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6路線約720kmを管理、橋梁は811橋、トンネルは63チューブ

NEXCO東日本北海道支社 札幌市内の連続高架区間のリニューアル工事に着手

東日本高速道路株式会社
北海道支社
道路事業部長

林 正幸

公開日:2022.06.22

30年以上経過した橋梁は420橋で全体の5割以上
 トンネルは4割以上が30年以上経過

 ――管内の橋梁の内訳は
  811橋を管理していて、RC橋が437連、PC橋が671連、鋼橋が561連となっています。延長別では、50m未満が638連、50m~100m未満が422連、100m~500m未満が603連、500m以上が6連です。
 供用年次別では、30年~40年の橋梁が318橋(39.2%)と最も多く、次いで20年~30年が234橋(28.9%)です。30年以上経過した橋梁は420橋で、全体の5割以上を占めています。路線別では、道央自動車道が540橋(66.6%)と6割以上となっており、次いで道東自動車道の154橋(19.0%)となっています。


管理橋梁の内訳

 ――トンネルについては
  63チューブを管理しています。そのうち、NATM工法が44チューブ、在来工法が16チューブ、その他が3チューブです。延長別では、100m未満が1チューブ、100m~500m未満が19チューブ、500m~1,000m未満が18チューブ、1,000m以上が25チューブです。
 供用年次別では、30年~40年が21チューブ(33.3%)と最も多く、30年以上経過したトンネルは27チューブで4割以上となっています。路線別では、道央自動車道が32チューブと約半数を占めています。


管理トンネルの内訳

健全性判定区分Ⅲは橋梁17%、トンネル66%

 ――橋梁とトンネルの定期点検結果は
  2020年度末時点で橋梁829橋、トンネル55チューブの定期点検を実施しています。健全性判定区分の内訳は、橋梁ではⅠが105橋(13%)、Ⅱが581橋(70%)、Ⅲが143橋(17%)、トンネルではⅠが2チューブ(4%)、Ⅱが20チューブ(36%)、Ⅲが33チューブ(66%)です。
 NEXCO3社が管理する橋梁およびトンネル全体と比較すると、いずれもⅢの占める割合が多くなっています(NEXCO3社のⅢの比率は橋梁11%、トンネル40%)。橋梁では、供用後30年以上経過しているものが半数以上となっていることと、凍結防止剤散布の影響が考えられ、道央自動車道の苫小牧から岩見沢までの間の橋梁の損傷が多くなっています。トンネルは、在来工法のものがほとんどⅢとなっています。
 ――構造物の全般的な劣化状況は
  橋梁では、伸縮装置や橋面排水施設などの水回り部分や水回り部分からの漏水による構造物の損傷が多くなっています。トンネルでは、覆工の目地部における漏水やうき・はく離が多く確認されています。
 ――対策の進捗状況は
  Ⅲ判定となった橋梁およびトンネルの対策を最優先で行っています。また、長期計画を立てて、・排水管や伸縮装置からの漏水により損傷が発生しているコンクリート製橋脚部の断面修復などを行う下部工工事、・第三者被害防止対策として、はく落防止対策を行う上部工補修工事、・鋼橋の塗装劣化やさびが発生している橋梁の塗替え塗装工事を鋭意進めています。


帯広管内での対策事例(左)と札樽道・朝里川橋の下部工補修工事(右)

凍結防止剤散布の影響による塩害が発生
 高性能床版防水工は145橋で実施ずみ

 ――塩害やASRによる劣化は確認されていますでしょうか。劣化が確認されている場合はその状況と対策例をお願いします
  ASRによる劣化については現在、確認されていません。塩害については凍結防止剤散布の影響から水回り部分や水回り部分からの漏水による構造物の損傷が多くなっています。対策としては、影響範囲を塩分調査で特定し、劣化部分をはつり、鉄筋防錆、断面修復、表面被覆またははく落対策を実施しています。塩分含有量が多い場合については、防錆剤(亜硝酸リチウム)を混入させた断面修復材を使用して補修を実施しています。
 ――具体的な事例では
  道央自動車道の月寒川橋では、橋脚で塩害による損傷が確認され、塩分含有量を調査した結果、第1鉄筋の裏側まで塩分が浸透していましたので、コンクリートをそこまではつったうえで、亜硝酸リチウムを混入した断面修復材で補修を行いました。


月寒川橋補修工事

 ――飛来塩分の影響を受ける路線、区間はありませんか
  管内では、沿岸部の路線はありそうでありません。後志自動車にしても海は見えますが、山間部を走る線形となっています。管内路線で海岸線から一番近い箇所でも約200m離れていますので、道路橋示方書での塩害対策区分Sに該当する箇所はありません。
 ――高性能床版防水の施工状況は
  対象橋梁811橋のうち、建設時に施工済みが34橋(4%)、供用後に施工済みが111橋(14%)、未施工が666橋(82%)となっています。
 未施工の橋梁に対しては、詳細調査を行った後に、随時実施していく予定です。ただ、昼夜連続車線規制の確保が困難な橋梁については、グースアスファルトによる床版防水工を検討しています。

耐震補強は4件20橋を計画 すべて準備工事に着手
 塗装塗替 2021年度は道央道の野津幌川橋(約10,600㎡)で完了

 ――耐震補強の進捗状況は
  ロッキング橋脚橋については、全15橋(本線橋6橋、跨道橋9橋)の耐震補強が2021年度に完了しました。RC巻立てによる橋脚補強を基本とし、基礎工の補強が必要な場合には狭小スペースでの施工・補強が可能なマイクロパイルによる補強を実施しています。


ロッキング橋脚の対策事例(北広島IC橋)

 現在、耐震補強工事は4件(20橋)が計画されており、すべて工事契約を行って準備工に着手しています。4工事については2024年度の完了を目指していますし、緊急輸送道路の耐震補強の加速化を踏まえて、耐震補強設計を順次発注して設計完了に合わせて工事発注する計画です。
 ――支承と伸縮装置の取替え実績と予定は
  支承取替の実績はありません。なお、床版取替工事と合わせて腐食などの損傷が発生している鋼製支承をゴム支承などに交換していく計画となっています。
 伸縮装置は、2019年度発注工事で約100m、2020年度同工事で約700m、2021年度同工事で約600mの取替えを行っています。いずれも製品ジョイントを採用しています。
 ――鋼橋の塗替え実績と予定を教えてください
  2020年度には札樽自動車道の伏古高架橋(上下線・P368~P377間、約21,600㎡)、同・創成川西高架橋(下り線・P214~P222間、約12,000㎡)、2021年度には道央自動車道の野津幌川橋(約10,600㎡)の塗替え塗装が完了しました。2022年度に着手済み、または同年度以降に着手予定の橋梁は10橋です。また、札樽自動車道の雁来高架橋(下り線、約18,000㎡)が公告予定となっています。


塗替え塗装事例 野津幌川橋(左:施工前/右:施工後)

 ――PCBや鉛などの有害物を含む既存塗膜の除去は
  現在、PCBが含有されている橋梁は確認されていません。今後、塗替え対象予定となる橋梁では照査を行っていきます。鉛の含有は確認されていますので、施工している橋梁すべてで塗膜剥離剤を用いて既存塗膜の除去を行った後、1種ケレン(ブラスト)で素地調整を行っています。
 ――金属溶射などの重防食の採用は
  塗替え塗装での採用はありません。新設橋では、ランプ橋などの高速道路を横架する橋梁(千歳恵庭JCT-Cランプ橋、小樽JCT-Bランプ橋)で金属溶射を採用しています。
 ――耐候性鋼材を採用している橋梁は
  上下線別でランプ橋も含めて34橋で採用しています。採用箇所は、道央自動車道の深川~旭川鷹栖間、同・虻田洞爺湖~長万部間、道東自動車道の千歳恵庭JCT~夕張間、同・池田~本別・足寄間です。過年度に塗装仕様(C5塗装)へ変更した橋梁が2橋ありますが、伸縮装置部からの漏水を起因とする腐食損傷によるもので、耐候性鋼材でなくとも塗替え対象となったことが想定されます。
 深川~旭川鷹栖間以外は暫定2車線区間で、深川~旭川鷹栖間もトンネルが多いグレートセパレート区間となっているので、撒き上がった塩分の付着による損傷が進むことは少ないと考えています。

帯広管内でのり面対策工事を実施中

 ――防災対策事業では
  大規模更新事業として、「道東自動車道 帯広管内のり面対策工事」を実施中です。トマムIC~本別IC間および本別JCT~足寄IC間の盛土脆弱岩対策として、排水パイプなどを18箇所で施工しています。盛土補強は大規模更新事業を含めて19箇所で完了していますが、点検などで調査を継続していますので、今後必要な箇所が出てくれば外注工事として発注する可能性もあります。


帯広管内のり面対策工事

 排水対策については、小断面排水溝の取替えや排水構造物の合流部の改良などをネクスコ・メンテナンス北海道がのり面の清掃や植栽と合わせて実施していて、10箇所の施工が完了しています。


防水対策 コンクリートキャンバスの敷設

 自然斜面の土砂流入対策は2箇所のみが対策箇所となっており、いずれも高エネルギー吸収型落石防止柵の設置が完了しました。

高強度繊維補強コンクリートで床版上面補修
 排水管でステンレス製の採用を検討

 ――新技術・新材料などの採用がありましたら
  道央自動車道の月寒川橋(上り線)のコンクリート床版上面の補修では、高強度繊維補強コンクリートを用いて約300㎡を施工しました。


月寒川橋(上り線)での床版上面補修

 橋梁付属物では、後志自動車道や4車線化事業で高耐久材料を採用しています。検査路は亜鉛メッキ製からアルミ製やFRP製に変更し、排水管は鋼管(亜鉛メッキ)から高密度ポリエチレン管に変更しています。ただ、高密度ポリエチレン管は重量があり、建設時はクレーンでの設置が可能ですが、取替えが困難になりますので、軽量で耐久性の高いステンレス製排水管の採用を検討中です。


後志自動車道で採用されたアルミ製検査路と高密度ポリエチレン管

 壁高欄コンクリートについては、高炉セメントを水セメント比30%程度の富配合で使用することで初期強度を確保しながら、塩害対策を実施しています。これは後志自動車道の建設で導入後、4車線化事業でも導入しています。
 ネクスコ・メンテナンス北海道が開発した製品では、高耐久性とローコストを実現した吹流し(MPRO®吹流し)や、ワイヤロープの事故復旧工事時にワイヤロープを5本まとめて、かつ短時間で固定できるワイヤロープストッパー(MPRO®ストッパー)などがあります。


MPRO®吹流し

MPRO®ストッパーの使用状況と設置作業状況

 ネクスコ・エンジニアリング北海道では、当社が進めるSMH(スマートメンテナンスハイウェイ)の一環として、MR技術で構造物の内部を可視化できる「PRETES®-e(プレテス イー)」を開発し、教育、研修用として活用しています。


PRETES®-eの概要(ネクスコ・エンジニアリング北海道HPより)
 ――ありがとうございました
(聞き手:大柴功治)

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