道路構造物ジャーナルNET

橋梁312橋とトンネル62箇所を管理

北海道開発局小樽開発建設部 倶知安余市道路 仁木IC(仮)~余市IC間は2024年度の開通を目指す

国土交通省 北海道開発局
小樽開発建設部
部長

遠藤 達哉

公開日:2022.06.28

 国土交通省北海道開発局小樽開発建設部は、多種多様な農水産物が営まれるとともにニセコや小樽といった世界的観光地を有する後志地方を所管している。第8期北海道総合開発計画では食と観光が戦略的産業として位置づけられ、それらを着実に営める生産空間を保持し発展させていくために欠かせないインフラのひとつが、現在、建設中の倶知安余市道路だ。同道路の整備事業を中心に、維持管理の現状についても遠藤達哉小樽開発建設部長に聞いた。

東京都の約2倍の面積約4,300km2を所管
 6路線488.9kmの国道を管理

 ――管内の地勢的特徴からお願いします
 遠藤部長 小樽開発建設部は後志地域を所管しています。北海道庁は道内を14の地域に区分していますが、そのうちの後志総合振興局の所管地域と同一となります。後志地域には、1市13町6村の20市町村が属しており、面積は約4,300km2で北海道全体の5.2%を占め、東京都の約2倍に達します。人口は約20万人、そのうち当地域の中心的な都市である小樽市が約11万人と半分強となっています。
 後志地域の特徴としては、多様な農水産物に代表される「食」、ニセコや小樽など高い訴求力を持つ「観光」が挙げられます。食に関していえば、多様な農水産業が営まれていて、農業では水稲、野菜、果樹など幅広く生産が行われ、ブドウ、ゆり根、ミニトマトは作付面積で道内一となっています。水産業に関しても昔はニシン漁が非常に盛んな地域でしたが、最近ではスルメイカやホッケ、ブリなどの水揚げ量が多く、鮭の養殖にも取り組んでいます。
 観光については、小樽やニセコといった北海道を代表する観光地を有しています。小樽は江戸時代には北前船の起終点として、明治期には石炭の積出港として発展しました。最盛期には日銀の支店をはじめ20を超える金融機関の支店があり、“北のウォール街”と言われた歴史もあり、それらの歴史的な建造物や運河などが観光資源として利用されています。
 ニセコは世界有数のスキーリゾートであり、世界水準の観光地です。コロナ禍でインバウンド需要は小休止していますが、ホテルやリゾート開発への投資は相変わらず堅調です。さらに、小樽や余市、仁木などの地域でワイン用のブドウの作付面積が増加するとともに、ワイナリーも増えていて、それを巡るツアーも盛んになっています。
 ――管理道路と整備方針は
 遠藤 6路線488.9kmの国道を管理しています。管内を縦貫する国道5号の管理延長は143.6km、海岸沿いの国道229号は同186.8kmとなっています。このほか、国道230号(同37.4km)、国道276号(同56.2km)、国道337号(同2.5km)、国道393号(同58.3km)、5号(新道)(同4.0km)となります。
 2016年に10年計画で策定した第8期北海道総合開発計画では、食と観光が戦略的産業として位置づけられ、それらが着実に営める生産空間を保持し発展させていくことが大きな目標となっています。道路整備をはじめとするインフラ整備を行い、世界水準の取り組みを進めて、世界と競争および連携して「世界の北海道」を目指していきます。
 当部では、後志地域の道路整備を通じて食料供給基地としての持続的な発展や世界水準の観光地域の形成に貢献すること、生産地域で安心して生産活動に従事し、生活できる環境づくりを目指しています。同時に、防災対策や交通安全対策、無電柱化を推進し、強靭で持続可能な国土づくりに取り組んでいきたいと考えています。

倶知安余市道路 延長39.1kmの自動車専用道路
 新千歳空港、苫小牧港などとのアクセス向上により食と観光を支援

 ――事業中の路線について教えてください
 遠藤 倶知安余市道路が事業中の主な路線となります。同道路は、後志自動車道(倶知安IC(仮)~小樽JCT/延長62.4km)のうち、倶知安町から余市町を結ぶ延長39.1kmの一般国道の自動車専用道路です。構造規格は1種3級、設計速度は80km/h、完成2車線の道路です。ICは、倶知安、共和、仁木南、仁木、余市(供用中の余市以外はすべて仮称。以下、同)の5つとなります。
 開通済みの余市IC~小樽JCTと接続し、さらに全道の高速道路ネットワークとつながって、札幌都市圏や新千歳空港、苫小牧港などを結ぶ道路となります。


倶知安余市道路の概要(以下、小樽開発建設部提供。または北海道開発局および同部ホームページより)

 ――整備効果は
 遠藤 まず、国際的観光地であるニセコのさらなる発展を支援できると考えています。観光入込客数は年々増加傾向あり、2019年度には道内1位の約2,142万人を記録しています。宿泊施設も2010年度と2019年度を比較すると、約10年間で約2倍になっています。
 しかし、新千歳空港からは夏期でも約134分かかることや、大雪時に急な上り坂で大型車が立往生しやすい「予防的通行規制区間」の稲穂峠、倶知安峠を経由する必要があり、アクセス性に課題があります。
 本道路の整備により、新千歳空港や札幌市からの速達性が向上し、新千歳空港から倶知安町までが2時間を切ることになり、円滑なアクセスが可能となります。


整備効果:世界水準の観光地の形成を支援

 2点目は、後志地域の生産空間の維持発展に寄与することです。当地域の農産品の8割は道外に出荷されていますが、現在の国道5号には国際コンテナ車両の通行支障箇所があります。整備により札幌都市圏などへの出荷がスムーズになるとともに、小樽港や新千歳空港などを通じて、全国への出荷が円滑になると考えています。


整備効果:後志地域の生産空間の維持・発展を支援

 3点目は、緊急搬送ルートの確保が期待されることです。2017年には後志地域内で1,911件の緊急搬送件数があり、そのうちの約半数が高次医療施設のある小樽市や札幌市に搬送されています。しかし、国道5号は線形が厳しいため患者への負担が大きく、時間も倶知安町から小樽市まで81分かかりますので、安全性と速達性に課題があります。これが整備により、倶知安町から小樽市までが62分となります。
 4点目は、災害時のリダンダンシーの確保です。胆振地域には有珠山や樽前山という活発な活火山があり、有珠山は約30年周期で噴火を繰り返しています。2000年の有珠山噴火時には、函館と札幌を結ぶ唯一の高速道路である北海道縦貫自動車道が約15カ月間通行止めになりました。JR室蘭本線も不通になったことから、輸送能力不足により苫小牧港などにコンテナが滞留するという事象が発生しました。道南圏と道央圏を結ぶ代替路として国道5号が利用されましたが、狭小トンネルの存在や線形などに課題がありました。本道路が太平洋側の代替路として機能することで、物流を支え、迅速な救援および避難活動に寄与することができると考えています。


整備効果:災害時の緊急輸送ルートの強化

 このほか、観光時期を中心に発生している交通渋滞が緩和されることや、国道の事故危険区間を回避することで安全性の高いネットワークとなることが期待されています。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム