管理総延長は約1,086km 橋梁1,219橋とトンネル87箇所を管理
神奈川県 道路ネットワークの強化や交通混雑緩和を図る座間荻野線Ⅱ期工区や上郷立体などの事業を推進
神奈川県
県土整備局長
大島 伸生 氏
国道134号滑川橋で電気防食工を実施予定
耐震補強 管理橋梁全体の耐震化率は9割超
――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無は。劣化があればどのような形で出ていますでしょうか、またその対策事例をお教えください
大島 アルカリ骨材反応による劣化はこれまで確認されていません。塩害については、沿岸部のコンクリート橋で試料を採取したところ、鋼材位置付近の塩化物イオン含有量が発錆限界含有量を超過している橋が国道134号で4橋確認されています。この4橋については、これまでに主桁に電気防食工を施す対策を3橋で実施済で、今年度は、残る1橋(滑川橋)で実施する予定です。
国道134号滑川橋
――滑川橋での電気防食の採用方式は
大島 チタン溶射方式を予定しています。具体には、高純度チタンを主桁のコンクリート表面にアーク溶射し、耐久性の高い面上の陽極被膜を形成させ、外部電源から鉄筋に対して防食電流を供給する方式です。
――耐震補強の進捗状況は
大島 阪神淡路大震災で被害の大きかった古い基準(昭和55年道示以前)で作られた橋梁の耐震補強(単柱橋脚)は、2012年度までに59橋すべて完了しました。現在は、大きな被害を受けるおそれは少ないが、局部的に損傷の可能性がある橋梁(昭和55年道示以降から平成8年道示)の耐震補強を進めており、対策が必要な橋梁147橋のうち、45橋で完了しています。なお、対象橋梁147橋のうち、緊急輸送道路上の橋梁は106橋で41橋が完了となっています。橋脚がないなど、対策が不要な橋梁を含めた管理橋梁全体の耐震化率は9割超に達しています。
――長大・特殊橋の耐震補強事例がありましたら
大島 長大橋では、国道134号湘南大橋(下り)(橋長698m、鋼9径間箱桁橋)では、コンクリート巻立てによる橋脚補強を実施しています。また、国道255号飯泉橋(橋長356m、鋼9径間箱桁橋)でポリマーセメント巻立て、県道42号(藤沢座間厚木)座架依橋(河川橋梁部)(橋長500m、鋼8径間鈑桁橋)でコンクリート巻立てなどを実施しています。
耐震補強事例。国道134号湘南大橋(左:施工前/右:施工後)
国道255号飯泉橋(左)/県道42号座架依橋(右)
特殊橋では、県道44号(伊勢原藤沢)湘南銀河大橋(橋長520m、鋼3径間斜張橋+鋼単純箱桁橋)があり、今年度より主塔と橋脚の耐震補強を行う予定です。主塔は基部内面への縦リブ設置を行い、橋脚はコンクリート巻立てを行います。
県道44号湘南銀河大橋
――2022年度の鋼橋塗替え(予定)橋梁とその面積は。また、新しい重防食の採用などがありましたら教えください。
大島 今年度は5橋で塗替え塗装工事を予定しており、総面積は15,594㎡となります。具体的には、国道134号渚橋(4,304㎡)、県道312号(田谷藤沢)の弥勒寺高架橋(2,015㎡)、県道22号(横浜伊勢原)戸沢橋(6,792㎡)、県道43号(藤沢厚木)堺橋(896㎡)、県道40号(横浜厚木)境橋(1,587㎡)です。新しい重防食としての金属溶射の採用事例はありません。
鋼橋塗替え塗装事例。県道24号逗子橋(左:施工前/右:施工後)
県道30号 富士見橋(左:施工前/右:施工後)
――PCBや鉛など有害物質を含有する既存塗膜の処理について、どのような方策をとっていますでしょうか
大島 PCBについては、1966年から1974年までに建設または塗装された橋梁86橋を調査したところ、17橋で低濃度PCBが検出されました。2022年度から2025年度までの4カ年で塗膜除去を行うこととしており、今年度は県道22号(横浜伊勢原)戸沢橋など3橋で施工する予定です。施工にあたっては、IHや塗膜剥離剤を想定していますが、PCBを含む塗膜が飛散しないよう、施工業者と協議の上、適切に処理していきます。
鉛についても、塗装工事着手前に調査を行っており、含有が確認された場合は労働安全衛生法に基づき、施工業者と協議の上、適切に処理しています。
――支承および伸縮装置の取換えについて、2022年度の施工(予定)箇所数は
大島 今年度の支承取換えは2箇所です。県道302号(小袋谷藤沢)の東海道線に架かる山崎跨線橋で、支承の老朽化や耐震性能が確保されていないことから、現在の鋼製支承から耐震性にも優れたゴム製支承に取換えを行う予定です。また、県道712号(松田停車場)の御殿場線や町道を跨ぐ松田陸橋では、通過車両の大型化により上部工に損傷が生じており、応力を分散するため、横桁に現在設置されている鋼製支承の追加を行う予定です。
伸縮装置については、県道62号(平塚秦野)新逆川橋1橋でゴム製ジョイントの取換えを施工予定です。
――耐候性鋼材を採用した橋梁数と健全度について
大島 耐鋼性鋼材を採用した橋梁は37橋です。ⅣおよびⅢ判定はなく、Ⅱ判定が12橋、Ⅰ判定が23橋となっていますが、下部工やコンクリート部材の損傷によるもので、耐候性鋼材の劣化・損傷は確認されていません。
防災要対策箇所は699箇所で346箇所が完了
国道135号の米神地内では越波対策で道路面を約3m嵩上げ
――全国的に異常気象による土砂災害が相次いでいる中で、のり面などの防止対策でどのような取組みを行っていますか。また、具体的な防災対策の要対策箇所と対策事例を教えてください
大島 おおむね10年ごとに実施する道路斜面の防災総点検で、管理延長約1,086km全体を確認し、危険箇所について防災カルテを作成して、毎年、状況変化を把握しています。防災カルテを見ると、簡単に対策ができそうな箇所がある一方で、用地取得から始めなければならない箇所もありますが、危険度の高い箇所や緊急輸送道路など優先度の高い箇所から防災工事を実施しています。
現在、要対策箇所は699箇所あり、対策完了箇所は346箇所となっています。主な対策事例では、国道134号の横須賀市ハイランド地内で、高さ20mの道路斜面が崩落する恐れがあることから、コンクリート法枠工を延長約165mに渡り実施しました。
国道134号横須賀市ハイランド地内の防災対策(左:施工前/中央:施工中/右:施工後)
――冒頭、国道135号では高波により年1~2回の通行止めが発生していると伺いましたが、越波対策は
大島 国道135号の米神地内では越波が頻繁に発生していたことから、道路面を約3m嵩上げしました。対策完了後、越波は確認されていません。
国道135号(米神)での越波対策(左:対策前/右:対策後)
また、越波対策ではありませんが、国道134号の鎌倉市七里ヶ浜では海岸線がやせてきたことにより前浜がなくなり、波が直接、道路擁壁にぶつかっています。道路擁壁の被害が生じていることから、鋼管杭を砂浜に深さ5m~10m程度圧入する等、波が直接、道路擁壁にぶつかっても道路利用者の安全が確保できるよう、順次、道路擁壁を造り替え、道路の防災性の向上・強化を図っています。
――維持管理における新技術・新材料の活用事例は
大島 橋梁点検では近接目視が困難な高架橋の橋脚で、ドローンやロボットカメラを活用した事例があります。ドローンは県道42号(藤沢座間厚木)栗原巡礼大橋(2019年度点検)で、ロボットカメラは県道22号(横浜伊勢原)門沢高架橋(2021年度点検)で使用しました。
――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)