2021年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑥横河ブリッジ
国内新設道路橋は20万tを期待 現場作業改善にDXを推進
株式会社横河ブリッジ
代表取締役社長
髙田 和彦 氏
当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。4回目は、横河ブリッジの髙田和彦社長の記事を掲載する。
――業界を取り巻く環境については
髙田 20年度の国内鋼道路橋の発注量は約18万tとなった。13万tという衝撃的な数字だった19年度を除けばここ数年間は20万t前後で推移している。
昨年末に閣議決定された「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」では25年度までに総額15兆円規模で施策を進め、国土交通省では道路ネットワークの機能強化などの施策に重点的に取り組んでいくとしている。また、大阪湾岸道路西伸部の本格的な発注など、当面は安定的な状況が続くと見込んでいることから、今年度は20万tを期待している。さらに3~4年はこの状況が続くことを期待している。
ただ、新設橋梁の発注は将来的に減少傾向にあることから、保全事業の重要性が増している。これからは新設と保全の2本柱と捉えて進めていく。
ただ、1案件あたりの規模が大きくなっており、失注時の売上げへの影響は大きくなる傾向にある。
――昨年度の業績は
髙田 昨年度は、売上高742億円、営業利益113億円、経常利益113億円となった。売上高、営業利益、経常利益ともに前年度を上回り、数字としては満足している。
――21年度の見通しは
髙田 今年度は売上高790億円、受注高は740億円、重量ベースでは3万2,000tをめざす。第1四半期終了時点では、圏央道の4車線化工事などを受注し、ほぼ目標通りに推移している。
――設備投資については
髙田 20年から進めてきた大阪工場内のブラスト工場のリニューアルが完了する見込み。これにより、大阪工場全体の設備リニューアルがほぼ終了する。
――DXへの取り組みは
髙田 現在のDXはより広範囲なものとなっており、働き方改革や人材育成においてもキーワードにもなると考えている。
まずは、DXを活用することにより、現場の作業環境を改善していきたい。例えば、原寸から3Dデータ化してMR技術により、仮組みから架設時までを再現でき、干渉確認の効率化や安全性向上を実現している。
また、現場や工場作業員の安全面向上を図るために、現場の見える化として「見守りカメラ」を主要な現場や工場に設置、常に作業状況を確認することができるようにしている。店社がリアルタイムに確認できる体制を構築している。
仙台東部道路 阿武隈大橋(NEXCO東日本)
――海外事業については
髙田 海外事業についてはコロナ禍の影響を大きく受けている。現時点では、アフリカの南スーダンやタンザニア、東南アジアのミャンマー、バングラデシュなどで5件の案件を施工しているが、ミャンマーの2件が休止中となっている。ミャンマーの現地事務所に至ってはコロナ禍と政情不安のため、日本人駐在員全員を帰国させている。
海外事業は、国内橋梁事業に次ぐ重要な事業軸として捉えている。今後も有望な市場であることには変わりないことから注力していく。ただ、今年度の売上げとしては、計上できないのが実状だ。
コロナ後を見据えて営業活動は続けているが、収束が見えてこない状況では、リスクヘッジの観点から静観するしかなく、先行きは不透明だ。
――働き方改革については
髙田 働き方改革については、作成したロードマップ通りにおおむね進展している。現場作業は4週6休がほぼ実現、4週8休についても着実に進展している。テレワークは、働き方改革にもつながる上に、女性や子育て世代、介護などに携わる人たちにも有用なツールで、ニューノーマルな時代にも呼応する。今後も継続していく予定だ。
――このほかには
髙田 カーボンニュートラルやSDGsについては、横河ブリッジホールディングス全体で検討する内容と捉えており、現時点では社内ワーキングを作って検討を進めている。
(聞き手=佐藤岳彦、文中敬称略)