擁壁の復旧 親杭パネル方式を採用
土木コンクリートブロック協会の別工法も採用を模索
――道路の擁壁工について。国道210号赤岩防災事業では、仮復旧工を残置したまま、本復旧の擁壁の鋼管杭を打設していきました。本事業で、以前に所長に聞いた時にはすべてその方式にするとコストがかかりすぎるとのことでした。現況はどのようになっていますか
徳田 治水対策実施後の水位を目標に道路をかさ上げします。かさ上げ条件として、大型ブロックの擁壁としていますが、上げると勾配を付けなければならず、それにより幅員が狭くなります。そのため、幅員が確保できない場合は、親杭パネル方式を採用しています。垂直に上げるもので、ほとんどが本工法で施工しています。H鋼を建て込んで、コンクリートパネルを落とし込んでいく工法で、景観壁体研究会(日特建設等数社)の特許工法となります。H鋼2本を1組にして、製品ブロックをH鋼に差し込む形にします。のり面の真ん中に本工法で施工することにより、河積と幅員を確保できます。
擁壁の工事実施例③(井手迫瑞樹撮影)
擁壁工事実施例④(井手迫瑞樹撮影)
擁壁工事実施例⑤
――仮復旧の土砂は埋め殺しですか
徳田 基本的には埋め殺しです。
――H鋼の継手は
徳田 溶接です。
――従来工法と比べたら、施工費は安いのですか
徳田 かなり安いです。例えば赤岩防災などで使われているジャイロパイルは半永久的に持つと言われていますが、本工法もH鋼にコンクリートを巻くので、基本的には100年はもつと考えています。
――H鋼の打ち込み深さは
徳田 地盤によって違いますが、自立するまで打ち込みます。自立ではあまり入れられないので、高さが高くなると道路下にアンカーを打ちこんで止めます。
本工法は日特建設など数社の工法であり、下請けで施工しています。現在、土木コンクリートブロック協会で別の工法をNETIS申請しています。代表申請は共和コンクリートが行っているようです。
発注橋梁は全て鋭意設計中
詳細設計を工事発注と同時並行で行っている状況
――新技術の活用について
徳田 DXをはじめとしたさまざまな施策を進めていますので、新技術が出てくれば現場で適用できるかどうかを見極めながら活用していきます。
――ICT/DXの取組みでは
徳田 具体的な取組みはありませんが、現場で適用できるのであれば活用していきたいと考えています。ドローンを使用した測量などは普通に行っています。
――法面の補強・補修は復興計画のなかに含まれていますか
徳田 初期段階ではありましたが、すでに復旧していますので、現在はありません。しかし、今後、権限代行区間で崩落等が発生したら対応していきます。
――県道についてはJR肥薩線の方針が固まるまでは手が付けられないのでしょうか
徳田 そうです。ただ、橋梁の擦り付け部の復旧や、集落に人が戻れるかまだわかりませんが、戻れるならば避難路指定をして復旧方法を議論していきます。集落に戻るかどうかは地区ごとに判断されていくので、復興計画も集落ごとに行っていきます。
JR肥薩線の敷地を工事用道路として使っている個所
JR肥薩線の現状
――今後のタイムスケジュールについて下部工、上部工の発注見通しは
徳田 できるところから発注していくとしか言えません。
――鋼橋がこれだけあるので、鋼橋の業者は発注時期と事務所が求めていることを知りたいと思います。少しだけでも教えてくれるとありがたいです
徳田 上部工の橋種と現場条件が違うので、発注時のテーマがまだ決まっていません。現場によって架設条件を求めるかのどうかも出せませんし、そこまで最終決定ができていません。
――設計は全橋完了しているのですか
徳田 していません。最後まで完了しているものはありません。
――鎌瀬橋は完了しているのではないのですか
徳田 概算発注です。下部工も概算発注です。契約までに設計が完了するように、発注橋梁はすべて鋭意設計中です。
――上部工のみの詳細設計などもあり得るのですか
徳田 それはありません。おおまかな重量が分からなければ下部工の設計もできません。ある程度の設計はできあがっていますが、架設方法などの詳細までは決まっていません。構造設計はある程度できあがっていると言えます。詳細設計を工事発注と同時並行で行っている状況です。
――下部工の詳細設計は完了していますか
徳田 概算発注で出しています。上部工で見直しが少しでもあれば下部工にも影響が出る可能性があるので、そのようにしています。
――綱渡りですね
徳田 早く発注して、早く復旧するという命題があるので、できるところから行っていきます。
――ありがとうございました