1巡目の点検でⅢ判定は12橋
対策完了は3橋、未着手は7橋
――長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況は
川尻 全体363橋のうち、1巡目の点検結果によるとⅢ判定は12橋でした。2020年度末までに完了したのは3橋で、補修工事実施中は2橋、設計完了済みで補修工事未着手が7橋です。
一方、2巡目の点検では、すでに2019年度の点検でⅢ判定が3橋確認されました。この3橋については、2020年度に補修設計を完了しています。
――新しくⅢ判定となった橋梁の損傷状況は
川尻 港橋では支承の腐食及び防食機能劣化、新江住橋では、主桁のひび割れ、剥離鉄筋露出、補修補強材の損傷及びうき、床版の剥離鉄筋露出、補修補強材の損傷、見草橋では主桁の補修補強材の損傷、うき、漏水、支承本体の腐食及び防食機能劣化、沓座モルタルの変形欠損などが生じています。
――同様にトンネルの点検結果と損傷状況および対策状況は
川尻 1巡目のⅢ判定は3トンネルで2018年度末までに補修を完了しました。2巡目点検では、2019年度点検でⅢ判定が4トンネル確認されましたが2020年度内に補修設計を完了しています。新しくⅢ判定となったトンネルの損傷状況は、アーチ部及び目地部のうきが4トンネルです。
床版防水は6割の橋梁で実施済み
古座大橋で支承取替
――経年劣化や疲労などによる上部工補修補強のここ3年の実績と、今年度の施工計画については
川尻 ここ3年の実績は、ひび割れ補修が11橋、断面補修が12橋、表面保護が9橋、塗替えが3橋、床版防水が3橋、伸縮装置の取替および補修が8橋、支承取替が2橋、橋脚巻立て補強1橋、落橋防止装置設置1橋、変位制限装置設置が1橋です。今年度は溝橋の丁版および側壁の補修が1個所となっています。
――橋梁ごとの床版防水の施工状況は事務所において把握していますか
川尻 把握しています。施工済みは管内橋梁全体の約6割となっています。
――支承および伸縮装置の取替、ノージョイント化については
川尻 2020年度は支承取替を1橋で行っています。串本町の古座大橋です。
支承取替実施例(古座大橋)
日置大橋の耐震補強実施例
――橋梁形式と橋長、施工箇所概要を教えてください。取替えた理由と、どのように損傷した(もしくは耐震的に問題のある)支承をどのような新しいタイプの支承に取り換えたのか、損傷傾向に合わせた防食対策も含めて教えてください。伸縮装置の取替状況について、取り替えの有無や数などを教えてください
川尻 古座大橋(橋長324.00m、4径間連続RC中空床版橋(A1~P4)、単純鋼(鉄)リベットランガーアーチ橋(P4~P5)、単純PCポステンT桁橋5連(P5~A2))では、P4、P5(ランガー部)において、耐震補強が未施工であり既設支承ではB活加重に対し、耐力不足となることから機能一体型支承(溶融亜鉛メッキ)への取替をしています。
伸縮装置の取替は5橋(ゴム製ジョイント取替1橋、鋼製ジョイント取替3橋、埋設ジョイント取替1橋)で行いました。
塩害 電気防食を多くの橋梁で採用
――塩害による損傷の有無と対策工は
川尻 塩害については、鉄筋のかぶり不足の箇所で損傷が起きています。腐食した鉄筋の防錆はもちろん、ひび割れ補修や断面修復、表面保護、電気防食などを症状に応じて施工しています。
塩害損傷状況(田子ボックス)
――具体的に損傷している部位を教えてください
川尻 主桁及び橋脚です。
――海岸線沿いにある現道42号は塩害環境が厳しいと思いますが、電気防食をしている橋梁の数は多いのでしょうか
川尻 比較的多くなっています。尤も中には適切な時期に行われたとは言い難く、上手く効いていない橋梁も見受けられます。
――電気防食は様々な手法がありますが、どのような手法をどのような数行っているのか、具体的な橋梁名や橋梁の腐食環境も含めて、教えてください
川尻 篠浦跨線橋及び高架橋、古座大橋、潮浜橋、潮浜橋側歩道橋(上)、朝来帰橋、見草橋、宝島橋、新二色橋、南部大橋の計9橋に電気防食を実施しています。
電気防食事例
腐食環境塩害地域区分:C-(S)、塩害地域距離:0.0kmに該当する古座大橋のPC T桁上部工に浮き・剥落が多く見られ、損傷が顕著で塩分濃度が高い下フランジ及びウェブに対し、チタンリボンメッシュ陽極方式とチタン亜鉛溶射方式の2種類の電気防食を実施しました。
塩害地域区分:C-(2)、塩害地域距離:0.1kmに該当する宝島橋、新二色橋、朝来帰橋のPC T桁上部工に浮き・剥落・鉄筋露出が見られ、塩害により内部鉄筋が腐食し、鉄筋の腐食による損傷が増加傾向にあるため、桁に対し宝島橋及び新二色橋にチタン溶射方式、朝来帰橋にチタンリボンメッシュ陽極方式による電気防食を実施しました。
新二色橋電気防食工(チタン溶射方式)
朝来帰橋電気防食工(リボン陽極方式)
塩害地域区分:C-(2)、塩害地域距離:0.1kmに該当する潮浜橋、潮浜橋側歩道橋(上)、見草橋、南部大橋のRC T桁上部工に、長年に渡って波飛沫等により外部からの塩分供給により塩化物イオン量は発錆限界を超過していたが、変状は比較的軽微で今後変状が加速的に進展する可能性があるため、潮浜橋、潮浜橋側歩道橋(上)にチタンリボンメッシュ陽極方式、見草橋に貼付型シート陽極方式、南部大橋にチタン溶射方式による電気防食を実施しました。
塩害地域区分:C-(3)、塩害地域距離:0.2kmに該当する篠浦跨線橋及び高架橋(PC橋)P2橋脚の柱部で鋼材位置での塩化物イオン濃度が発錆限界値を超えており、ひびわれが柱全体に見られ、損傷状況および補修状況を考慮し、柱全体にチタンロッド方式による電気防食を実施しました。
篠浦跨線橋電気防食工チタンロッド取付
――同様にASRは
川尻 詳細調査でASRでないことを確認しました。
――鋼橋の塗替えについて近年の実績と今年度の予定は
川尻 塗替えは2018年度に3橋で施工した後、19年度以来、実績がありません。今年度は予算状況を見て進めて行きます。また、塗替えした3橋ではPCBを含有する塗膜はありません。
塗膜劣化例と塗替え例
――耐候性鋼材を採用している橋梁はありますか
川尻 26橋で採用しています。全て5年以内に架橋された橋梁で、紀勢自動車道が中心です。
のり面吹付の劣化箇所でトーコンプラス工法を採用
――2011年紀伊半島大水害の記憶はいまだに残っていますが、こうした異常気象対策について道路の観点から道路に面する斜面やのり面、切盛土など対応していることがあれば教えてください
川尻 過去に施されたのり面の吹付の劣化に対しては、もともとあるモルタルを壊さずに補修するトーコンプラス工法を採用しています。あとは紀勢道の一部では植生が根付いていない箇所があります。そうした個所にはコンクリート面にも吹き付けて緑化ができるような技術・工法の試験施工を行っています。
――NETIS登録技術・材料や、BIM/CIMの採用について
川尻 すさみ串本道路の高富川橋設計において、フーチング配筋と杭配筋の干渉チェックを3次元モデルを活用して実施しております。
――ありがとうございました