2021年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑧JFEエンジニアリング
海外はアフリカ案件が出件見込み リモートワークを恒久制度化
JFEエンジニアリング株式会社
取締役専務執行役員 社会インフラ本部長
川畑 篤敬 氏
当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。5回目は、JFEエンジニアリングの川畑篤敬取締役専務執行役員と、IHIインフラシステムの石原進社長の記事を掲載する。
――業界の取り巻く需要環境・業界の動向は
川畑 20年度の国内新設鋼橋の発注量は18万tとなり、一昨年度と比べて回復した。今年度は20万tを見込んでいる。
保全事業は増加傾向にある。日本橋梁建設協会の調査によると、受注金額ベースでは保全事業が4割強まで占めるようになってきた。この傾向は続くとみており、今年度も20年度に対して、発注量は増加すると予測している。
ただ、新設橋梁がないと工場稼働率を維持することが難しい。当社でも津製作所の操業を維持するため、インドのムンバイ向け海外橋梁をはじめ、セグメント、海洋構造物、コンテナクレーンなどを製作している。
――今期の状況は
川畑 今年度の目標は、受注高約790億円で橋梁約630億円、その他約160億円。売上高は約790億円で橋梁約660億円、その他約130億円。上半期では、R3圏央道館野高架橋上部その1工事(関東地方整備局)、東海環状自動車道大野神戸IC橋他4橋(鋼上部)工事(中日本高速道路)、東名高速道路大井川橋他1橋床版取替工事(同)などを受注した。
――海外事業については
川畑 海外ではコロナの影響により、インド、スリランカ、バングラデシュなどの工事で、進捗に影響があった。入札時期や開札後の契約交渉の延期などにより、20年度の受注は苦戦を強いられた。
ミャンマーのJ&Mスチールソリューションズでは、政変直後にコロナの影響も重なり、一時的に操業を休止した。同社では国内向けのみならず、インドなどの海外向け橋梁も製作しており、納期に間に合わせるべく、操業を続けている。情勢を引き続き注視していくが、今後も操業を維持していく方針だ。一方で政変の影響による物流網の寸断、材料価格高騰や為替差損で、損益面は大変厳しい状況になっている。
今年度は、昨年の入札および入札後の契約交渉に遅れが生じた案件が出件されるとみている。さらに、ODAの出件は継続され、特にアフリカ案件他で増加し、200億円超の発注量と予測している。
今後も事業軸の一つとして、積極的に展開していく方針は変わりない。
完成した名古屋西JCT
気仙沼湾横断橋
――DXの推進については
川畑 5月にJFEグループで発表した中期経営計画でも重点テーマに掲げ、全社的に取り組んでいる。BIM・CIMはDX実現には不可欠で、国土交通省は23年度までに小規模工事以外でBIM・CIMの適用を目指している。そのため、3年前から適用を開始、すでに30現場以上に導入し、昨年度からは原則全工事で採り入れている。とくに難工事での施工上のリスク除去、意思決定の迅速化などに効果が期待できる。
その他では、ドローンと画像認識AIを用いた床版配筋の出来形確認、計測ロボットを用いた壁高欄の出来形計測とひび割れ点検、墨出しロボットによる自動化などを推進し、現場作業の効率化・精度向上に活用していく予定だ。国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に採択され、実橋での試験を通じて技術の精度・有用性を高めている。
また、現場で最新鋭のツールを利用して管理する作業は、スマホやモバイルなどを使い慣れている若い人たちへのアピールにもつながり、担い手確保への一助にもなりうると考えている。
――その他には
川畑 現在、コロナ禍での取り組みとして、昨年試験運用していたリモートワークを4月から恒久的に制度化して運用を開始した。緊急事態宣言・まん延防止等重点対策適用自治体に所在する拠点は行政の要請に応じて、出社率30%以下を目標に調整している。今後もより働きやすい環境の整備とともに生産性を向上させる改革を進めていく。
(聞き手=佐藤岳彦 文中敬称略)