2022年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑧駒井ハルテック
4カ所の製造拠点持つ強み発揮 インフラ整備し風力発電を拡充
株式会社駒井ハルテック
代表取締役社長
中村 貴任 氏
当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。4回目は、駒井ハルテックの中村貴任社長と宮地エンジニアリンググループの青田重利社長の記事を掲載する。
――今期の業績予測について
中村 22年3月期連結業績は売上高が295億5,200万円と微減だったが、営業利益は15億1,000万円と大幅な増益だった。23年3月期は売上高490億円、営業利益7億円と増収減益を見込んでいる。
――足元の事業環境は
中村 橋梁、鉄骨、インフラ環境の3事業のうち、橋梁は21年度の鋼製橋梁需要が約19万tだったが、22年度も同じレベルを見込んでいる。目安の20万t超を期待するが、上期の発注は少なかった。今後も新設の鋼製橋梁は大幅には増える要素がない。大規模更新需要は首都高速や阪神高速などの案件はある。大規模更新需要があっても、当社は人材面の課題でそれを取り込むことが厳しい。高齢化も進んでおり、若い人を入れても育てるには5~10年かかるので、長い目でみて社内の仕組みを整備していく。政府が進める国土強靭化に資するためにも、当社グループは安全・安心な社会基盤構築に貢献できる会社グループを目指していく。海外の鋼製橋梁はミャンマーやバングラデシュで実績があり、今後も良い案件があれば一定の数量は手掛けていく。
――鉄骨事業は
中村 首都圏では東京五輪開催でずれ込んだ工事が目白押しだ。日本橋、品川、芝浦、新宿、渋谷、六本木、内幸町、それに東京トーチなどがある。仕事は27~28年まであり、24~26年がピークになるだろう。ただ、東京一極集中で、地方は札幌、福岡、広島は案件があるが、大阪と名古屋は厳しい。首都圏は案件が豊富で、主力の富津工場(千葉県)の設備も増強したことにより数量をこなせる能力はある。しかし、期ずれしている案件もあり、後ろに重なると図面要員や現場要員の不足もあり厳しくなる。
――鋼材値上げの影響は
中村 鉄鋼メーカーの相次ぐ値上げの影響は受けているが、受注単価に転嫁していくしかない。公共工事は物価スライド条項があるが、民間工事は厳しい。鉄鋼メーカーや商社と打ち合わせをしながら、値上げを見込んだ対策をとっているが、苦慮している。業界全体で対応していく。
――強化ポイントについて
中村 富津工場を中心に和歌山工場(和歌山県)でも工場の操業のやり方を変えている。無駄を排除してコストダウンすることが利益につながる。物づくりの回転を速めることもコストカットにつながる。
千葉県富津市・市道海岸線(海岸橋)橋梁補修(上部工架設)工事
――設備の増強を検討する
中村 橋梁と鉄骨については、大きく変えることは考えていない。インフラ環境事業は風力発電を伸ばしていく。現在は陸上風力発電の300kWだけであるが、300kW以上のサイズを開発中だ。浮体式洋上風力発電は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで採択されており、富津工場のレイアウト変更を検討している。風力発電はカーボンニュートラルやSDGsにも資する事業なので、26年3月期には60億円の売上高を目指している。橋梁、鉄骨に続く第3の柱に育てていきたい。以前はロシアにも風車を納入したことがあるが、今は見合わせている。
――4製造拠点を持つ強みを発揮する
中村 富津工場、和歌山工場の2工場に加えて、東北鉄骨橋梁(宮城県)、KHファシリテック(福岡県)の2子会社を持つ地の利を生かしていく。工場の山積みの高低が収益に影響するので、これを平準化することが課題になる。
――DXへの取り組みは
中村 ICT委員会を発展させ、DX戦略員会を立ち上げ、タブレットやドローンを含めたICTを活用し、仕事の「見える化」を進め、仕事の合理化に取り組んでいる。それが働き方改革にもつながる。
(聞き手・岡辰巳、文中敬称略)