道路構造物ジャーナルNET

2022年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ③巴コーポレーション

次期五ヶ年経営計画を策定中 鉄構事業では「深耕」に注力

株式会社巴コーポレーション
代表取締役社長

深沢 隆

公開日:2022.10.03

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。2回目となる今回は、巴コーポレーションの深沢隆社長と瀧上工業の瀧上晶義社長の記事を掲載する。

 ――昨年度の業績は
 深沢 売上高253億円、営業利益35億円(利益率13.8%)。完工高は、会計基準変更、工期遅延等の影響で事業計画値、中期経営計画値には届かなかったものの、営業利益、利益率は達成することができた。
 ――今年度の見通しは
 深沢 社外発表は、完工高290億円、営業利益18億円(利益率6.2%)。利益率は、昨年度実績には及ばないものの、最低でも8%のレベルは確保したい。
 ――次期中期経営計画は
 深沢 今年度を最終年度とする現三ヶ年中期経営計画は、東京五輪後の端境期を想定、「守り重視」で、『KEEP ON 3』と命名した経緯がある。
 現在策定中の次期五ヶ年中期経営計画においては、利益率重視の基本方針は堅持しつつ、①現事業領域における体質改善強化②周辺事業領域の拡大③新規事業領域への参入④グループ会社の再編等により、全社レベルで完工高を伸ばす――等、「攻めへの転換」を図りたい。
 ――鉄構事業の取り組み方針は
 深沢 鉄構事業においては、「攻め」というよりも、「深耕」に注力する。
 大空間構造分野においては、①免震支承②木とのハイブリッド構造形式等の新技術・商品を市場に投入するなど、継続して積極的な営業展開を図る。鉄塔分野においては、一定量の需要が見込まれることから、設計・技術業務も含め、確実に必要生産量を確保する。鋼橋分野においては、技術提案力、施工体制の強化を図り、国土交通省、地方自治体案件を中心に安定的な生産量確保を目指す。また、多くの首都圏大型再開発案件の着工が見込まれるビル鉄骨分野においては、製作工程が重なる事態も想定されることから、慎重に対応していく。
 ――鉄構事業の課題は
 深沢 一つ目は、①鋼材をはじめとする変動費高騰②諸資材デリバリー問題に端を発する工期遅延に伴う生産山積みの不安定化による採算への影響――である。計画的な対応により、可能な限り影響を回避したい。
 二つ目は、世代交代に伴う生産性の低下である。システム推進を発展的にDX推進に改組、「技術」のIT化、AR化、自動化等による置換を鋭意進めている。しかしながら、問題となるのは、置換が難しい、企業の付加価値ともいえる「技能」部分の継承である。


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 ――鉄構の設備投資等は
 深沢 全工場の事務所棟新築、溶接試験室をはじめとする試験研究施設整備といった作業環境の改善は完了、クレーン等も含む老朽化設備・ソフトの更新も鋭意進めている。
 ――事業領域拡大、新規事業等は
 深沢 技術人材の有効活用を狙いとする鉄構エンジニアリング事業については、あくなき挑戦を継続する。
 従前から取り組んでいる電磁環境に関する建設事業については、新技術の開発を進める等、事業拡大に注力する。
 活用度の低い工場建屋の解体、空地有効利用をはじめとする、保有不動産のさらなる活用を進める。
 また、事業開発において、新規事業への参入、事業領域拡大を継続検討する。
 ――注力する経営戦略は
 深沢 一つ目は、年々深刻化が増している要員確保の問題である。これについては、①魅力的な企業風土作り②発信力の強化――が不可欠である。二つ目は、人材育成の問題である。①先に挙げた「鉄構エンジニアリング事業」の展開強化②建設、不動産、グループ会社等他部門との連携強化③新規事業領域の拡大――と、いずれのスキームもリーダー足りえる有能人材失くしては語ることができない。
 安定した利益確保は勿論ではあるが、明日に繋がる事業継続可能な体制の構築を目指したい。
(聞き手・大熊稔、文中敬称略)

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