断面修復と併せて導水工を設置
トンネル 判定区分Ⅲが4割弱に達する
――トンネルの損傷については
小田原 覆工コンクリートの変状傾向として、在来工法においては、うき・剥離や漏水といったものが多くなっています。これは在来工法においては防水シートがなく、地山からの漏水が作用したことにより生じたものと思われます。対策としては断面修復と併せて導水工を設置するのが主な対策となります。
2014~19年度に行った定期点検結果では対象191箇所のうち、判定区分Ⅲが72箇所と4割弱に達していました。さらに同Ⅱは118箇所と6割強を占め、同Ⅰは1箇所となっております。
耐震補強 早期に対応が必要な橋梁の9割が実施済み
今後は主に日本海側の26%未満の地域を計画的に行っていく
――耐震補強の進捗状況は
小田原 今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以上の地域の橋梁を重点的に対策中で、2020年度末で約9割が対策済みとなっています。今後は主に日本海側の26%未満の地域を計画的に行っていく予定です。
――対象橋梁数と対策済み橋梁数は。また、26%未満での対象橋梁数と完了数は。今年度の施工予定橋梁数は
小田原 緊急輸送道路に指定されていて橋長が15m以上を有する橋のうち、26%以上の地域の対象橋梁数は323橋で、そのうち311橋については、耐震性能2を確保しています。
また、26%未満の地域の対象橋梁数は1,475橋で、そのうち1,337橋については耐震性能2を確保しています。今年度は26%以上の未対策橋梁4橋を施工予定です。
橋梁・トンネル
一巡目点検Ⅲ判定 半分以上の補修が完了
――1巡目点検結果に基づいた対策の進捗状況は
小田原 Ⅳ判定1橋は対策済みです。Ⅲ判定495橋のうち、着手済みが426橋、措置完了が253橋です。
――2巡目点検の初年度では、Ⅰ判定287橋、Ⅱ判定507橋、Ⅲ判定83橋となっていますが、ⅠからⅡやⅡからⅢに遷移している橋梁はありますか
小田原 1巡目点検(2014年度)において判定Ⅰ・Ⅱに診断された橋梁のうち、修繕等の措置を講じないまま5 年後の2019年度点検において、Ⅲ判定へ遷移した橋梁は8%(39橋)となっております。
――同様にトンネルの対策進捗状況は
小田原 Ⅲ判定80箇所のうち着手済みが65箇所、措置完了が47箇所です。
トンネル対策例
支承取替 腐食対応のためいくつかの橋梁で必要
伸縮装置 受け樋の設置も
――支承および伸縮装置の取替えは
小田原 桁端の腐食にともない、支承周りも腐食が進み、機能障害が発生している事例があります。それについては耐震補強と合わせて、取替えはいくつかの橋梁で行っています。桁端の損傷要因として、伸縮装備の排水機能の劣化がありますので、予防保全の観点で水道を断つために必要に応じて伸縮装置の取替えも行っています。
――伸縮装置の取替えまでに至っていますか。場所によっては、伸縮機能は問題ないが、周りの止水機能が損傷しているので止水機能だけ回復する技術も出てきています。東北地整では、基本的には止水効果がなくなったものは取替える方針ですか
小田原 補修しているケースが多いです。
――つまり、後打ちコンクリートの補修や錆の除去などですか。その後、止水機能を回復させるとか、受樋を設置するなどですか
小田原 古くなければ樋だけを設置するなど、経過年数や種類によります。
――昨年度、今年度の取替実績、予定は
小田原 支承交換、ジョイント交換は毎年数橋程度施工しています。ノージョイント化は最近では行っていません。今年度は支承取替を6橋、ジョイント取替を4橋でそれぞれ施工します。
塗替え 2021年度は10橋約26,000㎡で実施
水系塗膜剥離剤で既設塗膜を除去
――鋼橋塗替えについて。昨年度の実績と今年度の予定は。また、新しい重防食などの採用は。有害物質が含まれる既存塗膜の処理について
小田原 2021年度は10橋の塗装塗替を予定しています。10橋全て部分塗替であり、約26,000m2になります。塗膜剥離作業について、PCBや鉛等の有害物が含有されている場合は、湿潤化により作業を実施しています。
鋼橋の塗替え対策例
――新技術には、重防食での塗替え、錆転換型塗料の2種類あり、その技術を採用していますか。また、有害物質が含まれる既存塗膜除去時では、塗膜剥離剤や循環式エコクリーンブラスト、IHがあります。管内は寒冷地で冬期に塗膜剥離剤を使用してもほぼ除去できません。NEXCOでも塗膜剥離剤を何回塗っても、膜厚が厚いとなかなか除去できなくて苦労しています、おそらく、東北地整でも同じことが起きていると思いますので
小田原 新設時の下塗りにMIOを使っていて、剥離剤を用いても除去が難しく何回か剥離剤の塗布と掻き落としを繰り返す必要があり、時間と費用が問題になります。その意味で、新材料・新技術の導入の余地はあると思いますし、もう一方で(剥離作業の)施工時期を考えていく必要があると思います。
耐候性鋼材 111橋で何らかの措置が必要
原因は防水、排水溝の不良が約9割を占める
――耐候性鋼材採用の橋梁での劣化事例は
小田原 採用橋梁は162橋です。主桁の腐食が損傷区分として判定される部分で大きく見られています。直近の定期点検結果から111橋で何らかの措置(Ⅱ、Ⅲ判定)が必要になっており(Ⅲ判定は5橋)、比較的新しい橋梁でもⅡ判定が報告されるようになっています。
原因では、防水、排水溝の不良が約9割となっています。桁端や外桁で水があたって、安定錆が形成されないで劣化傾向が見られています。
――排水樋がそもそも下フランジにあたるところについていたり、排水樋が凍結膨張してセグメントのところで割れて、そこから水がまわったり、という話は過去に聞きました
小田原 スラブドレンは本来であれば桁端部を過ぎて、構造物体から離れたところで導水することになっていますが、途中で止まっていて、桁端のところで終わっていたり、ドレンが脱落して接続口から水が落ちている状態になっていて、風の影響で桁にあたってしまうという事例がでています。
もうひとつの要因としては、橋台周りで建設時は樹木がなかったのが、樹木が茂り、湿気が増えると建設当時と環境が変わってきています。明確には分析できていませんが、そのような傾向もあります。
――どのような対応を考えていますか
小田原 構造体としての排水と導水に加えて、環境の変化にも注視して、適切に対応しなければならないと考えています。
――排水樋や導水樋を抜本的に変えることも行っているのですか
小田原 確認されればそうしています。
――耐候性鋼材は腐食程度で済んでいるのですか
小田原 把握している中ではそうです。補修や再塗装にまでは至っておらず、予防的に洗浄を行っています。
新技術 床版損傷の非破壊検査技術や鋼・コンクリート防食手法を積極活用
道路防災総点検 要対策個所は506箇所 そのうち72箇所が対策済み
――橋梁補修における新技術の活用は
小田原 床版補修においては、床版損傷範囲を非破壊で把握する技術(新技術名称:「床版キャッチャー」)などを活用しています。支承補修では、既設鋼製支承に金属溶射することより長期間防食し、同時に潤滑性防錆剤を注入する技術(新技術名称:「支承の若返り工法」)などを活用しています。断面補修においては、塩化物イオンの浸透速度を大幅に低減する断面修復材(新技術名称:「塩害対策用断面修復材(デンカクロルフィックス)」)などを活用しています。
――異常気象対策は
小田原 近年の激甚化・頻発化する災害や急速に進む施設の老朽化等に対応するべく、災害に強い国土幹線道路ネットワーク等を構築するため、高規格幹線道路ネットワークの整備や老朽化対策等の抜本的な対策を含めて、防災・減災、国土強靱化の取組の加速化・深化を図ります。具体的には、土砂災害等による道路の通行止めのリスクを解消するため、防災点検の要対策箇所等の災害リスク等に対し、豪雨による土砂災害等の発生を防止するため、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策による法面・盛土対策を推進していきます。
8月の大雨により落橋した国道279号小赤川橋に国の権限代行による仮橋を設置
――道路防災総点検やそのほかの点検で確認した要対策箇所完了数と対策進捗状況は
小田原 要対策箇所数は506箇所で、このうち実施済み箇所数は72箇所(2021年3月末時点)となっております。
国道48号の湯渡戸橋で架替えが進捗
郷六橋では床版取替工を施工
――特殊・長大橋の架替えや大規模修繕は
小田原 仙台市内の国道48号で湯渡戸橋(橋長70.1m、鋼単純非合成箱桁橋、逆T式橋台、直接基礎)の架け替えを行っています。現在は床版の施工を進めています。
湯渡戸橋
――仙台西道路の郷六橋では床版取替工事を行いましたね
小田原 郷六橋は交通量が多いところですので、上下線とは別に仮橋を架けて、交通を確保しながら施工しました。
大規模更新のような形で床版取替を実施していくというよりは、損傷が激しくなる前の措置をしていくこと(予防保全)がいま、取り組んでいることです。
郷六橋の床版取替
――直轄診断や直轄補修・補強の事例は
小田原 昨年完了しましたが、湯沢市管理の万石橋で補修、補強を行いました。現在実施中の案件はありません。
――ありがとうございました