静間・仁摩道路 五十猛地区で約25万㎡の大規模盛土工
脆弱な地山の五十猛トンネルは難工事に
――静間・仁摩道路は
藤田 大田・静間道路の終点から仁摩・石見銀山IC(大田市仁摩町大国)までの延長7.9kmの道路で、2023年度の供用を目標にしています。改良工では、大田市五十猛地区で約25万㎡の大規模盛土の構築を行っています。
五十猛地区の大規模盛土工
構造物比率は50%で、橋梁がIC橋とICランプ橋を含む7橋(総延長約1km)、トンネルが2本(総延長約2.9km)となります。山陰本線を跨ぐ静間跨線橋(橋長113m、PC2径間連続ラーメン箱桁橋)が完成していて、4橋が上部工施工中、2橋が床版施工中です。
静間跨線橋
谷部を跨ぐ逢浜川橋(橋長225m、PC3径間連続ラーメン箱桁橋)は張出架設を行い、4月に閉合しました。
逢浜川橋 架設完了
逢浜川橋(大柴功治撮影)
特徴的な構造物としては、延長1,082mの五十猛トンネルが挙げられます。同トンネルは土被りが最大で約40mしかなく、全体的に土被りが薄いトンネルとなっています。岩質も安山岩や凝灰岩といった火山が噴火した昔の岩質で構成され、想定していた以上に地山状況が脆弱でした。そこで、多数の掘削補助工法を併用しながら掘削を行いました。
特に、起点側坑口付近では、泥質凝灰岩で脆弱な地山が出現し、天端や切羽崩落が発生しました。その都度、掘削補助工法や変状対策工を適用して、無事故無災害で掘削を終えることができました。
五十猛トンネル 坑口と施工状況
切羽崩落状況
――採用した補助工法と変状対策工を教えてください
藤田 補助工法では、注入式フォアポーリングや注入式長尺鋼管フォアパイリング(AGF)とともに、切羽の安定対策として鏡吹付けコンクリートや鏡ボルト工を採用しています。変状対策では、まず増しロックボルトによる対策工を行いましたが、変位の収束が確認できなかったため、切羽を止めて一次吹付けインバートの施工を行って、早期閉合を図りました。
――掘削に時間がかかったと思いますが、掘削開始と完了時期は
藤田 2018年5月から掘削を開始して、2020年3月に完了しました。延長約1kmを22カ月かけて掘削したことになります。
静間・仁摩道路 橋梁・トンネル一覧
土工部では全事業の約8割でICT施工
橋梁工事では遠隔臨場を実施
――i-Constructionの取り組みについて教えてください
藤田 土工では、全事業の約8割の工事でICT施工を行っています。UAVによる写真測量で3次元データを作成して、そのデータをもとに施工機械をコントロールしています。また、ウェアラブルカメラを活用した遠隔臨場は、事業区間のすべての橋梁で行っています。
――ICT施工の具体的な事例を教えてください
藤田 湖陵多伎道路久村地区改良第11工事の例となりますが、起工測量、掘削工(法面整形)、路体盛土工、出来形管理でICTを活用しています。UAVを用いて3次元点群測量を実施して、3次元設計データからバックホウのバケットやブルドーザーの排土板の位置・標高をリアルタイムで取得し、設計との差異をオペレーターに提供して操作をサポートしています。出来形管理では、GNSS(全球測位衛星システム)やTS(トータルステーション)で盛土高さを取得して、締固めの管理を行っています。
排土板の位置などをリアルタイムでモニターに表示した
――遠隔臨場の効果は
藤田 現場に行く時間がり短縮されますので、作業の効率化にはつながっています。ただし、現場での臨場が必要な時には出向いています。