国土交通省の新道路局長に村山一弥氏が就任した。構造物の老朽化やDXの推進、激甚化する災害などに対してどのように取り組んでいくのか、国土交通省建設専門紙記者会が合同で行った新局長インタビューのうち、道路構造物に関わる部分を中心に内容を抜粋した。
――就任の抱負は
村山道路局長 道路は地域の発展や生活などにおいて基本的な役割を果たしている重要なインフラです。その整備と管理を確実に行い、次世代の国民の皆様に引き継げるようにしていきます。
――高規格道路ネットワークの今後の整備方針は
村山 ここ数十年で日本の各地域の産業立地構造や都市の発展形態が変わり、新たな高規格道路の整備要請が全国から届いています。そこで見直しを図るために、各都道府県に「新広域道路交通ビジョン・計画」を策定してもらい、各地方整備局が取りまとめをして、6~7月に公表をしています。今後は、中期的な目標にそって高規格道路ネットワークの整備と管理をしていきます。すぐにはできませんが、みんなで立てた計画を着実に推進していきいと考えています。
――道路構造物の老朽化についてどのような認識をお持ちでしょうか
村山 定期点検が2巡目に入っています。点検をして補修を確実に行っていくことが必要ですが、補修が追い付いていません。補修すべき構造物のストックを減らしていくことが重要です。
例えば、地方自治体管理の補修未着手橋梁は約4万橋あり、要対策橋梁が毎年約5,000橋増えています。年間7,000橋のペースで補修をしていますが、これでは実質2,000橋しか減りませんので、約4万橋の補修が完了するには約20年かかってしまいます。要対策橋梁のストックを減らしていくためには、予算の確保が極めて重要となりますので地方自治体や財政当局と一緒に取り組んでいきたいと考えています。
地方自治体の橋梁管理状況(例:岩手県、当サイト既掲載)
――DXの推進について。国土交通省では「xROAD(クロスロード)」の構築に取り組まれていますが、その意義は
村山 道路施設関係のDB(データベース)構想は単発ではあったと思いますが、「xROAD」は定期点検結果などのさまざまなデータを共通のプラットフォームに入れて、ユーザーが必要なデータを引き出せるようなAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を開発することが主な目的です。点検データや損傷・施工の類似事例にアクセスできれば、設計・施工の省力化に役立ちますし、データが蓄積されれば効率化につながります。継続的に開発を進めて、使えるDBにしていくことが必要と考えています。
――点検における新技術の導入について
村山 技術者が減少していくなかでは点検の効率化が求められます。その意味では、画像分析などの点検技術の開発は進んできていますので、積極的に導入する考えです。ただ、安全性を向上するために行っている点検なので、見落としは許されません。一次スクリーニングで足りる技術であればいいですが、これまでになかった技術を活用するわけですから、適応できる分野は考慮する必要があります。
――災害に強い道路に対する考えは
村山 災害対応の要求水準は東日本大震災以降、上がってきています。現在、求められているのは、災害発生時に通行止めの時間をいかに少なくするかとともに、被災地域を早期復旧して経済的ダメージをできるだけ少なくすることです。そのため、橋梁の耐震補強の考え方も変わってきていて、高速道路や緊急輸送道路は一段高い防災レベルの対策をすることになっています。しかし、まだ対策が完了していない箇所が相当数あります。
令和2年7月豪雨では球磨川流域などで甚大な被害が発生した。上部工の半分以上が流失した球磨川第一橋梁(井手迫瑞樹撮影)
西瀬橋では、流水部の1径間(トラス桁橋)が流失(井手迫瑞樹撮影)
今夏に九州北部を襲った水害被災状況① 六角川上流の被災状況(井手迫瑞樹撮影、協力:特殊高所技術 山本正和専務、いずれも2021年8月末撮影)
同②(左)佐賀県山岳部の県道の山崩れ 2年前に被災した個所が閉鎖されたまま今夏の水害で被害が拡大した
(右)雲仙温泉付近国道57号付近の土砂崩れ。車線が一部規制されていた(撮影、協力は同上)
同③ 佐賀・福岡県境付近 佐賀県三養基郡みやき町の山水グリーンフィールド付近の被災状況。道路が川になっており、上流(左)は川が半ばせき止められていた。(撮影、協力は同上)
「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に引き続き、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を実施していますので、効果は相当程度現われていると思います。引き続き貴重な予算の枠がありますので、それを活用して災害に強いインフラ整備を行っていく必要があります。
――ありがとうございました
(構成=大柴功治)