6路線約720kmを管理、橋梁は811橋、トンネルは63チューブ
NEXCO東日本北海道支社 札幌市内の連続高架区間のリニューアル工事に着手
東日本高速道路株式会社
北海道支社
道路事業部長
林 正幸 氏
札幌市内連続高架区間橋梁リニューアル事業 上部工拡幅で片側2車線を確保
国道247号との上下構造、住宅密集地という厳しい現場条件
――札幌市内連続高架区間橋梁リニューアル事業は都市部での施工になりますが
林 支社としても非常に大きく、難しい工事になります。札幌南IC~札幌JCT~札幌西IC間の延長21.4kmが連続高架区間となっており、そのうちの道央自動車道 札幌南IC~札幌JCT間(延長約7.4km)の床版取替工事とそれにともなう上部工拡幅などを行う工事です。
札幌市内連続高架区間橋梁リニューアル事業の概要
同区間は高速道路と国道274号(札幌新道)の上下構造で、交通量は道央自動車道で約42,400台/日(2017年日平均、北郷IC~札幌JCT間)、国道274号で約54,000台/日と重交通路線になっています。そのため、施工時の渋滞発生を防ぐためには日中は現況の片側2車線を確保することが大命題です。しかし、現況の橋梁幅員では車線・路肩ともに縮小幅員(1車線3.25m×3車線+路肩0.75m×2)を採用しても、床版取替工で分割施工を行える上下線合計3車線を確保することは困難です。
そこで、上下線間の中央分離帯に1.5mの開口部があることから、その空間を活用して上部工拡幅を行って車線を確保し、ロードジッパーシステムによって時間帯に応じて作業帯を確保して工事車線規制による渋滞の抑制を図ることにしました。
日中(6時~20時)は小樽方面、千歳方面の両方向とも2車線を確保し、夜間(20時~6時)は小樽方面または千歳方面において最低1車線を確保します。
本事業が大規模かつ難しくなっている理由のひとつが、上部工拡幅です。拡幅のために、基礎を含めた既設下部工の拡幅や補強、さらに下部工の新設を行わなければならないからです。ただ、重交通路線である国道247号との上下構造のうえに、住宅などが密集していることから、ヤードの確保を含めて厳しい現場条件となります。
施工概要
上下線間の中央分離帯の開口部
――既設の下部工をそのまま使用できるところはありますか
林 使用することも考えていますが、そのまま使用できる箇所は少なく、いずれかの形で補強しないと厳しい箇所が多くなっています。これも設計のなかで検討していきます。
――どのように施工していきますか
林 国道脇から施工箇所に入れる場所をたくさん造って、その隙間で工事を進めていくしかありません。ヤードが限られているため、人手をかければ早く施工できるというわけでもありません。対象となる下部工の数も多いことから、施工者も苦労しています。
――具体的な数は
林 本事業は3つの工事に分けて発注しています。発注順に、大谷地地区橋梁リニューアル工事、米里地区橋梁リニューアル工事、北郷地区橋梁リニューアル工事です。
大谷地地区では橋脚約130基、米里地区では同約85基、北郷地区では同約100基となります。
ECI方式で発注 大谷地地区と米里地区は実施設計に着手
――各工事の進捗状況は
林 3工事とも発注にあたってはECI方式を導入しました。大谷地地区は、大林組・鴻池組・中山組・JFEエンジニアリングJVが優先交渉権者となり、2020年10月に実施設計の契約を行って、設計中です。2021年10月には通信管路等の移設や施工ヤード整備等を行う準備工事を契約しています。
米里地区は、優先交渉権者の鹿島建設・岩田地崎建設・富士ピー・エス・横河ブリッジJVと2021年12月に実施設計の契約を行い、設計に着手しました。北郷地区は、契約手続き中です。
――大谷地地区の対象となる橋梁と床版取替面積は
林 札幌南IC~大谷地IC間に位置する橋長約1,950mの大谷地高架橋(鋼鈑桁・中空床版・PC合成桁)と同約450mの厚別高架橋(鋼鈑桁・中空床版・鋼箱桁)となります。床版取替面積は、約6,000㎡です。
大谷地地区の工事概要と連続高架橋
――米里地区は
林 北郷IC~札幌JCT間の米里高架橋(橋長約500m、鋼非合成鈑桁・鋼合成鈑桁・PC2主鈑桁)と北郷高架橋(同約1,200m、PC2主鈑桁・PC箱桁・PC中空床版)で、面積は約10,000㎡です。
米里地区の工事概要と連続高架橋
――北郷地区は
林 大谷地IC~北郷IC間の白石跨線橋(橋長約320m、鋼箱桁、鋼鈑桁)と白石高架橋(橋長約1480m、RC中空床版、鋼箱桁、PC2主版桁、PC箱桁)、北郷高架橋(橋長約150m、鋼鈑桁)で、約7,000㎡となります。
北郷地区の工事概要と連続高架橋
――床版取替工はどのように行いますか
林 上部工拡幅が完了後、追越車線、第2走行車線、第1走行車線の順に車線を切替えながら施工していきますが、具体的な施工方法は検討中です。
米里地区はJCT部、北郷地区はIC部を含んでいますので、そこをどのように施工していくかも課題となっています。
床版取替工事 2021年度は4件契約、すべて契約継続方式を採用
2022年度からはトンネルのリニューアルプロジェクトにも着手
――他の高速道路リニューアル事業の進捗状況と今後の予定を教えてください
林 床版取替工事は2020年度までに7橋(上下線別)が完了、2020年度および2021年度春には夕張川橋(下り線)で工事を実施して、合計8橋(上下線別)が完了しました。
千歳川大橋床版取替工事
夕張川橋(下り線)床版取替工事
管内は、先の札幌市内連続高架区間を除けば対面通行規制で施工できる交通量となっていますので、原則、交通混雑期と雪氷対策期間を避けた春と秋に対面通行規制を実施して施工しています。工程的に難しければ、ロードジッパーを採用して時間帯により車線数を変える対応を行っています。
2021年度には4件の床版取替工事の契約手続きを行い、2022年度から順次着手していきます。いずれも、継続契約方式を採用しており、当初発注工事におけるノウハウを後発工事に活用することによる安全面や品質面の向上や、調達手続きの効率化による受発注者双方の負担軽減や入札不調リスクの軽減を期待しています。
2022年度からは在来工法で掘削したトンネルに対して、覆工背面空洞注入や断面修復、はく落防止対策、漏水防止板設置などの補修工事に着手していきます。インバートの設置については、現時点で路盤の隆起が発生していないことから、経過観察中となっています。
夕張川橋(上り線)床版取替工事では支社初となる半断面施工を実施
――床版取替工事4件の具体的な橋梁と施工予定は
林 札樽自動車道神威橋床版取替工事では、朝里IC~銭函IC間の神威橋(上り線)と石倉橋(上り線)の工事を実施し、2022年度秋から施工予定です。
道央自動車道夕張川橋(上り線)床版取替工事は、江別東IC~岩見沢IC間の同橋で2022年度春と秋に実施予定となっています。春施工は全断面施工ですが、秋施工は半断面施工となります。シルバーウィークや3連休時に交通量が多くなることから渋滞発生を抑制するためで、ロードジッパーを使用して午前中は下り線2車線、午後は上り線2車線を確保します。約60日(土日除く)の工事期間のうち、最初の30日で追越車線を施工して、切替え後、走行車線を施工する計画です。
夕張川橋(上り線)床版取替工事 施工状況
道央自動車道ママチ川橋床版取替工事は、新千歳空港IC~千歳IC間のママチ川(上下線)が対象で、2023年度春施工予定です。
道央自動車道社台川橋床版取替工事は、白老IC~苫小牧西IC間の社台橋(上下線)、社台川橋(上下線)、別々橋(上下線)、ポン樽前川橋(上り線)、樽前川橋(上下線)、覚生川橋(上下線)の6橋11連が対象で、2023年度春施工から着手していく予定です。
床版取替工事予定一覧表
――夕張川橋(上り線)での半断面施工は管内では初めてですか。また、施工範囲は
林 初めてとなります。発注時点ではP6~P8間の約100mで計画していましたが、実施工ではP1付近の場所打ち床版部のみとなる見込みです。
札樽道の張碓トンネルでは背面空洞注入などを実施
――トンネルの大規模更新事業に今年度から着手するとのことですが、対象トンネルは
林 札樽自動車道の張碓トンネル(上り線/610m)で2022年度秋の施工を予定しています。また、道央自動車道のポロトトンネル(上り線/508m、下り線/521m)、白老トンネル(上り線/458m、下り線/453m)、虎杖浜トンネル(上り線/392m、下り線/419m)が、ポロトトンネル補修工事として2023年度春の施工予定、札樽自動車道の朝里トンネル(上り線755m、下り線749m)が公告予定です。
――各トンネルの定期結果と損傷状況は
林 いずれも判定区分Ⅲとなっています。損傷は、目地部におけるひび割れ、はく離、漏水に加え、張碓トンネルと朝里トンネルでは背面空洞が確認されています。
ポロトトンネル(上り線)(左)と張碓トンネル(上り線)(左)の損傷状況
――対策内容を教えてください
林 張碓トンネルでは、約6,500m3の背面空洞注入と断面修復工を行います。ポロトトンネル補修工事では、断面修復工、はく落防止対策工、漏水防止板設置工を実施します。朝里トンネルは、約4,500m3の背面空洞注入と断面修復工となります。
なお、張碓トンネルは神威橋床版取替工事の対面通行規制時、ポロトトンネル補修工事は社台川橋床版取替工事の対面通行規制時に合わせて施工します。