道路構造物ジャーナルNET

復興道路・復興支援道路は年内に全線開通予定

東北地整 日沿道・東北中央道と東北を横断する地域高規格道路の建設着々と進む

国土交通省東北地方整備局
道路部長

小田原 雄一

公開日:2021.09.07

 未曾有の津波被害を受けた東日本大震災から10年の歳月が経過し、東日本大震災からの復興のリーディングプロジェクトとして復興を牽引してきた約550㎞の大動脈であり、命の道でもある復興道路・復興支援道路は全線開通に向け最終段階を迎えている。一方、復興以外の高規格幹線道路については、これまでに全体の約9割が開通し、残るミッシングリンクの解消に向け整備が進んでおり、また今年4月に「防災・減災、国土強靱化に向けた道路の5か年対策プログラム(東北版)」が策定され、今後5か年の目標を示し、取り組みを重点的かつ集中的に実施することとしている。そうした話題や東北ならではの凍害、塩害、ASRなど保全分野も含めて小田原雄一道路部長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

復興道路は残り25㎞ 年内開通へ   
 2021年度新規事業化は6箇所

 ――まず、復興に関する道路の概成状況と主要道路事業の建設計画と進捗状況から
 小田原部長 復興道路・復興支援道路は、2011年の事業化より10年(2020年)での完成を目指して事業を進めてきましたが、現場条件の見直しや自然災害の影響により2021年の開通区間が4箇所あります。そのうち東北中央自動車道(霊山~伊達桑折)が4月22日に、三陸沿岸道路(田野畑南~尾肝要)が7月10日に開通しており、残る三陸沿岸道路(普代~野田、野田~久慈)は年内に一日でも早い開通を目指し事業を進めています。
 ――2021度の新規事業化箇所および今後の開通予定区間は
 小田原 新規事業は6箇所あります。①国道106号盛岡宮古横断道路(地域高規格道路)の一部を構成する箱石達曽部道路(岩手県宮古市箱石~川内、延長9.7km)、②仙台市内の国道4号拡幅事業(篭ノ瀬~鹿の又、延長1.6km)、③国道108号石巻河南道路(宮城県石巻市蛇田~北村、延長7.8km)、④国道47号新庄酒田道路(地域高規格道路)の一部を構成する戸沢立川道路(山形県最上郡戸沢村古口~東田川郡庄内町狩川、延長5.8km)、⑤福島県内の国道4号矢吹鏡石道路(福島県西白河郡矢吹町北浦~岩瀬郡鏡石町久来石、延長4.8km)、⑥秋田県内の国道105号大覚野峠防災(秋田県仙北市西木町上桧木内~北秋田市阿仁村比立内、延長5.7km)です。いずれの区間につきましても、今年度は調査設計を実施していきます。
 今年度の今後の開通予定としては、岩手県内の三陸沿岸道路(普代~野田、野田~久慈、25㎞)、山形県内の東北中央自動車道((仮)村山北IC~大石田村山IC、4.5㎞)、福島県内の国道4号鏡石拡幅(2.2㎞)4区間となっています。


復興道路・復興支援道路/新規事業化


今年度開通予定区間① 建設中の新堀内大橋(普代~野田)/久慈大橋(野田~久慈)

今年度開通予定区間② 東北中央自動車道((仮)村山北IC~大石田村山IC)/国道4号鏡石拡幅

文中以外でも天間林道路(青森河川国道管内)などで工事が進んでいる

天間林道路は2022年内の開通を目指すべく工事が進んでいる。進捗を早めるため現場打ちをプレキャストに変更した箇所も

2026年度までの開通見通しを公表
 日沿道は2026年度に全線開通予定

 ――今後期待が高いのは日沿道(日本海沿岸東北自動車道)だと思いますが、どのような進捗状況でしょうか
 小田原 ①朝日温海道路の新潟県境~温海温泉IC間6.7㎞、②遊佐比子IC~遊佐鳥海IC間6.5㎞(2023年度開通)、③遊佐象潟道路の遊佐鳥海IC~(仮)小砂川IC間10.6㎞(2026年度開通)、④同道路の(仮)小砂川IC~象潟IC間7.3㎞(2025年度開通)、⑤二ツ井今泉道路4.5㎞(2023年度開通)の5区間で事業を進めており、一部現道活用区間はありますが、2026年度までに山形県鶴岡市から秋田県小坂町までの約230㎞が全線開通予定となっています。
 ――同様に東北中央道(東北中央自動車道)は
 小田原 ①東根北IC~(仮)村山北IC間8.9km(2022年内開通)、②泉田道路((仮)新庄北IC~(仮)昭和IC間)8.2km(2022年度開通)、③新庄金山道路((仮)昭和IC~(仮)金山IC間)5.8km(2025年度開通)、④金山道路((仮)金山IC~(仮)金山北IC)3.5㎞、⑤真室川雄勝道路7.2㎞、⑥横堀道路((仮)下院内IC~雄勝こまちIC)3.7㎞(2025年度開通)の6区間で事業を進めています。
 その他に東北を横断する地域高規格道路として、国道47号新庄酒田道路では、①新庄古口道路6.0㎞(2022年度開通)、②高屋防災4.4㎞、③高屋道路3.4㎞(2024年度開通)、④戸沢立川道路5.8㎞の4区間で、国道106号宮古盛岡横断道路では、①田鎖蟇目道路7.2㎞、②箱石達曽部道路9.7㎞の2区間で、国道113号新潟山形南部連絡道路では、①小国道路12.7㎞、②梨郷道路7.2㎞(2023年度開通)の2区間でそれぞれ事業を進めています。

今年度上部工事 鋼橋・PC橋とも6件ずつ
 トンネルは3件発注予定

 ――主要な橋梁・トンネルなど構造物の計画と進捗状況は
 小田原 4月に公表した発注見通しでは、全体(本官、事務所)で鋼橋上部工が6件、PC上部工が6件です。下部工は遊佐象潟道路の吹浦高架橋で下部工を発注する予定です。量的には、復興の前に戻っている感じです。トンネルは、本官で3件発注予定です。
 主要な構造物としては、橋梁上部工が国道13号横堀道路の役内川橋(橋長353m、鋼5径間連続箱桁橋)、国道4号仙台拡幅で箱堤高架橋(285m、鋼5径間連続箱桁橋)、日沿道(酒田みなと~遊佐)で月光川橋(264m、鋼3径間連続箱桁橋)、トンネルが国道121号湯野上バイパスの湯野上2号トンネル(2,579m、NATM)、国道349号道路災害復旧事業の丸森第1号トンネル(1,621m、NATM)、同第3号 トンネル(1893m、NATM)です。



役内川橋/箱堤高架橋 いずれも下部工が進捗中だ

大砂川橋 の片持ち架設、鮭川橋では送り出しが進む
 青ぶな山トンネル(避難坑)は延長4,573mを掘進

 ――施工中の構造物は
 小田原 国道47号新庄古口道路の鮭川橋(216m、鋼4径間連続鈑桁橋)の送出しと、国道7号遊佐象潟道路の大砂川橋(99m、PC2径間連続ラーメン橋)の片持ち架設が進んでいます。


鮭川橋/大砂川橋
 トンネルでは、国道103号奥入瀬バイパスの青ぶな山トンネル(避難坑)(4,573m、NATM)や国道7号二ツ井今泉道路の今泉第一トンネル(797m、NATM)、国道121号湯野上バイパス湯野上第3トンネル(1,580m、NATM)の掘進を進めている他、三陸沿岸道路(野田~久慈)の堀内トンネル(1,587m、NATM)、国道47号新庄古口道路の前波トンネル(164m、NATM)などの覆工を進めています。

青ぶな山トンネルの掘進状況

今泉第一トンネルの掘進状況

 ――設計中の主な橋梁は
 小田原 国道113号小国道路(延長12.7km)で6橋の橋梁設計を進めています。また、国道13号福島西道路(Ⅱ期 )(延長6.3km)では、2橋の橋梁設計を進めています。
 ――設計中の主なトンネルは
 小田原 国道113号小国道路(延長12.7km)、国道47号高屋防災(延長4.4km)でそれぞれ1箇所ずつの設計を進めています。
 ――新設における新技術、新材料の導入事例は。また、施工での新技術や新しい防食の採用事例は
 小田原 三陸沿岸道路(田野畑南~尾肝要)の思惟花笑み大橋(394m、PC4径間連続ラーメン橋)では、大型ワーゲンを採用してブロック数を17から15に減らして、約1ヶ月の工期短縮を図りました。

コンクリート構造物、RC床版は独自の耐久性確保の手引書を作成
普代川大橋では現場打ちRC床版のひび割れ対策で高度な技術にチャレンジ

 ――東北地整では、コンクリート構造物の品質確保に関する手引書をつくって、全国に先駆けて 構造物の耐久性確保に取り組んでいますね
 小田原 おっしゃる通り東北地方整備局では『コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)』などを作成し、耐久性の高いコンクリート構造物の実現に努めています。コンクリート構造物の品質確保対策として、本官工事においては、「施工状況把握チェックシート」と「表層目視評価」を活用した試行工事(2013年試行開始)に引き続き取り組んでいきます。
 ――RC床版でも耐久性確保の取組みを行っていますね
 小田原 『東北地方におけるRC床版の耐久性確保の手引き(案)』を策定しています。気仙沼湾横断橋や桑折高架橋などの大規模橋梁における現場打ちRC床版は、手引きに準じて耐久設計を行い、セメントは表層の緻密化を図るため、高炉セメントB種を用いています。施工については、床版の均質性、密実性を確保するため「施工の基本事項の遵守」に留意して施工計画を立案し、模擬床版による試験施工により施工性能の確認を行った後、実施工しました。養生による緻密性の向上を図るため、1か月程度の追加養生も行っています。

現場打ちRC床版の品質確保実施例①青ぶな1号橋

現場打ちRC床版の品質確保実施例②桑折高架橋


現場打ちRC床版の品質確保実施例③気仙沼湾横断橋
 ――向定内橋ではフライアッシュを使いましたが、高炉セメントB種を基本としたのですね
 小田原 フライアッシュは、生コンプラントが対応していないことが多く、手投入となると品質のばらつきを管理するのが難しいので高炉セメントB種で施工を行っています。

フライアッシュを採用して打設した向定内橋

 ――普代川大橋で現場打ちRC床版のひび割れ対策として、より高度な技術にチャレンジしましたね
 小田原 3径間以上のRC床版のひび割れ抑制対策として、普代川大橋において単位膨張材料を増やす試行工事を行いました。RC床版の段階施工において、発生する応力を低減するため、学識経験者の助言を受けて、一部施工ロットにおいて、単位膨張材料を標準量の20kg/m3から25kg/m3に増やしました。適切な段階施工計画と膨張材の活用により、有害なひび割れを抑制することが出来ました。
 ――床版防水や基層の水密性確保については
 小田原 2020年度から橋面舗装の基層を変更しました。具体的には橋面舗装とRC床版の耐久性確保を図るため、橋面舗装基層用アスファルト混合物の新たな仕様(密粒度アスファルト混合物13FW)を定めました。高い剥離抵抗性を有しています。さらに舗装体内部への水の浸入とRC床版上の滞水低減を目的に、密粒度アスファルト混合物13FWは、バインダーにポリマー改質アスファルトを使用し、アスファルト量は5.5~7.0%、空隙率は2.5~3.5%にしています。

2020年度から橋面舗装の基層を変更

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