管理総延長は約1,086km 橋梁1,219橋とトンネル87箇所を管理
神奈川県 道路ネットワークの強化や交通混雑緩和を図る座間荻野線Ⅱ期工区や上郷立体などの事業を推進
神奈川県
県土整備局長
大島 伸生 氏
神奈川県は、135路線約1,086kmの道路を管理している。道路ネットワークの強化や交通混雑の緩和を目的とした道路整備事業のうち、橋梁およびトンネルを有する事業としては、厚木市内では座間荻野線Ⅱ期工区を、海老名市内では上郷立体を、小田原市内では城山多古・小田原山北線などを行っている。これら事業の概要と構造物の詳細、および保全事業の取組みについて、大島伸生県土整備局長に聞いた。
自動車専用道路や観光地へのアクセス道路が重要に
相模川を渡河する(仮称)ツインシティ橋を計画
――神奈川県の道路ネットワークの現状からお願いします
大島局長 自動車専用道路は、国や高速道路会社の尽力により着実に整備が進められており、現在、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の残り区間である横浜湘南道路(栄IC・JCT(仮称)~藤沢IC)と高速横浜環状南線(釜利谷JCT~戸塚IC(仮称))の整備が進んでいます。この二つの路線が完成すると、横浜や三浦半島地域と県央湘南地域等との連携が強化され、所要時間が大幅に短縮されることから、早期整備が期待されています。
2022年4月には、新東名高速道路が海老名南JCTから新秦野ICまで開通しました。未開通となっている新秦野ICから新御殿場ICまでつながると西日本とも直結しますので、観光地の活性化や物流の円滑化が期待できます。
新東名高速道路等と一体となって機能する厚木秦野道路(国道246号バイパス)も国が整備を進めています。未事業化区間がありますので、その区間の早期事業化と事業中区間の整備促進を働きかけています。新東名高速道路が開通しても、国道246号の交通量は相変わらず多く、本路線の完成により秦野・伊勢原・厚木地域の交通混雑の緩和が図られることから、地域の期待は大変大きくなっています。
県として自動車専用道路の整備で強く望んでいることは、新東名高速道路の海老名南JCTから東への延伸です。厚木周辺は東京方面を中心に交通混雑が発生していて、横浜・東京方面へはさらに車線数を増やさないと交通量をさばけない状態です。そのため、新東名高速道路の海老名南JCT以東の計画の具体化を国に働きかけています。
また、小田原と伊豆方面を沿岸部で結ぶ唯一の幹線道路である国道135号は、年に1~2回は高波や土砂流出が発生し通行止めになり、地元の方にご迷惑をおかけしています。そこで、新たな道路計画の検討について国から補助採択をいただき、静岡県と協調して計画の具体化に向けて検討を進めています。引き続き、検討の熟度を高めていき、地元が要望している災害に強い道路を実現していきたいと考えています。
県管理道路のネットワークでは、自動車専用道路に接続する道路の整備を優先して行っています。また、県内には箱根、鎌倉、三浦半島、丹沢・大山などの多くの観光地があり、そこへのアクセス道路も必要であると考えています。
箱根へのルートとしては、南足柄市と箱根町を結ぶ延長約10.9kmの道路(愛称:はこね金太郎ライン)が2021年4月に開通しました。林道を改築して一般県道とした道路で、大型車規制をかけていますが、一般車は通行できますので、東名高速道路の大井松田インターチェンジから箱根方面への新たなルートとして活用できるようになりました。
「はこね金太郎ライン」は神奈川県道で唯一愛称のある道路となっている。(神奈川県提供。以下、同)
三浦半島では西海岸線の事業を進めており、未整備区間の2.5kmが完成すれば城ヶ島等へのアクセスが容易になります。三浦半島の観光にも寄与することになるので、力を入れて取り組んでいきます。大山を中心とした伊勢原地域では、今年3月に大山バイパスが全線開通できましたので、大山観光にも大きく貢献することになりました。
――混雑時の旅行速度が、東京都、大阪府に次いで全国ワースト3位となっています。その対応は
大島 旅行速度はなかなか改善できませんが、おもにボトルネックとなっている交差点の改良を進めることで、交通混雑の緩和を図っています。渋滞ポイントは把握していますので、そこを中心に事業を進めています。
また、一級河川相模川を渡る断面で渋滞箇所がありますので、4車線道路としての(仮称)ツインシティ橋を計画しています。この道路を整備することにより、東西方向の交通が円滑になると思っています。
――管理道路の延長は
大島 2022年4月1日現在で、135路線、総延長約1,086kmを管理しています。内訳は、一般国道が国道1号など8路線で総延長176.6km、主要地方道が、県道63号(相模原大磯)など36路線で総延長488.2km、一般県道が県道312号(田谷藤沢)など91路線で総延長421.2kmとなっています。
座間荻野線Ⅱ期工区 高架橋2橋で構造物比率は約32%
橋長207mの東側高架橋は上部工施工中
――進捗中の整備事業を教えてください
大島 橋梁およびトンネルを有する道路整備事業は、「県道42号(藤沢座間厚木)座間荻野線Ⅱ期工区」「県道46号(相模原茅ケ崎)上郷立体」「(都)城山多古・小田原山北線」「(都)穴部国府津線【Ⅵ期】」「(都)西海岸線」を進めています。
――県道42号(藤沢座間厚木)座間荻野線Ⅱ期工区の目的と概要からお願いします
大島 県道42号(藤沢座間厚木)は藤沢市を起点とし、綾瀬市や座間市などを経由して厚木市へと至る主要な幹線道路です。厚木市内で工事を進めている座間荻野線Ⅱ期工区は、県央地域における東西方向の連携強化と厚木市街の渋滞緩和を目的とした外郭環状道路としての機能を有しています。
Ⅰ期工区(厚木市関口~三田、延長約1.10km)は供用済で、Ⅱ期工区はその西側の厚木市三田~下萩野間の延長約1.17kmの事業となります。
座間荻野線概要図
――構造物比率と進捗状況は
大島 高架橋は2橋あり、その構造物比率は約32%です。現在、用地取得、埋蔵文化財調査、橋梁上部工を進めています。
――高架橋2橋の詳細を教えてください
大島 東側高架橋は、橋長207m・全幅22.05mのポストテンション方式PC6径間連結バルブT桁橋で、基礎は場所打ち杭(φ1,000mm、φ1,500mm)、下部工はラーメン式橋脚です。
西側高架橋は、橋長168m・全幅22.05mのポストテンション方式PC5径間連結バルブT桁橋で、基礎は、直接基礎、場所打ち杭(φ1,500mm)、深礎杭(φ2,500mm)、下部工はラーメン式橋脚、逆T式橋台です。なお、両橋とも超高減衰免震支承を採用しています。
――バルブT桁橋を採用した理由は
大島 経済性や施工性、断面性能等を考慮して決定しました。
――上部工を施工中とのことですが
大島 東側高架橋で架設工事を進めているところです。
――架設はどのように行っていきますか
大島 現地条件にあわせた架設工法を採用します。家屋隣接箇所では架設桁架設、作業ヤードを確保できる箇所は550t吊クレーン2台による相吊架設となります。
座間荻野線Ⅱ期工区の施工状況
――西側高架橋は
大島 用地取得が完了していない箇所があり、A2とP29が未着手のため、現在、鋭意、用地取得中です。
――地盤などにより基礎工で課題となったことはありましたか
大島 特に課題はありません。