橋梁1,225橋、トンネル126箇所を管理
供用後50年以上経過する橋梁は全体の43%
――管理橋梁と内訳からお願いします
奥山 横断歩道橋や人道橋を除く一般橋では2020年度末現在、1,225橋を管理しており、総延長では80,138kmとなります。橋種別では鋼橋が最も多く41%で、PC橋25%、RC橋11%、その他(鋼とコンクリート併用橋)23%です。
東京都と管理する橋梁概要と橋種別割合
建設年次では、主に関東大震災の復興期と前回の東京オリンピックを契機とした高度経済成長期のふたつのピークがあり、特に後者の占める割合が大きくなっています。高度経済成長期(1973年)以前に建設された橋梁の多くは、供用期間がすでに50年を超えています。
供用25年以上の橋梁は全橋梁の約8割にあたる1,000橋以上となっており、供用年数が50年を超えるいわゆる「高齢化橋梁」の割合は2020年時点では43%(520橋)に達しています。これが10年後には半数を超え、20年後には77%が高齢化橋梁となります。
今後、それらの橋梁が一斉に更新時期を迎えますので、東京都では橋梁予防保全計画を2021年3月に策定して、更新時期の平準化と総事業費の縮減という大きなふたつの目的から、予防保全型管理への転換を図っています。
管理橋梁の建設年次分布
高齢化橋梁の割合
延長別では、15m以下の橋梁が510橋で42%を占め、100m以上は218橋(18%)です。
――トンネルについては
奥山 126箇所を管理していて、工法別では在来工法42箇所(33%)、NATM工法27箇所(21%)、開削工法57箇所(45%)となっています。
地域別・工法別トンネル箇所数
供用年次では、最も古いトンネルは1930年代に供用され、80年以上が経過しています。供用開始から50年以上経過する1960年代以前のトンネルは33箇所で、全体の約25%を占め、これが30年後には約75%となります。このことから、トンネルにおいても2015年11月に第一次トンネル予防保全計画を策定して予防保全的に対策を実施することにしました。さらに、2021年3月に計画を改定して第二次トンネル予防保全計画を策定しています。
管理トンネルの設置年代分布
延長別では、100m未満が36箇所(29%)、100m以上1,000m未満が83箇所(66%)、1,000m以上が7箇所(6%)です。
全国に先駆けて1987年度から5年に一度の定期点検を実施
第9次定期点検でのⅢ判定橋梁は7%で、2020度末までに47%が措置済み
――橋梁の定期点検結果について教えてください
奥山 東京都では1987年度から全国に先駆けて全橋梁対象に5年に一度の定期点検を開始しています。2017年度から2019年度に実施した第9次定期点検結果は、全国の道理管理者とほぼ同じような傾向で、判定区分Ⅲが全体の7%を占め、Ⅱが52%、Ⅰが41%で、Ⅳはありませんでした。
第9次定期点検結果
――3年間で全橋梁の点検を行うのですか。また、実施橋梁数は
奥山 そうです。次の2年間は歩道橋の点検を行いますので、5年に1度点検を行うという意味では変わりはありません。
実施橋梁数は1,210橋で、道路拡幅や河川改修などにともない架替えや改修などで定期点検が実施できない橋梁以外はすべて点検を行っています。
――判定区分Ⅲとなった橋梁の対策の進捗状況は
奥山 87橋のうち、2020年度末までに41橋が措置済みとなっており、措置率は47%です。
――トンネルについては
奥山 全管理トンネル126箇所を対象に2017年度と2018年度に実施した定期点検結果は、判定区分Ⅰが7箇所(5%)、Ⅱが79箇所(63%)、Ⅲが40箇所(32%)となっています(Ⅳはなし)。
工法別では、山岳トンネル(在来工法)でⅢの割合が55%と高くなっており、開削トンネルで26%、山岳トンネル(NATM)で7%となっています。
2021年3月には「第二次トンネル予防保全計画」を策定して予防保全型管理のさらなる推進を図っています。2015年策定の一次計画では26箇所が対象となっていましたが、8箇所で対策が完了しています。未完了の18箇所と、一次計画の対象トンネル以外で判定区分Ⅲとなった26箇所については、今後10年間で対策を完了する予定です。
――点検を進めてみての構造物の劣化および変状状況について教えてください
奥山 橋梁では、雨水の影響を受けやすい桁端部や外桁部が、桁の中央部や内桁より損傷割合が高いことが確認されています。代表的な損傷事例では、運河部や感潮河川の鋼部材の腐食、伸縮装置などから流入した雨水による鋼製支承や鋼桁端部の腐食が目立っています。最近では、大型車両の繰り返し載荷や雨水によるRC床版上面の土砂化、同じく輪荷重による鋼床版の疲労亀裂などが確認されています。また、山間部では凍結防止剤を散布しますので、塩害が発生しているケースもあります。
橋梁の損傷事例
トンネルは、覆工コンクリートのうき、コンクリートのひび割れや横断目地部からの漏水などの変状が確認されています。
トンネルの損傷事例
トンネル 2017年度・2018年度定期点検で点群データを取得
21箇所で背面空洞が確認され、7箇所の対策が完了
――トンネルでの具体的な対策事例は
奥山 奥多摩町原の大麦代トンネル(延長538m)では、覆工にうき・剥離、ひび割れなどの損傷が発生するとともに、覆工厚不足と背面空洞が確認されました。そこで、断面修復とひび割れ注入、断面補強、背面注入などを実施しています。
大麦代トンネルでの背面空洞注入工
――地山の影響による変状は発生していますか
奥山 進行性のひび割れについては、現時点では把握していません。2017年度と2018年度の定期点検で点群データを取得していますので、そのデータを次回の定期点検データと比較して変状を把握していきます。
――背面空洞への対策状況は
奥山 一次計画で、全山岳トンネルを対象にレーダー探査による覆工厚および背面空洞についての調査を実施しました。背面空洞が確認されたトンネルは21箇所で、2020年度末時点で7箇所の対策が完了しています。残るトンネルについても、2024年度末までの着手を目指しています。
著名橋や長大橋など212橋は「長寿命化事業」として100年以上の延命化を図る
それ以外の橋梁は定期点検に基づき補修を実施
――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況について
奥山 長寿命化修繕計画に位置付けられる計画としては、東京都では2009年度に策定した「橋梁の管理に関する中長期計画」があります。この計画をもとに、予防保全型管理を進めてきましたが、2021年3月に計画の見直しを行い、全管理橋梁を対象に「橋梁予防保全計画」を策定しました。
事業計画としては、「長寿命化事業」(グループA)と「定期点検に基づく補修事業」(グループB)の2本立てになっています。
グループAは、歴史的な橋梁である著名橋、架替え時に多額の費用と周辺への多大な影響が予測される長大橋、跨線・跨道橋、主要幹線道路に架かる橋梁など、212橋を対象としています。適切な維持管理を行いながら、建設時より性能を向上させて延命化を図り100年以上使い続けることを目指すことを目的としており、このような考え方は全国でも唯一であると考えています。
本事業は2009年度から着手していて、2020年度末時点の着手橋梁数は121橋で、49橋で対策が完了しています。2021~2030年度の10カ年では59橋(累計180橋)、そのうち2021~2023年度の3カ年で19橋(累計140橋)の着手をする計画です。
グループBは、グループAに含まれない橋梁が対象で、定期点検結果をもとに「判定区分Ⅲ」および「判定区分Ⅱのうち対策が必要」と判定された橋梁を対象に、点検後5年以内に措置をすることを目標としています。
第9次定期点検では対象橋梁が137橋あり、2020年度末時点で41橋が措置もしくは着手済みとなっています。残る96橋についても順次着手していきます。
橋梁の維持管理方針
第9次定期点検における措置の進捗状況(2021年3月現在)
長寿命化事業対象橋梁一覧。左表は、2021年度から2023年度までの間に着手を予定している橋梁(19橋)。右表は、2024年度から2030年度までの間に着手を予定している橋梁(40橋)
――判定区分Ⅱの一部も対象橋梁としていますが、具体的には
奥山 特に水回りの損傷は軽微な損傷(判定区分Ⅱ)であっても放置しておくと、比較的早期に重大な損傷に進展する可能性があるため、対象としています。