橋梁312橋とトンネル62箇所を管理
北海道開発局小樽開発建設部 倶知安余市道路 仁木IC(仮)~余市IC間は2024年度の開通を目指す
国土交通省 北海道開発局
小樽開発建設部
部長
遠藤 達哉 氏
構造物延長は約12km
橋梁はランプ橋を含め60橋、トンネルは2箇所(3本)を計画
――構造物比率は
遠藤 予備設計段階を含めたもので未確定となりますが、構造物延長は約12kmで、全体の約30%になります。橋梁延長は約7kmでランプ橋を含め60橋、トンネル延長は約5kmで2箇所の計画です。なお、トンネルは1箇所が上下線分離のトンネルとなります。
――事業の進捗状況は
遠藤 倶知安IC~共和IC(延長11.5km)は約8%(事業費ベース)で、用地進捗率は約16%です。共和IC~余市IC(延長27.6km)は約34%、用地進捗率約77%となっています。
倶知安IC~共和IC間では用地買収や物件補償を鋭意進めているとともに、測量設計、一部改良工事に着手しています。
共和IC~余市IC間も測量設計、用地買収、改良工事を中心に行っていますが、一部の橋梁下部工事とトンネル工事に着手、もしくは着手予定です。2024年度開通予定と公表している仁木IC~余市IC間では改良工事を中心に、橋梁下部・上部工事を予定しています。
――仁木IC~余市IC間で完成した橋梁はありますか
遠藤 橋長429.5mの登川大橋(3径間連続鋼合成細幅箱桁橋×2連)は床版工まで完了しました。
登川大橋。床版工までの完了
――同区間では橋梁上部工事を予定しているとのことですが、具体的な橋梁を教えてください
遠藤 同区間には登川大橋のほかに、町道2番地通橋(48.2m、単純鋼合成少数鈑桁橋)、モンガク線橋(22.8m、単純PCプレテン中空床版橋)、黒川1号橋(23.8m、単純PCプレテン中空床版橋)の3橋があります。3橋とも2022年度に架設予定です。
町道2番地通橋(左)/モンガク線橋(A2橋台)(中央)/黒川1号橋(右)の施工状況
――共和IC~余市IC間で工事に着手、もしくは着手予定の橋梁とトンネルは
遠藤 橋梁は、余市川橋(308.1m、4径間連続鋼非合成細幅箱桁橋)、仁木農道橋(155.4m、4径間連続鋼合成少数鈑桁橋)、冷水川橋(22.8m、単純PCプレテンT桁橋)、宝川橋(130.4m、2径間連続鋼合成細幅箱桁)の4橋です。
余市川橋はA2橋台が完成済みで、A1橋台を施工中、仁木農道橋は2022年度にA1橋台から着手、冷水川橋は2022年度にA1橋台を施工、宝川橋は2022年度にA1及びA2橋台を施工します。
余市川橋(左)/仁木農道橋(中央)/冷水川橋(右)の施工状況
トンネルは、上下線分離の新稲穂トンネル(R側)(上り線、3,862m)と仁木トンネル(1,247m)です。
新稲穂トンネル(R側)は2018年度に工事発注、2019年度に両坑口(共和側と仁木側)から掘削を開始して、5月末時点で共和側が2,084m、仁木側が1,093mの掘削を完了し、覆工も進めています。L側(下り線、3,826m)は2022年度第4四半期に発注予定です。
共和工区の坑口と掘削
共和工区の覆工打設
仁木工区の坑口とズリ出し
仁木工区の覆工打設
仁木トンネルは、トンネル仮設備工施工中です。
仁木トンネルの施工状況
――残りの橋梁は
遠藤 現在、設計中もしくは一部設計完了という状態で、先に挙げた橋梁以外は未発注です。仁木南IC~仁木IC間は土工事に着手し、工事用道路も一部つくり始めていますので、同区間の橋梁下部工事は2022年度から順次発注を行っていきたいと考えています。
第2バンノ沢川橋 橋長534m、完成後は管内最長のPC橋に
銀山大橋 基礎工でディープウェル工法を採用
――特徴ある形式の橋梁について
遠藤 倶知安IC~共和IC間の第2バンノ沢川橋があります。2020年度に詳細設計が完了した橋長534mの7径間連続PCラーメン箱桁橋で、完成すれば管内のPC橋では最長となります。
第2バンノ沢川橋 橋梁一般図(側面図)
施工予定箇所は積雪寒冷地(最低気温-18℃、最大積雪量177cm)であり、交差条件として第2バンノ沢川、私道3箇所、沢2箇所のハイピアの長大橋になります(最大橋脚高はP4の63m)。一般的なPCラーメン箱桁ですが、下部工の一部(P2とP5)に2枚壁式橋脚を採用したことも特徴です。
張出し架設を冬期間、山間部の高橋脚上で行うため、資材搬入計画、打設計画が重要になります。また、マッシブな柱頭部には、特に寒冷期において温度応力が発生しやすく、耐久性に影響がないようにひび割れをコントロールする必要があります。そこで、工事実施時期確定後に、実際の施工時期の気温に合わせて温度応力解析を行って、解析結果に応じたひび割れ防止鉄筋を配置する予定です。
――基礎については
遠藤 A1、A2橋台が深礎杭、P6橋脚が直接基礎で、その他すべて大口径深礎となります。
――ほかに特徴ある橋梁はありますか
遠藤 共和IC~仁木南IC間の銀山大橋が挙げられます。橋長565mの9径間連続鋼合成少数鈑桁橋で、鋼橋、PC橋を含めて管内で最長の橋梁となります。
2018年度から下部工に着手し、A2橋台とP2~P8橋脚は完成しています。A1橋台とP1橋脚は施工する際の工事用道路がJRの敷地内を通過するため協議中で、2022年度の施工予定はありません。2021年度に施工したP5およびP7橋脚では被圧滞水層があったため、ディープウェル工法で地下水位を下げながら基礎工を行いました。
銀山大橋 P6橋脚の施工と完成後
銀山大橋 P5橋脚(右)とP7橋脚の(左)の施工
――下部工形式は
遠藤 橋台は逆T式橋台(場所打ち杭)、橋脚は柱式橋脚で、基礎はP1が大口径深礎杭、P2・P3・P5~P7が場所打ち杭、P4・P8が直接基礎です。
――橋脚はどのように構築しましたか
遠藤 ヤードが平場でしたので、オールステージングで施工できました。
新稲穂トンネル 中断面トンネル2本とすることでコスト縮減と大幅な工期短縮を実現
ホイールローダーの無人化施工を試行的に実施
――特徴のあるトンネルについて
遠藤 上下線分離の新稲穂トンネルがあります。R側の3,862mは管内最長となります。
計画段階では、分離2車線の大断面トンネル1本で検討を始めましたが、延長と交通量から防災等級AAとなり、避難用トンネルを併設する必要がありました。100㎡を超える大断面の掘削に加え、避難用トンネルも掘削するとなると、工期も長く、コストも高くなります。そこで、上下線を分離した片側1車線の中断面(43.4㎡)トンネルを2本計画することで、コスト縮減と大幅な工期短縮を図りました。
災害発生時には反対側のトンネルが避難トンネルとして機能するほか、相互のトンネルを連絡する避難通路は、排煙シミュレーションを行い、必要な配置間隔を検討するなど安全性に配慮されたトンネルとなっています。
――地山状況は
遠藤 古平層群の凝灰質砂岩が主体の地質となり、玄武岩、火山礫凝灰岩が貫入し全体的に緩い波状褶曲構造となっています。そのため、補助工法として、長尺鋼管フォアパイリング、長尺鏡ボルト、水抜きボーリングを採用しています。
――設計と施工は
遠藤 詳細設計はドーコン。施工は、共和側が飛島・中山特定JV、仁木側が西松・草別特定JVです。
――施工でのICT活用などの工夫がありましたら教えてください
遠藤 西松・草別特定JVでは、掘削ずり搬出作業に使用されるホイールローダーの無人化施工を試行的に実施しています。ローカル5G通信技術と遠隔操作システムを活用したもので、狭隘な坑内走行と複雑なバケット操作が問題なく行えることを確認しました。
飛島・中山特定JVでは、撮影した切羽写真を補助工法の検討や今後の施工管理に活用しています。
ホイールローダー無人化施工の概要と無人稼働の状況
国道229号島牧防災 別線トンネルを2本整備
――防災事業では
遠藤 「国道229号島牧防災」が事業中です。岩盤崩壊等による危険箇所の解消を図り、災害発生時における沿線集落の孤立解消および安全な通行の確保を目的とした事業となります。延長は6.1kmで、2016年度に事業着手しました。別線で1km程度のトンネルを2本整備しますが、現在はその前段となるのり面対策や坑口への工事用道路の整備などを行っています。トンネルは調査・設計段階です。
国道229号島牧防災の概要