道路構造物ジャーナルNET

災害で改めて感じたダブルネットワークと4車線の大切さ

九州地整 災害からの復旧や地域の再建に大きな使命

国土交通省
九州地方整備局
前 道路部長

沓掛 敏夫

公開日:2021.07.16

直轄国道2,345km、橋梁4,486個所、トンネル162個所を管理
 橋梁は高齢化目立つ あと10年で過半数が50歳以上に

 ――次に保全について。現在の管内橋梁・トンネルの内訳は
 沓掛 九州地方整備局が管理する直轄国道は全体で2,345㎞となっています。そのうち橋梁は4,486橋、トンネルは162個所となっています。
 橋種別はRCが4割、PCが4割、鋼橋が2割となっています。
 橋長別では15m未満が5割強を占める一方、100m以上の長大橋も12%ほどあります。
 供用年次別は10年未満が全体の1割、10年以上20年未満が2割弱、20年以上30年未満が1割、30年以上40年未満が1割強、40年以上50年未満が2割弱、50年以上が3割強となっています。
 ――供用50年を経過した橋梁がかなりを占めますね
 沓掛 あと10年経つと、半数が供用50年に達します。それに伴い橋の老朽化もいよいよ顕在化していくと思います。

 ――同様にトンネルは
 沓掛 トンネルは山岳トンネルが154個所と全体の95%を占めます。残り8個所は開削トンネルとなっています。
 供用年次別は比較的若く、10年未満が3割、10年以上20年未満が2割、20年以上30年未満が1割弱、30年以上40年未満が1割、40年以上50年未満が1割、50年以上が2割強です。
延長別は100m以上500m未満のトンネルが最も多く44%程度を占めています。次いで1㎞以上3㎞未満が約26%を占めます。

橋梁 健全度判定区分Ⅲは7% Ⅳは数橋
 PC橋でひび割れが生じている個所も

 ――点検を進めてみて管内の劣化状況はどのように見ていますか
 沓掛 橋梁は判定ⅠとⅡで全体の93%を占めます。判定区分Ⅲは約7%でⅣも数橋ありました。トンネルはⅢ区分が34%に達しています。
 橋梁は鋼橋については漏水などが生じて桁や支承部に塗膜劣化や錆、腐食などを生じせしめている傾向があります。RC橋はコンクリートの浮きや剥離、鉄筋露出、PC橋はひび割れなどが生じています。
 ――PC橋でひび割れですか
 沓掛 構造物の下面などに緊張方向(縦断方向)のひび割れなどが見られました。

 ――トンネルは具体的にどのような損傷が生じていますか
 沓掛 覆工コンクリートのところでうきや剥離が見られるのと、漏水が生じているところで照明などの付属物が腐食してしまっています。

耐震補強 緊急性高い未対策橋は残り3橋

 ――耐震補強の進捗状況は
 沓掛 緊急輸送道路に指定されていて橋長が15m以上を有する橋が1,653橋あります。そのうち1,434橋については耐震性能2を確保しています。残り219橋については、このうち大規模地震発生確率26%以上の地域にあるのは3橋しかなく、これらは今年度中に対策を完了させます。
 ――残る216橋についてはどのように対策していきますか
 沓掛 2026年度までに完成させます。

残る216橋中100m以上の長大橋は86橋 トラス橋も4個所存在
 橋梁、トンネルとも修繕の着手率は9割に達する

 ――この中にトラスやアーチ、斜張橋など上部工耐震も必要になるような長大特殊橋はありますか
 沓掛 216橋のうち、橋長100m以上の橋は全部で86橋存在します。また、特殊橋としてはトラス橋が4橋あり、いずれも100m以上の長大橋となっています。今年度(令和3年度)に橋長100m以上の橋は7橋対策工事を実施する予定です。
 ――長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況は
 沓掛 第一回定期点検結果に基づく橋梁修繕の着手率は2019年度末で8割でしたが、2020年度末では9割に達しています。修繕完了率も7割に達しています。
トンネルは同様に2020年度末で着手率が9割、完了率も8割に達しています。
 ――非常に対応が早いですね
 沓掛 予防保全によるメンテナンスへ早期に移行するため、Ⅲ、Ⅳ判定の構造物については速やかに補修設計・補修工事に着手しているため、高いと考えています。修繕方法は一般的な方法を採用しており、断面修復やあて板補強などを実施しています。
 ――二巡目の点検に入っていると思いますが、判定区分の悪いほうへの遷移は起きていますか
 沓掛 現在のところ、2巡目点検(令和元年度)のⅢ判定は13%(121橋)、Ⅳ判定はありません(0橋)。なお、1巡目点検(平成26年度)において判定Ⅰ・Ⅱに診断された橋梁のうち、修繕等の措置を講じないまま5 年後の令和元年度点検において、Ⅲ判定へ遷移した橋梁の割合は10%(47橋)、Ⅳ判定への遷移はありません(0橋)でした。

上部工 桁の損傷が目立つ
 床版防水実施率は2割

 ――上部工のここ3年の補修補強実績は
 沓掛 鋼床版の疲労亀裂の発生や補修補強実績は、九州地方整備局管内ではありません。上部工については、桁の損傷が橋種を問わず圧倒的に多くなっています。
 ――コンクリート床版部の損傷状況(損傷数)は
 沓掛 コンクリート床版部の損傷状況は床版ひび割れが1,216橋、漏水、遊離石灰が1,922橋、剥離、鉄筋露出が924橋などとなっています。損傷状況ごとに抽出しており、橋梁数は重複があります。

主桁の損傷事例/RC横桁の損傷と修繕状況

 ――全橋梁数に占めるコンクリート床版の防水層施工橋梁の割合は把握していますか
 沓掛 把握しています。全体4,486橋に対して防水工を施工済みの橋梁は 864橋と約20%に留まっています。
 ――支承及びジョイントの取替、ノージョイント化について最近の傾向と今年度予定は
 沓掛 支承交換は毎年数橋程度、ジョイント交換は数十橋程度で施工しています。ノージョイント化は最近では行っていません。今年度は支承取替を10橋、ジョイント取替を18橋でそれぞれ施工します。これらの工事は単独で出すのではなく、その他の修繕も併せて発注しています。また、両取替が重複している橋もあります。

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