への取替を予定しています。


平成橋

 

 ――塩害やASRによるコンクリート部材の劣化は生じていますか。劣化があればその内容と対策工法について教えてください
 近藤 対策例を数橋挙げていきますと、国道378号の伊予市内にある富岡橋は竣工年不明のPC単純I桁橋(橋長5.1m)で、現在は主に歩道として使用されています。上部工には鉄筋露出や浮きなどが多く見られ、塩害による劣化の可能性が高いと考えています。床版部は露出した鉄筋の腐食が著しいため、ひび割れ補修、断面修復、表面含浸工による補修を行いました。


富岡橋の損傷状況とひび割れ注入工

同橋の断面修復工と表面含浸工

 主要地方道壬生川新居浜野田線の四国中央市内に架かる藤原橋(橋長28.3m、PC)では、PC構造で主桁下面に最大幅0.2mmの橋軸方向のひび割れが確認されました。その他部材にも被り不足や漏水影響が要因と推定される損傷が見られています。断面欠損部で貝殻片の混入も確認され、飛来塩分の影響も含めた塩害劣化が懸念されたことから、上部工のひび割れ断面補修、表面含浸工(スーパーシールド)による補修を行いました。


藤原橋の損傷状況

藤原橋の補修状況(表面含浸工、ひび割れ注入工)

 一般県道湯山北条線の松山市内に架かる高山川橋側道橋は1975年に架設された橋長15.3mのH形鋼桁橋ですが、1988年に塗替え塗装を行ってから既に29年が経過しています。主桁、床版、支承など鋼部材は全体的に腐食が進行していました。海に近く塩害による影響もあるため、速やかに塗装塗替えを行ったほか、断面修復、鋼床版の設置を行いました。
 一般県道久良城辺線の愛南町内に架かる新浦橋は、橋名はついていますが、実際は延長2.6mのプレキャスト製ボックスカルバートです。頂版部および側壁部共に幅0.3mmを超えるひび割れが多数発生していました。構造体の接合部やセパ孔からの著しい漏水も生じており、海にも近いことからこのまま放置しておくと、塩害による劣化が進み、構造物の機能に支障を生じる可能性がありました。そのため、断面修復、ひび割れ注入、表面含浸工(ERコートシラン)により補修しました。



新浦橋の補修状況

 凍結防止剤による影響もあります。県外の皆様は愛媛県というと暖かいイメージをお持ちですが、山間部は結構雪が降ります。県道でも結構凍結防止剤を撒いています。山間部だけでなく海岸線でも撒くことがあります。そうした箇所の劣化については、鉄筋防錆を兼ねた表面含浸工を施工するケースがあります。
 ASRによる損傷は、殆ど報告されていません。

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