富久山バイパス 富久山大橋で剛結構造採用
一ノ俣橋ではASR対策にフライアッシュを混入した現場打ちRC床版を採用
――特徴ある形式あるいは工法適用を行っている橋を挙げてください
曳地 まず国道288号の富久山バイパス内に建設している富久山大橋があります。桁と橋脚を一体化(剛結)したラーメン構造とすることにより、大規模地震に対して優れた耐震性を確保することに加え、支承が不要になることで維持管理の低減を図るものです。上り線は平成19年供用し、現在、下り線を施工中です。
当該路線は、ふくしま道づくりプランにおいて、隣接する生活圏を相互に連絡し、広域的な物流・観光と救急・地域医療などを担う「地域連携道路」に位置づけられている重要な路線ですが、当箇所は、幅員狭小で交通の隘路となっていることから、延長1.7㎞のバイパス整備を進めているものです。
――橋長・形式は
曳地 橋長222.0mの鋼4径間連続鈑桁ラーメン橋(上・下部工剛結構造)で郡山市富久山町北小泉地内の阿武隈川渡河部に建設を進めています。現在は下部工を施工しており、上部工は桁製作中で、2021年の冬期に桁を架設する予定です。
こうした剛結構造を採用した橋としては、平成12年に供用した国道399号奥軽井沢橋があります。
富久山大橋
また、長期耐久性を向上させるための施策として、塩化物イオン浸透抵抗性が高く、ASR抑制効果があるフライアッシュ(NEXCO東日本で採用実績のある原町火力発電所の4種灰を使用)を混合したコンクリートによる現場打ちRC床版の試験施工を実施予定です。本県は、沿岸部や積雪寒冷地における融雪剤散布により塩害により劣化が進行しやすい環境にあることから、塩害に対する耐久性向上に取り組むことでインフラ長寿命化を図る考えのもと、行っています。
――具体的な試験施工予定箇所は
曳地 熱塩加納山都西会津線の一ノ俣橋です。当該路線は、地域における重要な生活道路ですが、狭隘で車両のすれ違いが困難であることから、延長約1.3㎞の拡幅を行っているもので、その工区内に建設が進められている橋梁です。
一ノ俣橋
橋長・形式は43.8mの鋼単純非合成鈑桁橋で、喜多方市山都町一ノ木地内に建設を進めています。施工は2021年秋頃を予定しています。施工にあたっては日本大学工学部の岩城教授・子田教授を含めた関係者による専門技術委員会を立ち上げて実施しています。
――特に建設中の長大・特殊橋などについてコンクリート橋関連では
曳地 建設中の長大橋梁としては下郷大橋があります。同橋は国道118号小沼崎BP事業(南会津郡下郷町大字小沼崎地内~同町大字高陦(たかしま)地内間延長1.53km、会津南縦貫道路の一部をなす)の阿賀川渡河部に建設されている橋梁です。現在の国道118号は線形が悪く、橋梁部では大型車同士のすれ違いが困難であり、斜面の一部には落石危険個所もあることから、安全確保と利便性向上ということでバイパス事業を進めているものです。
下郷大橋
同橋は完成すれば国内8番目の最大支間長となるRC固定アーチ橋であり、ピロンと呼ばれる塔を用いてアーチリブのコンクリートまたは鋼メラン(型枠)をPC鋼材で斜めに吊り上げて片持ち架設工法でバランスを取りながら架設するピロン・メラン工法により施工しています。
――橋長・形式は
曳地 橋長342.5mのRC固定アーチ橋(上路橋)で、現在は鋼メランの架設を行っている状況です。
――国道294号白河バイパス工区・白河バイパス北工区の進捗状況は
曳地 一般国道294号は、千葉県柏市を起点とし、福島県会津若松市に至る幹線道路です。白河バイパス工区・白河バイパス北工区は、白河市中心市街地を通過する現道が、幅員狭小、線形不良であり、交通の隘路となっていることから、全体延長4.1kmとしてバイパス整備を行っています。構造物延長は686.6m(全体延長比16.7%)となっております。
区間の主な構造物は2橋、トンネル1箇所です。
そのうち円明寺橋(プレテンPC単純中空床版橋、20.6m)はすでに施工を完了しており、現在は、小峰大橋(鋼3径間連続非合成箱桁、192.0m)と南湖トンネル(NATM工法、474.0m)を施工中です。南湖トンネルは覆工コンクリートまで完了しております。
南湖トンネルの施工状況(井手迫瑞樹撮影)
――通行不能区間でその解消のため具体的に施している施策は
曳地 冬季通行不能区間については、山岳部で積雪に伴う要因が大きいものですから、県としましては、峠部を解消するため、例えば国道401号博士峠において、全体延長7.5kmとして整備を進め、その解消を図っています。現在は工区の60%を占める長大な博士トンネル(約4.5㎞)を含め、トンネル前後の改良を施工中であります。
橋梁 管理する4,379橋の内、6割強が供用40年を経過
耐震補強は今年度に全数完了予定
――次に保全についてお聞きします。現在の管内橋梁・トンネルの内訳は
曳地 県管理橋梁は全体で4,379橋であり、橋種別内訳はRCが1,302橋、PCが1,116橋、鋼が1,020橋、溝橋等が941橋となっています。供用年次別は1970年以前が1,625橋で1971~80年に建設された1,063橋を加えると全体の6割強が40年経過しているということになります。
福島県管理の供用年別橋梁数
トンネルは全体で165個所を管理しており、工種別内訳はNATMが93、在来矢板が65、開削が5、その他が2となっています。建設年次別は、1974年以前が28個所で、ピークは1995~2004年の42個所となっており、比較的建設年次は新しい状況です。
福島県管理の建設年別トンネル数
――点検を進めてみての管内各路線の劣化状況について詳しくお答え下さい(橋種(鋼、PC、RC)、部位(桁、床版、橋脚、地覆、高欄など)ごとの損傷傾向とその理由についてお答えください
曳地 橋梁については、漏水による影響が大きく出ています。鋼橋では伸縮装置からの漏水により主桁端部が腐食しやすく、コンクリート橋では橋面からの漏水により主桁・床版が劣化しやすい傾向にあります。
PC橋の損傷発生状況と損傷原因
RC橋の損傷発生状況と損傷原因
――同様にトンネルについては
曳地 変状原因として最も多いのは「材質劣化」(うき、剥離)であり、1巡目点検で確認された変状全体の76%を占め、うち判定区分Ⅱが71%、判定区分Ⅲが5%であした。材質劣化の要因としては、凍害や塩害の影響のほか、乾燥収縮等の初期欠陥が考えられます。
――橋梁など耐震補強の進捗状況、および落橋防止装置の設置状況(全数および実施済み数)および今年度の設置予定についてお答えください
曳地 第一次・第二次緊急輸送路における耐震補強対象は255橋を計画しています。既に254橋が完了しており、残り1橋(不動橋:R114)も2021年度に実施し、全数が完了する予定です。
橋梁長寿命化修繕計画 一巡目補修対象713橋中266橋に着手済み
床版防水 複合防水工法の導入を進めていく
――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げてください
曳地 2020年末の状況で申し上げますと、1巡目(2014~18年度)の点検結果で判定区分Ⅲ以上と診断された橋梁713橋のうち266橋に着手済みで、129橋を完了しています。未着手は447橋です。コンクリート部材については、剥離・鉄筋露出に対する断面修復、鋼部材については、腐食に対する塗装等が主な対策です。健全性の診断Ⅲ以上の橋梁本体の補修については、次回の法点検(5年後)までに補修を行えるよう、計画的に補修を進めていきます。
――県が管理する橋梁における床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合などが分かれば)、今後の施工方針、採用する工法などを教えていただけましたら幸いです
曳地 床版防水の施工状況については、高浸透型防水材とアスファルト加熱型塗膜防水材を併用する橋面複合防水工法の導入を進めていきます。
――支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について今年度の施工予定個所数と取替える際の工法・種類をお答え下さい
曳地 支承取り換え予定は6橋、ジョイント取り換え予定は5橋です。
――塩害、ASRなどによる劣化の有無。劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、またその対策工法などを具体的な橋梁などを挙げてお答えください
曳地 塩害、アルカリ骨材反応による劣化はひびわれが下部工などで見られます。断面修復工で補修していく予定です。
塗替え 2021年度は10橋で施工予定
PCB調査は今年度に完了予定
――2020年度の鋼橋塗替え実施(橋数)と、2021年度の見込み(同)はまた塗替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください
曳地 2020年度は5橋で実施しました。2021年度は10橋を予定しています。新しい重防食については検討していきます。
塗替え施工例
――PCBや昨年の厚生労働省・国土交通省から2014年5月30日にでた文書を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください
曳地 PCBについては2019~21年度に調査を実施します。その他鉛等有害物質等は塗装時に確認し、含有されていれば除去しています。
――加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、県では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください
曳地 福島県で管理している耐候性鋼材を使用した鋼橋において、健全性Ⅲ以上の劣化・損傷は確認されていません。
――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、県として道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください
曳地 災害に強い道路ネットワーク構築を実現し防災機能の強化を図るため、落石防護柵等の落石対策や法枠工等による法面対策について、緊急輸送路や落石発生状況などを考慮した優先順位を設定し、計画的に実施しております。
剥離等の激しい法面に関しては、吹直しや法枠工設置など増強工事を実施し、予防保全に努めております。
防災点検 要対策2,233箇所中、2020年度末で998箇所の対策が完了
――実際の対象箇所数と対策状況(進捗数・率)は
曳地 毎年実施している防災点検により、落石等の恐れのある箇所は4,570箇所、そのうち要対策箇所は2,233箇所存在することを確認しております。2020年度末時点においては、約45%にあたる998箇所の対策が完了しております。
――新技術や、コスト縮減策または県独自の新技術・新材料などの活用について
曳地 施設の損傷や劣化の把握など、新技術の導入により点検の効率化や高度化を図りながら、予防保全の考え方に基づいた道路施設の維持管理に取り組んでいきます。
――橋梁の架替や大規模修繕、トンネルの点検状況、トンネルやのり面について橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください
曳地 トンネルについては、長寿命化修繕計画を策定済みです。判定区分Ⅲ(早期措置段階)箇所への対応を完了次第、予防保全型維持管理への転換を図る予定です。
のり面については、道路防災総点検や定期点検で要対策と評価された箇所を、優先度や緊急性に応じ、計画的に解消を目指しております。
――ありがとうございました