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橋梁1,968橋とトンネル139本を管理

山梨県 整備中の新山梨環状道路(東部区間2期)の橋梁比率は83%

山梨県
県土整備部長

飯野 照久

公開日:2022.11.28

新たな御坂トンネルを現トンネルより低い位置に掘削
 上下の離隔は確保 湧水が施工上の課題に

 ――ほかの整備事業についても教えてください
 飯野 主な事業としては「国道137号 甲府富士北麓連絡道路(河口~藤野木)」「国道300号 中之倉バイパス」「主要地方道甲府昇仙峡線 長潭(ながとろ)橋」「主要地方道市川三郷富士川線 富士橋」が挙げられます。
 ――国道137号 甲府富士北麓連絡道路(河口~藤野木)は
 飯野 国中地方と富士北麓地域は国道137号で結ばれていて、御坂峠を新御坂トンネルで抜いていますが、同トンネルは建設から50年以上が経過し、老朽化が進んでいます。ここに現トンネルよりも低い位置に新しくトンネルを掘削する事業を開始しています。整備するトンネルは、「新たな御坂トンネル」と呼んでいます。
 事業区間は富士河口湖町河口~笛吹市御坂町藤野木で、延長は5.8kmです。そのうち、トンネルが約4.6kmで総延長の約8割を占めます。橋梁は富士河口湖町側に1橋あります。トンネル、橋梁ともに予備設計中で、橋梁は単径間を予定しています。


甲府富士北麓連絡道路(河口~藤野木)事業概要図

 ――トンネル設計での課題は
 飯野 有識者によるトンネル整備検討会で調査を行っています。懸念されているのは湧水で、新御坂トンネルの施工記録や現在の湧水量を考慮すると、施工時には大量の湧水が予想されます。それを踏まえた設計を進めています。
 ――新御坂トンネルとの近接施工になりますか
 飯野 平面的には現トンネルとほぼ同じ位置で掘削しますが、上下の離隔は充分確保しています。

中之倉バイパス 3橋でメタルロード工法を採用

 ――国道300号 中之倉バイパスは
 飯野 富士北麓地域と峡南地域を結ぶ主要幹線道路である国道300号は、急峻な地形に起因してヘアピンカーブが連続し、観光バスなどの大型車両にとっては交通の難所となっているのが現状です。そこで新たにバイパスを整備し、富士山や身延山・下部温泉などの観光拠点を結ぶ広域周遊ルートとしての活用を見込んでいます。
 事業延長は1.8kmで進捗率95%、構造物比率は土工31%、橋梁12%、トンネル57%です。まもなく供用を予定しています。


中之倉バイパス 概要図

 ――橋梁数とトンネル数、および各橋梁の橋長・形式、トンネル延長を教えてください
 飯野 橋梁は4橋、トンネルは2箇所となります。橋梁の概要は本栖湖側から、新灯(しんとぼし)橋が橋長30.0mのポストテンション方式PC単純I形コンポ橋、瀧向橋が同48.5mの鋼製桟道橋(メタルロード工法)、小沢向橋が同38.4mの鋼製桟道橋(メタルロード工法)、新中之倉橋が同125.6mの非合成鈑桁(25.0m)+ワーレントラス橋(71.8m)+鋼製桟道橋(メタルロード工法)(28.8m)です。トンネルは、灯第一トンネルが746m、灯第二トンネルが275mです。


瀧向橋

小沢向橋

新中之倉橋

 ――メタルロード工法は、2019年の台風19号で被災した主要地方道南アルプス公園線の本復旧でも採用を予定されていると仮復旧工事時の取材で伺いました。本採用されたのでしょうか、また直近1~2年で採用された箇所がありましたら教えてください
 飯野 県道南アルプス公園線の被災箇所で本採用し、今年3月に完成しています。延長は57.7mとなります。


メタルロード工法による本復旧工事

本復旧(白沢桟道橋)完了

 直近では、一般県道高下鰍沢線の南巨摩郡富士川町高下地内(延長30.5m)と主要地方道富士川身延線の南巨摩郡南部町井出地内(延長42.5m)で採用しています。
 急峻な地形が多いことから、メタルロード工法が開発される前から半線が橋梁形式となっている箇所はたくさんあります。

長潭橋架替え 現橋は撤去せずに歩道橋として活用
 新橋は仮桟橋を設置して支保工架設

 ――主要地方道甲府昇仙峡線 長潭橋は
 飯野 甲府市の北部には国の特別名勝にも指定されている御岳昇仙峡があります。「日本一の渓谷美」とも言われているその玄関口には、現存する最古のRCアーチ橋である長潭橋が架かっていますが、現行道路構造令を満たした幅員となっていない上、老朽化も進んでいます。そのため、下流側に新橋を建設する架替事業を行っています。ただし、現橋は撤去せずに、歩道橋で残して観光施設として活用します。


現存する最古のRCアーチ橋である現橋

新橋のフォトモンタージュ

 ――新橋の橋長、形式および進捗状況は
 飯野 橋長は50m、形式はRCアーチ橋、逆T式橋台、直接基礎です。景観に配慮して、現橋と同じアーチ橋を採用しました。左岸側の橋台は完成し、右岸側の橋台を施工中です。また、前後の道路改良(延長298m)も行っています。


事業概要図(左)/橋台の施工状況

 ――架設方法は
 飯野 橋面から約9m下に仮桟橋を設置して、その上に支保工を構築して架設をしていきます。ケーブルエレクション工法も検討しましたが、現場環境的に背後に余裕がありませんでした。
 ――仮桟橋はどのように構築するのですか
 飯野 仮設橋脚1基を施工し、仮設上部構造を架設して、横移動装置で所定の位置までトラス桁を移動させ、トラス桁間の連結作業を行い構築します。


架設工一般図

富士橋架替え 送出し架設が大詰め

 ――主要地方道市川三郷富士川線 富士橋は
 飯野 富士川と笛吹川の合流地点の下流に現橋の富士橋が架かっていますが、老朽化が進み、幅員も現行道路構造令を満たしていないため、架替事業を進めています。
 新橋の橋長は304m、形式は4径間連続鋼床版箱桁橋、逆T式橋台、壁式橋脚、場所打ち杭基礎、ケーソン基礎(河川部)です。
 ――進捗状況は
 飯野 中央2径間のうち左岸側の1径間を残して架設が完了(2022年5月時点)しています。側径間と中央1径間は200t吊クローラークレーンによるベント架設、残る中央1径間は送出し架設となっています。



中央径間の送出し

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