横浜湘南道路はトンネル部が5.6kmで延長の約75%を占める
横浜国道事務所 上下部工が輻輳する栄IC・JCT(仮称) BIM/CIMを活用して施工
国土交通省
関東地方整備局
横浜国道事務所長
鈴木 祥弘 氏
塩害の影響地域に位置付けられる橋梁は35橋
西湘バイパス等で対策を実施
――塩害、ASRによる劣化の有無と、劣化が発生している場合はその状況と対策例をお願いします
鈴木 ASRが出ている橋梁はありません。塩害地域に位置付けられる橋梁は35橋で、国道1号21橋、国道16号6橋、国道357号8橋で、地区では沿岸部の横浜市、横須賀市、大磯町、二宮町、小田原市となります。損傷状況は、コンクリート橋では主桁や横桁などのコンクリート部分に塩分が原因と推定される鉄筋の腐食によるうきやひび割れ、はく離・鉄筋露出の損傷が見られています。鋼橋では、主桁、横桁などで腐食による損傷が見られています。
このため、国道1号西湘バイパスの小余綾高架橋や大磯西IC跨道橋で脱塩工法によるRC部材の塩分除去を行ったほか、断面補修や剥落防止工などを行っています。
大磯西IC跨道橋の全景と塩害対策
耐震性能2対応は対象橋梁のうち約84%で完了
ロッキング橋脚2橋の対策を進める
――橋梁の耐震補強の進捗状況は。ロッキング橋脚の進捗状況についても教えてください
鈴木 耐震補強が必要な橋梁は189橋で、落橋・倒壊を防止する対策(耐震性能3)はすべての橋梁で完了しています。大きな地震が発生しても速やかな機能回復が可能な性能を目指す対策(耐震性能2)については、震度6弱以上の地震が発生する確率が26%以上の地域に含まれる橋梁を優先して進めております。
耐震補強事例
また、対策が必要なロッキング橋脚4橋のうち、東名高速道路を跨ぐ国道16号の跨道橋2橋については2019年度に対策が完了しました。残り2橋のうち、横浜駅東口地下広場を跨ぐ国道1号新高島橋(橋長88.0m、橋梁形式2径間連続箱桁橋+単純箱桁橋、逆T式橋台、ロッキング橋脚、壁式RC橋脚)は現在施工中。東海道本線と京浜急行を跨ぐ国道1号青木橋(橋長37.5m、3径間連続鉄リベット非合成桁橋、逆T式橋台、ロッキング橋脚)は橋台剛結を予定しています。
新高島橋
青木橋
2020年度の伸縮装置交換は7橋
鋼橋塗替えは部分塗替えで対応
――支承取替えやジョイント取替えの2020年度の施工予定箇所数は
鈴木 2020年度は、伸縮装置の交換を7橋で予定しています。
――2020年度の鋼橋塗替え予定は
鈴木 予算が限られていることを踏まえ、全面塗替えではなく、橋梁ごとに必要な箇所・面積を抽出して分部塗替えで対応する方針としています。2020年度は国道1号観音橋で約2,000m2の塗替えを行っています。
鋼橋塗替え事例
――塗替え時における溶射などの新しい重防食の採用がありましたら
鈴木 現状、桁部などでの金属溶射の使用はありませんが、鋼橋構造の腐食環境が激しい桁端部、支承部や塗替えがしづらい跨線橋などにおいて、今後、耐久性の高い金属溶射の使用について検討していく予定です。
――鉛など有害物質を含有する既存塗膜の処理については
鈴木 鉛など有害物質を含有する塗装については、塗装塗替え前に成分調査を行い、鉛等有害物の含有状況を確認し、確認された場合は塗膜の除去について湿式工法などにより対応しています。
――耐候性鋼材を採用した橋梁数と現状は
鈴木 管内には7橋あり、国道246号の山間部に多くなっています。橋梁構造の安全性の観点や予防保全の観点から速やかに補修が必要な劣化や損傷はなく、ⅠまたはⅡ判定となっています。
耐候性鋼材を採用した橋梁事例
未対策の要対策箇所は33箇所
防災対策に航空レーザー計測やドローンを活用
――具体的な防災対策の要対策箇所と対策事例についてお教えください
鈴木 当事務所管内の要対策箇所は31箇所となります(2020年4月時点)。路線別では、国道1号8箇所、国道16号15箇所、国道246号8箇所です。
対策としては、のり面対策と落石対策が主なものとなっています。国道16号の横浜市金沢区能見台地先付近では、2013年度にモルタル吹付工によるのり面風化・浸食対策を行い、国道246号の足柄上郡山北町では、同年度にのり枠工(フリーフレーム工法)によるのり面崩落対策を実施しています。
防災対策事例
2020年2月5日に逗子市内の市道に面した斜面の土砂崩れにより女子高生が亡くなる痛ましい事故が発生しました。これを受けて、管内の要対策箇所を中心に緊急点検を実施しましたが、のり面崩落や落石など緊急性の高い箇所は確認されていません。しかし、このような事故を未然に防ぐため、今後も継続して防災点検箇所のカルテ点検を行い、のり面崩壊や落石など防災上危険な箇所の状況把握に務めるとともに、要対策箇所の対策工を推進していきます。
――新技術・新材料などの活用事例がありましたら
鈴木 航空レーザー計測やドローンを防災対策に活用していきます。2019年の国道1号西湘バイパスの被災では、ドローンで被災区間を撮影して施工計画検討に役立てました。また、航空レーザー計測で管内の地形の形状データを取得しましたので、今後の防災対策に活用予定です。
防災対策でドローンを活用
――ありがとうございました
(2021年3月5日掲載 聞き手=大柴功治)