国道9号野田川橋で塩害と考えられる損傷発生
国道9号馬橋では下部工に亀甲状のひび割れが発生
――塩害、ASRによる劣化の有無と、劣化が発生している場合はその状況と対策例をお願いします
藤田 海岸線から約20mの位置に架橋されている国道9号野田川橋(1966年架設、Ⅱ判定)で、波しぶきや潮風の影響を受けた塩害によるものと考えられる損傷が発生しています。具体的な損傷は、主桁(PCプレテンT桁)のうき、ひび割れ、補修・補強材(表面保護工)の損傷で、対策を検討しています。
野田川橋の損傷
ASRについては、国道9号馬橋(1976年架設、Ⅲ判定)のP1橋脚壁部で亀甲状のひび割れが発生し、疑いありとなっています。表面被覆が実施されており、伸縮装置部からの漏水などにより橋脚天端から進入した水が躯体内に侵入し、閉じ込められたことが原因と推察されます。ただ、残存膨張量試験の結果は0.05%未満と推定され、今後、ASRによる損傷は大きく進行しないと判断しています。耐震補強工事の予定がある橋梁ですので、あわせて対策をしなければならないと考えています。
馬橋。P1橋脚に亀甲状のひび割れが発生
耐震補強対象橋梁は50橋で21橋完了
――耐震補強の進捗状況は
藤田 緊急輸送道路上で平成8年道示前の橋長15m以上の対象橋梁は50橋あります。そのうちの21橋で完了していて、進捗率は42%です。残りの29橋についても順次着手していきます。
――耐震性能3については全橋完了していますか
藤田 すべて対策済みです。
――耐震補強事例について教えてください
藤田 国道54号新井羅原橋では、橋脚RC巻き立て、フーチング増厚補強、橋台沓座拡幅、落橋防止装置と変位制限装置の設置を行いました。
新井羅原橋。対策前(左)と対策後(右)
2021年度の支承取替えは2橋で予定
鋼橋塗替えは2橋1,910㎡を予定
――支承取替えやジョイント取替えの2021年度の施工予定数は
藤田 支承取替は国道9号前川橋で施工中、国道54号潜岩大橋で予定しています。
ジョイント取替は国道54号上出来山橋で実施する予定です。
――2021年度の鋼橋塗替え予定は。また、塗替え時における溶射などの新しい重防食の採用の有無、有害物質を含有する既存塗膜の処理方法について
藤田 国道54号本谷橋で920㎡、上出来山橋で990㎡を予定しています。重防食の採用事例はありませんが、検討をしていきたいと考えています。有害物質については法令に基づき処理しています。なお、PCB含有の既存塗膜を有する橋梁は管内にありません。
鋼橋塗替え事例/国道54号金丸橋(左:塗替え前/右:塗替え後)
――耐候性鋼材を採用した橋梁数と現状は
藤田 国道9号神戸橋など、管内に14橋あります。Ⅲ判定はなく、5橋で伸縮部からの漏水、スラブドレインの流末処理不良が見られることからⅡ判定となっています。
神戸橋
要対策箇所の約9割で対策済み
ダブルネットワークの確保で災害に対応
――具体的な防災対策の要対策箇所と対策事例についてお教えください
藤田 要対策箇所は157箇所となります。路線別では、国道9号が79箇所、国道54号が78箇所です。約9割の138箇所で対策済みとなっています。
対策では、落石防護柵やワイヤーネットの設置が多くなっています。
国道54号雲南市掛合町入間での高エネルギー吸収型落石防護柵の設置
――激甚化する災害に対する対応についてはどのようにお考えですか
藤田 国道9号に関しては、山陰道を早く整備してダブルネットワークを確保することが第一だと考えています。国道54号については大雪時の対応が特に重要になってきます。松江自動車道が通行止めになった時は国道54号が迂回ルートとなります。昨年度の大雪時には、松江自動車道が通行止めになった際、国道54号で大規模な車両滞留が発生する前に、国道54号の予防的通行止めを実施しました。そのような対応を行いつつ、路肩が狭いと滞留の原因になりますので、路肩拡幅や待機所の設置といったスポット的な対応を進めていかなければならないと考えています。ソフトとハードをうまく組み合わせながら、大雪に対して対処できるようにすることが必要です。
国道54号。大雪で滞留する車両
――点検でのICT活用はいかがですか
藤田 昨年度から山間部等にある橋脚高の高い橋梁でドローンを活用した点検を試行的に実施しています。今年度は、目視点検とドローンを活用した点検をうまく組み合わせて効率化できるようさらに検討していく予定です。
ドローンによる点検の試行
また、舗装の点検についても、AIを活用した画像解析技術である道路損傷検出サービス「My City Report for road managers」の導入を7月から行う予定です。
――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)