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橋梁1,968橋とトンネル139本を管理

山梨県 整備中の新山梨環状道路(東部区間2期)の橋梁比率は83%

山梨県
県土整備部長

飯野 照久

公開日:2022.11.28

 山梨県は、181路線1,841.7kmの道路を管理している。整備事業では、甲府都市圏の環状道路が完成していないことから、県担当区間の延長7.1kmの内1.6kmを供用開始し、残り5.5kmについて工事を進めているほか、現存する最古のRCアーチ橋である長潭橋の架替え事業などを行っている。保全事業では、周囲を急峻な地形に囲まれていることから構造物比率が約7%と高く、その老朽化対策が課題となっている。これらの現状について飯野照久県土整備部長に聞いた。

県土の約8割が森林 可住地面積は約2割
 山岳道路の比率が高く、建設コストも増大

 ――山梨県の地勢的特徴からお願いします
 飯野部長 本県は本州のほぼ中央に位置し、周囲を富士山、八ヶ岳、南アルプスに囲まれています。県土の約8割が森林で、山岳、森林、湖沼、渓谷などの自然が豊かで、景観にも優れています。反面、可住地面積が約2割と少ないのが特徴です。
 気候は甲府盆地を中心に寒暖差が大きい内陸気候となっています。甲府盆地周辺は降水量が少ないですが、富士五湖地方では年間降水量が約2,200mm、峡南地域と言われている富士川下流地域では同約3,000mmとなっています。
 この豊かな自然環境の中で、ブドウ、モモ、スモモの生産量は全国一を誇り、「果樹王国」となっています。
 ――道路ネットワークの現状と課題について
 飯野 管理延長は一般国道9路線343.7km、主要地方道36路線646.6km、一般県道136路線851.4kmで、合計181路線1,841.7kmです。本県の生活圏は、甲府盆地を中心とした国中地方と富士吉田市・大月市を中心とした富士北麓・東部地方のふたつに大きく分けられており、この2大生活圏を中央自動車道、国道20号、国道137号などで結んでいるのが特徴となります。
 課題としては、本県は急峻な地形に囲まれているため、山岳地域では深い谷に架かる橋梁やトンネルが必要で道路延長に対する構造物の割合が約7%と多くなっており、その老朽化対策が急務になっていることが挙げられます。また、山岳道路の比率が高いことから、整備事業では構造物の建設に加えて、擁壁工や防災対策工事など土工部においても非常にコストがかかります。


山間部の橋梁(山梨県提供。以下、同)

新山梨環状道路(東部区間2期) 橋梁は34橋で14橋が施工中
 地盤が脆弱などの理由により鋼橋を多く採用

 ――進捗中の整備事業について教えてください
 飯野 本県では環状道路がまだ完成していません。そのため、甲府都市圏における交通の円滑化と周辺地域の連携強化などを目的とした全長約43kmの「新山梨環状道路」の整備を行っています。同道路は北部・東部・南部・西部の4つの区間で構成されており、延長7.1kmの東部区間について本県が整備を進めてきました。残りの3区間は、中部横断自動車道を利用する西部区間(延長9.8km)と南部区間(同8.9km)が開通済み、国道20号バイパスとして国が整備している北部区間が延長17kmのうち東側2kmと西側5kmが事業中で、残り10kmは未着手です。


新山梨環状道路 全体図

 ――東部区間の具体的な事業内容は
 飯野 2期に分けて施工しています。先行して整備を進めてきた国道358号の西下条から、県道甲府精進湖線の落合西ICまでの1期区間1.6kmが11月19日に供用開始となりました。
 2期区間は、落合西ICから国道20号と接続する(仮称)広瀬ICまでの5.5kmで、進捗率(事業費ベース)は53%です。東部区間は全線、盛土と高架橋の構造で、2期区間の比率は土工部が17%、橋梁部が83%です。


新山梨環状道路東部区間 概要図。1期区間の西下条IC~落合西IC間は11月19日に開通

 ――完成2車線ですか
 飯野 計画は完成4車線で、ランプ部などは4車線で施工していますが、供用は暫定2車線となります。なお、南部区間は4車線供用、西部区間の中部横断道は暫定2車線となっています。
 ――2期区間の橋梁数と進捗状況は
 飯野 34橋で、1橋は北部区間に跨ります。施工中は14橋となり、そのうち下部工施工中が10橋、工場製作中が1橋、架設準備中が2橋、床版工まで完了が1橋です。残りは設計中1橋、詳細設計未了16橋、詳細設計済みで未着手3橋となります。
 ――施工中橋梁一覧(下表)を見ると、鋼橋が多く、合成床版を採用している橋梁も多いですね


東部区間2期 施工中の橋梁一覧

 飯野 鋼橋がほとんどで、PC橋は一部となっています。施工中区間は笛吹川に並走していて過去の氾濫域となっていることから地盤が脆弱で、上部工の荷重が与える下部工への影響を考えると、軽量化および橋脚の数を減らす必要がありました。その総合的な経済比較の中で鋼橋を採用しました。
 陸上に計画され支間長が比較的短い連続高架橋については、少数I桁+合成床版の橋梁が多いのが特徴です。本路線の連続高架橋の多くは2車線分で、全幅員が10m程度と一般道路よりも比較的広くなっていることから、従来の多主桁橋に比べて経済性より施工性に優れる少数I桁橋を採用しました。少数I桁橋は、主桁本数が少なく床版支間が大きくなるため、合成床版またはPC床版が適用されますが、経済性・施工性に優れる合成床版とすることにしました。
 ――施工中区間は地盤が脆弱とのことですが、どのような地質なのですか。また、N値は
 飯野 地盤概要は架橋位置により異なりますが、施工中の落合西IC~落合東IC間の大まかな地層構成と層厚、平均N値は下表のようになっています。


落合西IC~落合東IC間の地層構成と層厚、平均N値

 支持層となるべき層は、洪積層の下側の砂質土層や砂れき層を選定しているケースが多く、地表より40m程度下に位置しています。
 ――基礎形式は
 飯野 場所打ちでの杭基礎が主となっています。
 ――場所打ち杭工法以外の橋梁は
 飯野 落合6号橋(仮称)のA2では中掘り杭工法を、渋川第一橋(仮称)のA1・A2では鋼管ソイルセメント杭工法を採用しています。


落合6号橋(仮称)(左)および渋川第一橋(仮称)(右)の橋台施工状況

 ――下部工の施工でコンクリート長寿命化の取組みとしてどのようなことをされていますか
 飯野 設計段階においては、鉄筋コンクリート構造物の耐久性確保を目的とし、道路橋示方書および本県の技術基準に基づき、所要のかぶりを確保することとしています。
 また、施工段階においては、供用後に構造物に影響を及ぼすひび割れの発生を抑制するため、コンクリート標準示方書などに基づき、綿密なコンクリート打設計画を策定のうえ、適切な締固め、養生などを行っています。
 これらに加えて、幅の大きい橋台や箱式橋台はマスコンクリートとして取り扱うべき構造物に該当し、セメントの水和に起因する温度ひび割れの発生が懸念されます。温度ひび割れにより構造物の所要の性質が損なわれないように、ひび割れを誘発する目地やひび割れ幅を制御する補強鉄筋を追加で設置するなどの対策を実施しています。


東油川高架橋(仮称)(左)および落合3・4号橋(仮称)(右)の施工状況

 ――耐候性鋼材の採用も多くなっていますが、その理由は
 飯野 適切な維持管理により無塗装で優れた防食性を発揮し、橋梁のライフサイクルコスト低減に有効であることから採用が多くなっています。

濁川・平等川橋(仮称) 全径間を5ステップに分けて送出し

 ――濁川・平等川橋(仮称)(橋長222m/鋼3径間連続合成床版箱桁橋)は架設準備中とのことですが、どのように架設を行っていきますか
 飯野 発注時は中央径間のみ送出しで、両側径間はトラッククレーンベント架設でしたが、施工者(横河ブリッジ・楢崎製作所・飯田鉄工JV)の技術提案により、全径間送出しで施工することになりました。
 P2~A2間にベント1基を構築した上で、左岸側のA2背後に送出しヤードを設けて送出していきます。支間長は55.6m+91.0m+72.6mで、送出し長62.6m・30m・81m・49.1m・55mの5ステップに分けて架設していく予定です。



濁川・平等川橋(仮称)の施工状況

 ――設計中の橋梁1橋は
 飯野 唐柏(からかしわ)1号橋(仮称)です。笛吹市石和町唐柏地内に架橋する橋長208mの鋼6径間連続少数鈑桁橋となります。

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