道路構造物ジャーナルNET

2022年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ④瀧上工業

首都案件受注などに注力 電炉材の研究を推進

瀧上工業株式会社
代表取締役社長

瀧上 晶義

公開日:2022.10.03

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。2回目となる今回は、瀧上工業の瀧上晶義社長と巴コーポレーションの深沢隆社長の記事を掲載する。

 ――21年度の業績は
 瀧上 売上高が146億7,000万円(連結)、営業損失が1億9,000万円、経常利益が2億1,000万円と減収減益となった。各部別では、まず橋梁事業は鋼道路橋の発注量が国土交通省直轄の工事で回復傾向がみられたものの、全体の発注量が3年連続20万t割れの厳しい状況となり、受注競争の熾烈化が続いている。一方、保全工事は依然として活況で、業界の業態転換がますます進む環境にある。こうした状況下で、当社はグループ企業も含めて技術提案力強化とECI方式による受注案件により、受注高は113億2,000万円(前年同期比14.6%減)となった。
 次に鉄骨事業では、大型電力案件の新設市場が縮小する中、都市部を中心とした大型再開発や物流倉庫などの大型案件の着工が相次いだものの、昨年後半から続く鋼材の価格高騰や溶材などの相次ぐ値上げ、納期の長期化などから工程のずれなど不透明な状況が続いている。ただ、民間工事案件の受注に努めた結果、同事業の受注高は32億1,000万円(同50.9%増)となった。
 一方、損益では橋梁事業が間接費の負担増で工事損益悪化を招く結果となった。鉄骨事業は3年前から積極的に取り組み始めている一般鉄骨の受注(鉄構本部)に傾注したことで一定の受注量を確保したものの、一部で採算確保の厳しい工事受注が相次いだため、橋梁事業と同様に損益悪化を招くものとなった。
 ――前期からスタートした3カ年計画も2期目に
 瀧上 昨年度から始まっているこの計画はコロナ禍を契機に、社会環境の変化に合わせ「柔軟で強靭な企業体質」を目指すもの。その実現のために各事業の基盤強化に合わせて入札だけに頼らない企業体を作り、多角化戦略に取り組むことに今期も変化はない。
 具体的な事業計画、課題として、鉄骨事業は年間の生産目標である1万2,000t体制を維持し、事業拡大を図る。特に首都圏における大型プロジェクトの受注で存在感を示していきたい。設備関係では今年度中に柱大組立溶接ロボットシステムを増設して2台体制とし、プラズマ切断機や開先加工機の更新も行う。
 また、教育訓練を取り入れながら、図面処理能力の向上や生産コスト高解消のため、引き続き同業他社との協力体制と外注管理の強化に取り組む。
 橋梁事業では国土強靭化計画の中で着実に受注量確保に注力していく。引き続き技術提案力と積算精度の向上を図る。
 保全事業では約30億円の売上高を確保する中、現在、高速道路の床版取替えや橋梁の耐震補強工事の受注活動を続けている。技術者も年々増加している。今後もグループ各社の力を結集し規模に限らず受注拡大を目指していきたい。
 さらに、SDGsの観点から電炉材の使用について、その可能性を多方面から検討している。
 海外・新規事業では日本のODA開発事業がようやく再スタートした。現地法人とフィリピン駐在員事務所を活用し、橋梁案件の受注に注力する。そのほか、不動産事業は引き続きグループ会社資産の一括管理と新規物件の開発を図る。


三遠道路一号橋

 ――人材確保や育成については
 瀧上 今年の4月に6人の新入社員を迎えた。今年度から特に新しい人事評価制度を採用し、これまでの13階級から8階級制度へと変更した。職域も地域限定、一般、総合を明確にし、社員の希望を取り入れながら、適材適所への異動を含め、確保と育成に取り組んでいる。昨年4月に立ち上げたシステム管理室の人員を増員するとともに、本社棟3階にある技術本部のフロアを新装し、社内のデジタル化推進の拠点と位置づけた。現在はその推進のため、改めて行程表を各社員に再提示しながら理解を求め、必要な労働環境の改善を進めている。
(聞き手・和田徹、文中敬称略)

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