「社会公共への奉仕と健全経営」に基づいた経営を今後も進めていく
横河ブリッジ 吉田昭仁新社長インタビュー
株式会社横河ブリッジ
取締役 社長執行役員
吉田 昭仁 氏
2021年度の売上は760億円、営業利益110億円、生産量約38,000t
事業割合は直近では新設6割、保全3割も長期的には割合が逆転する可能性も
――昨年度の完成工事高および生産トン数と中期的な経営目標額
吉田 2021年度は売上760億円、営業利益110億円、生産トン数は約38,000tでした。2020年度は売上740億円、営業利益110億円となっています。2019年度が売上720億円、営業利益84億円でした。
トン数内訳は2021年度が橋梁約33,000t、その他としてトンネルセグメント、システム建築などが約5,000tとなっています。2020年度が橋梁約35,000t、その他約4,000t、2019年度が同約40,000t、他約6,000tとなっています。
――新設と保全およびその他の事業の割合は
吉田 直近では新設が6割、保全が3割、その他が1割という構成になっています。というのも、国内鋼道路橋発注量は底であった13万tから20万t弱まで回復しており、今後もその傾向が続きそうなことが背景にあります。具体的には、圏央道の4車線化工事や大阪湾岸道路西伸部などがその要因となっています。
ただし、その需要が一段落した後の新設発注は不透明です。そのため、将来は新設・保全の割合がイーブン、あるいは逆転する可能性も見込まなくてはいけません。そのための体制づくりにも取り組んでいます。
――その他事業としてはcusaやKEROが堅調ですね
吉田 cusaは軽量かつ防食性能に優れ、床版取替時には足場として使用し、施工後は残置して点検足場として使用できます。コンクリート剥落等の第三者被害も防止できますので好評でかなり伸びており、今後も力を入れていきます。
――海外事業は具体的にはどのような地域に力点を置かれていますか
吉田 東南アジアからアフリカを中心に取組んでいます。バングラデシュやフィリピンでは大型のODA案件も出てきています。
正直、海外事業で利益を出すのは難しい側面がありますが、海外工事は「夢」があり、海外で研鑽した技術を国内にフィードバックすることもできますので、引き続き挑戦していきます。
また、当社グループにはフィリピンでエンジニア業務を行うYTPがあります。そうした会社とも協力して、エンジニアを育てて、フィリピン国内の仕事の受注を積極的に行うことも考えていきたいと思います。
cusaは裏面吸音機能付与タイプをニューリリース
「桁回転装置・解体方法」は既設桁撤去にも使えないか技術開発進める
――新技術・新商品の開発は
吉田 保全分野ではIH技術を用いた誘導加熱式塗装剥離技術、床版取替の効率化を図る切断工法技術としての「サブマリンスライサー」、プレキャストコンクリート壁高欄「ラピッドガードフェンス」、既設橋の撤去・更新を効率よく行える「KPYダブルユースガーダー工法」などを開発しています。また、cusaについては、裏面吸音機能も付与した新しいタイプをこのほどリリースしており、従来の軽量・防食・恒久足場としての活用だけでなく、都市内の騒音低減をも図れる製品として積極的に提案していきたいと考えています。
ラピッドガードフェンス(実験中、井手迫瑞樹撮影)/サブマリンスライサー(当サイト既掲載)
――新濃尾大橋では手延機の撤去を簡便に行える「桁回転装置・解体方法」も開発しましたね
吉田 同装置は、単に手延機の解体・撤去だけではなく、既設桁の撤去にも使うことができないか、技術開発を進めています。
桁回転装置
――最近の特筆すべき橋梁の新設あるいは更新、保全の現場について
吉田 施工中の新設橋梁としては、新濃尾大橋で、前述のような技術を開発、投入しました。また、補修及び塗替えの現場として、首都高速道路7号小松川線の現場に行きましたが、非常に密閉された空間で、エアラインスーツを着装して、負圧をかけながら循環式ブラスト工法を施工する状況を実際に視察しました。保全の現場の大変さを痛感すると共に、こうした現場環境の改善にも努めていく必要を改めて感じています。
保全の現場の大変さを痛感
塗替え完了後の鋼桁
社内に技術伝承WGを作り、技術系DBを拡充
女性の雇用にも努める
――最後に働き方改革について
吉田 新型コロナが収束しても、勤務状況は大きく変えていくべきではないと思っています。在宅勤務や時差出勤などは制度化していきます。
また、雇用の面では女性の雇用に努めており、最大で3割強、ここ数年の平均でも年度雇用の2~3割が女性となっています。さらに最近は女性で現場に行きたいという方も増えています。そのためには女性が働きやすい現場を実現しなくてはいけません。その対策は早急に進めていきます。
産休、育休、介護休暇などの制度は強化しており、さらにDXやVRを積極的に取り入れることで、何らかの理由で長期の在宅をしなければいけない技術者でも家に居ながらにして、仕事に取り組める環境を検討しています。産児、育児、介護などのライフイベントで、せっかくの技術者を手放すことは損失です。それを回避するためにもこうした施策は重要です。
――技術者の資格取得への補助などについては
吉田 技術講習会などは積極的に取り組むと共に、各技術資格の取得については補助制度を充実させるなど奨励しています。また、社内に技術伝承WGを作り、技術系DBを拡充することも取り組んでいます。文書類はもちろん、動画も多用したDBにしていく方針です。
また、新入社員には一級土木施工管理技士をできるだけ早く取得してもらうために、最初に現場を経験することを基本にしています。そういう社内教育制度も作っていきたいと考えています。
――ありがとうございました