道路構造物ジャーナルNET

復興道路・復興支援道路は年内に全線開通予定

東北地整 日沿道・東北中央道と東北を横断する地域高規格道路の建設着々と進む

国土交通省東北地方整備局
道路部長

小田原 雄一

公開日:2021.09.07

トンネル 坑口部の覆工コンクリートおよび坑門の型枠脱型を7日以上確保
湯野上3号トンネル 東北地整で初めて、新技術導入促進Ⅱ型により発注

 ――トンネルの新技術、新材料についても。最近は、自動セントルによる覆工作業や、遠隔立ち合いの導入が目立ってきています
 小田原 トンネルのコンクリートについては、橋梁と同じ品質確保・耐久性確保策を採るほか、トンネル坑口部の耐久性確保(緻密性向上)策として、坑口部の覆工コンクリート(2スパン、約20m)および坑門の型枠脱型を7日以上確保することに引き続き取り組んでいきます。
 AIの活用については、トンネル切羽などの地山判定手法に活用しています。国道121号湯野山バイパスの湯野上3号トンネル工事において、東北地整で初めて、新技術導入促進Ⅱ型により発注しました。技術者が目視で行う岩判定を補助するため、デジタルカメラの写真と掘削機械の挙動データをAIに学習させて、切羽の地山判定及び安定性を評価し、支保パターンの選定を行うなどの実証・検証を進めています。
 ICTについては、東北地整では、今年度、原則全ての技術提案評価型(S型)において、これまでの品質確保に関する技術提案項目に加えて、ICT活用などによる生産性向上に資する技術提案を指定項目とする試行を実施しています。

橋梁4343橋、延長209.2㎞を管理 トンネルは262箇所、214kmを管理
 経過年数が古い橋ほど損傷傾向が著しい

 ――管内の橋梁内訳は
 小田原 4,343橋、延長209.2kmを管理しています。橋種別橋梁数では鋼橋が1,406橋、PC橋が1,330橋、溝橋が1,295橋と各約3割を占めています。RC橋は279橋と6%程度で、混合橋が33橋となっています。橋種別延長比は鋼橋が135.8kmと全体の65%を占め、次いでPC橋が51km(24%)、混合橋が9.9km(5%)、RC橋が5.8km(3%)となっております。

管内の供用年度別橋梁数

 建設年次別では、傾向として高度経済成長期に全体の約3割が建設され、現在50年を経過した橋梁は約1/4を占め、10年後には約5割、20年後には約6割となります。延長別は、2~15m未満2,124橋、15~50m未満1,233橋、50~100m未満431橋、100m以上555橋です。

※建設年度不明橋梁23橋除く
50年を経過した橋梁は約1/4を占め、10年後には約5割、20年後には約6割となる


 ――トンネルは
 小田原 262箇所(延長214km)を管理しています。工法別ではNATMが約7割、矢板工法が約3割です。

管内トンネルの供用年別箇所数と延べ延長

 建設の推移をみると、高度成長期といわれる1955年から73年にかけて全体の約3割にあたる63箇所が建設され、今後、これらの道路トンネルの高齢化が一気に進みます。建設後50年を経過した道路トンネルの割合は、現在16%(41箇所)であるのに対し、10年後には32%(85箇所)。20年後には42%(111箇所)となります。

建設後50年を経過した道路トンネルの割合は、現在16%であるのに対し、10年後には32%、20年後には42%となる

 延長別は、15~50m未満3箇所、50~100m未満8箇所、100~500m未満118箇所、500~1,000m未満68箇所、1,000m以上65箇所です。

凍結防止剤を多く散布 構造物には過酷な環境
 日本海沿岸部ではASRと塩害、凍害の複合劣化も

 ――点検を進めてみての劣化状況は
 小田原 東北地方は凍結防止剤を散布しており、構造物にとっては過酷な環境になっています(右図)。特に、山間部において多く散布しており、横軸の国道46号の仙岩や国道48号、国道7号の青森と秋田を結ぶ矢立周辺、山形の月山周辺などが顕著です。また、日本海沿岸部においては、凍結防止材の散布に加え、飛来塩分も相まって、凍害、あるいは凍結防止剤に含まれる塩分の影響でASRが生じ、複合劣化が発生しています。
 2014~19年度の一巡目の定期点検結果では、対象4,016橋のうち、判定区分Ⅳが1橋、判定区分Ⅲが449橋と総数の11%を占め、判定区分Ⅱも2,007橋とほぼ半分に達しています。判定区分Ⅲの割合は、特に40年経過した橋梁で多くなっています。

2014~19年度の一巡目の定期点検結果と10年ごとの供用年次別に分けた判定区分状況

塩害/ASR/凍害によるコンクリート構造物の損傷

 ――どのような部位が損傷していますか
 小田原 橋面上に凍結防止剤を散布するため、コンクリートであれば桁端部に塩分が付着する事例や、伸縮装置の漏水などで鉄筋腐食が促進される事例が見られています。


凍結防止剤散布による損傷事例

凍結防止剤による損傷メカニズム


 ――伸縮装置の端部が腐食するということですか
 小田原 伸縮装置の下です。非排水タイプのものが劣化して、橋面から水が浸入して、その結果、桁端部の鉄筋腐食が増長されています。

床版内に塩分が浸透して様々な損傷を引き起こしている状況

 ――RC床版の損傷は
 小田原 舗装面のひび割れは補修していますが、完全に水の浸入を防ぐことは難しく、その結果、床版内に塩分が浸透して、床版を貫通して漏水や遊離石灰、格子状のひび割れなどの損傷傾向が見られています。RC床版の損傷要因は塩分、ASRもありますが、耐荷力不足などさまざまな複合的な要因が相まって発生していると考えています。

RC床版の損傷事例

 ――北海道で損傷が発生した床版は厚さが160mmしかありませんでした。そのような床版厚が薄い床版が同じ雪国である北海道には結構あります。鉄筋量も少なく、防水工も行っていない。防水便覧(赤本)が出る前の橋梁は、基本的に防水工をしていません。そのため、橋面舗装のひび割れから水が浸入したら、損傷発生に至ります。それに加えて、床版自体の骨材が大丈夫かという問題もあります。防水工の施行状況を把握しているのか、また、事前対策として未施工の橋梁に防水工の施工は考えていますでしょうか
 小田原 橋梁点検を定期的に行っていますが、それだけでは既設橋梁の床版防水がなされているかどうかは、また各橋梁の補修履歴も確認していますが、把握しきれていないのが実状です。平成14年道示以降は新設橋については行っていると思われますが、それ以前の橋梁はほぼ行っていないと考えられます。加えて、それらの橋梁は少なからず舗装や床版は痛んできていて、部分的な打替えを行っていると思います。東北地整では約3年前に道路橋の補修の手引きを発刊して、補修時の配慮事項を現場サイドでもわかりやすいように記載しています。保全の関係から言うと、どうしても対応が後追いしかなくて、防水工がされていないのであれば、本当はすべて行いたいですが、部分的な補修を繰り返しでしかできていないのが現状です。
 ――鋼橋の損傷状況は
 小田原 伸縮装置からの漏水や路面からの跳水によって凍結防止剤に含まれる塩化物が供給される部位で、著しい腐食による断面欠損が生じています。特に漏水の影響が大きい桁端部の損傷が頻発していることから、補修の際は、浮き錆の部分を完全に除去した上で、補剛材や当て板補強を行うとともに、下地処理を十分に行ったうえで再塗装することにしています。
 ――損傷の資料は国交省の中でも、東北地整が一番まとめられておられるように感じます
 小田原 諸先輩方がいろいろと苦労されて、手引書などを発行して、取り組みについても古い人には浸透してきていると考えています。いままでの取組みや、今後のメンテナンスに向けて、できるだけ内容を充実させて、残して繋いでいく必要があると考えています。
 最近の傾向としては補修後の再劣化が見られています。道路橋の補修手引きなどで、みなさんにお話しをしています。例えば下部工においては、凍結防止剤の影響による塩害やASRなどによる損傷のほか、補修した個所のマクロセル腐食の可能性がある再劣化事例も生じています。また、地覆においても交換した防護柵が地覆コンクリートの劣化要因の排除が不十分であったため、再度地覆の剥離や鉄筋の露出といった損傷が生じているケースがあります。伸縮装置においても後打ちコンクリートの劣化により、同部分のコンクリートが陥没してしまった事例があります。

損傷事例集


 ――そうした再劣化事例は、発注者はなかなか出したがらないものですよね。それを出すのはいいですね
 小田原 橋梁の損傷はほぼ水と塩の供給によるものとなります。それを断つために、まず水の供給に関して、完全に防ぐことは難しいので弱点部に常時水が供給されない、されにくい補修の事例で、例えば水切りなど、また常時水があたる下部工などは、コンクリートの表面保護塗装などの取り組み事例を挙げています。

「水」への対策事例

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