等々力大橋(仮称) 鋼4径間連続合成箱桁橋(ケーブル補剛)を採用
2025年度の完成を目指して下部工事着手へ
――その他、橋梁の新設事業や架替え事業がありましたら教えてください
奥山 東京都と川崎市を結ぶ、多摩川に架かる橋長約390mの等々力大橋(仮称)の新設事業を進めています。事業主体は東京都と川崎市で、施工は東京都が行います(管理は川崎市が行う予定)。また、都道八王子国立線の多摩川を渡河する日野橋で架替え事業を行っています。
――等々力大橋(仮称)の上部工および基礎形式は
奥山 鋼4径間連続合成箱桁橋(ケーブル補剛)で、基礎は橋台が場所打ち杭、橋脚がニューマチックケーソン形式を採用しています。
等々力大橋(仮称)側面図
完成イメージ図
――上部工形式の選定理由は。また、構造上の特徴がありましたら
奥山 国分寺崖線(多摩川が10万年以上かけて武蔵野台地を削り取ってできたもので、豊かな自然環境が残る)という景観上に建設される条件から、その景観を損なわないよう(具体的には崖線の景観ラインを維持できるように)主塔高さを抑制する必要があり、河積阻害を最小限とするため、橋脚数を減らす必要がありました。そのため、斜張橋ではなく、橋脚と支承を介して分離する形式にする一方、吊形式かつ桁と主塔を剛結構造にすることで、主塔高(約17m)および桁高(2.9m程度)を抑制し、橋脚の数および規模のスリム化を図っています。
――工事の進捗状況は
奥山 2018年度に川崎市側の右岸低水護岸工事から着手し、2019年6月に完成しました。多摩川左岸にあたる世田谷区側では2019年度から2020年度にかけて、架橋位置の上流に搬入路を設置しています。下部工では、橋脚1基(P3)および橋台1基(A2)が契約となり、現在工事着手に向けて準備を進めています。
右岸低水護岸工事/搬入路設置工事
――完成予定は
奥山 2025年度を目標にしています。
日野橋架替えにともなう仮橋ではトラス形式を採用
新橋は鋼3径間連続合成斜張橋を予定
――日野橋の架替え理由を教えてください
奥山 日野橋は、多摩地域の南北を結ぶ第一次緊急輸送道路となっています。現橋は1926(大正15)年の完成から90年以上が経過し、老朽化や河床低下にともなう洗掘が進行していました。また、2019年10月の令和元年東日本台風(台風19号)の洪水により、橋脚1基が沈下して路面に大きな段差が生じたため、約7カ月間の通行止めが発生しました。応急復旧は完了しましたが、近年の大雨発生状況を考えると老朽化が進行している現橋を架替え、長期的な安全性を確保していくことが不可欠であるとの判断に至りました。
日野橋
令和元年東日本台風の洪水によりP5橋脚が沈下し、路面に大きな段差が発生
――現橋の橋長と形式は
奥山 橋長367m、有効幅員10.9mの鋼単純鈑桁橋(20連)です。なお、応急復旧ではP5橋脚を撤去し、P4~P6間を単純鋼床版鈑桁としています。
――応急復旧工事について詳しくお願いします
奥山 沈下したP5橋脚の撤去と、その橋脚を挟んだ両側上部工2径間分(P4~P6、径間長約36m)を撤去して、新たに製作した鋼桁を架設しました。
P5橋脚は河床以深にある基礎部分を残置し、柱部のみを撤去することで施工期間の短縮を図りました。上部工については、RC床版から鋼床版に変更して軽量化を図っています。
応急復旧工事での損傷した橋脚と桁の撤去
新設桁の架設
――架替えはどのように行いますか。また、進捗状況は
奥山 現橋の約30m上流側に迂回路となる仮橋を設置し、交通を切替えた後、現橋撤去工事、新橋架設工事を進めていきます。仮橋への交通切替えまでに約3年、現橋を撤去し新橋完成までに約7年、仮橋の撤去に約2年を予定しています。
進捗状況は、2020年11月から仮橋設置工事に着手し、現在は日野市側の1径間の架設、橋台1基と橋脚3基の構築が完了しました。非出水期の工事となりますので、秋以降に工事を再開します。また、仮橋の設置と並行して新橋の詳細設計を実施します。
――仮橋の形式は
奥山 橋長は約333m、有効幅員は12mで、7径間のトラス形式を採用しています。
――採用理由は
奥山 河積阻害を極力減らすためです。現橋は橋脚が18基ありますが、仮橋では6基に抑えることができました。また、トラス形式は組立てが容易なため、工期の短縮も図れます。
仮橋の概要図
仮橋の基礎杭打設/現在は1径間の架設が完了した状態
――新橋の形式はどのようになりますか。また、その形式を採用した理由は
奥山 橋長332m、有効幅員16mの鋼3径間連続合成斜張橋となる見込みです。地域のシンボルとなる景観を生む橋梁とすること、長支間化により河積阻害を減らすことなどから斜張橋としました。
完成イメージ図
――上部工断面は決まっていますか
奥山 詳細設計で決定します。