横浜湘南道路はトンネル部が5.6kmで延長の約75%を占める
横浜国道事務所 上下部工が輻輳する栄IC・JCT(仮称) BIM/CIMを活用して施工
国土交通省
関東地方整備局
横浜国道事務所長
鈴木 祥弘 氏
385橋、25トンネルを管理
橋梁延長は約42km トンネル延長は約4km
――保全について。管内橋梁の内訳からお願いします
鈴木 385橋(総延長約42km)を管理していて、コンクリート橋194橋(約50%)、鋼橋171橋(約44%)、コンクリートと鋼橋の複合橋20橋(約6%)です。供用年次別では、完成後50年未満が187橋(約49%)、50年以上が169橋(約44%)、その他建設年次不明が29橋(約7%)となります。完成後50年以上の橋梁割合は全国平均約23%ですので、管内の橋梁は老朽化が大きく進んでいる状況と言えます。
延長別では、5m未満66橋(約17%)、5~15m未満81橋(約21%)、15~50m未満117橋(約30%)、50~200m未満62橋(約16%)、200~500m未満47橋(約12%)、500~1,000m未満5橋(約1%)、1,000m以上7橋(約3%)で、50m未満の橋梁が約7割を占めています。
路線別では、国道1号105橋(約27%)、国道15号12橋(約3%)、国道16号66橋(約17%)、国道246号170橋(約44%)、国道357号31橋(約8%)、国道409号1橋(約1%)で、国道15・16・357・409号といった都心部のみを通過する路線は橋梁数が比較的少なくなっています。
橋梁内訳
――トンネルについては
鈴木 管理トンネルは25トンネル(総延長3,992m)で、在来工法24トンネル(約96%)、NATM工法1トンネル(約4%)です。路線が山岳地帯を通過する国道16号横須賀地区と国道246号山北地区に集中していて、国道16号が18トンネル(在来工法18)、国道246号が7トンネル(在来工法6、NATM工法1)となっています。
供用年次別では、完成後50年未満が4トンネル(約16%)、50年以上が21トンネル(約84%)です。国道16号横須賀地区には旧日本海軍が掘ったトンネルが多く、50年以上の割合が高くなっていて、在来工法18トンネルのうち、17トンネルが完成後50年以上経過しています。
延長別では、50m未満1トンネル(約4%)、50~100m未満2トンネル(約8%)、100~250m未満19トンネル(約76%)、250~350m未満3トンネル(約12%)となります。
トンネル内訳
橋梁 ⅢⅣ判定は約18%
1トンネルがⅢ判定
――橋梁とトンネルの定期点検結果をお教えください
鈴木 橋梁については、Ⅰ判定138橋(約36%)、Ⅱ判定179橋(約46%)、Ⅲ判定66橋(約17%)、Ⅳ判定2橋(約1%)です。Ⅲ・Ⅳ判定の路線別橋梁数では、国道1号30橋(約45%。路線別橋梁数に占めるⅢ・Ⅳ判定橋梁数の割合)、国道15号1橋(約1%)、国道16号11橋(約16%)、国道246号24橋(約36%)、国道357号1橋(約1%)、国道409号1橋(1%)となっています。
トンネルは、Ⅱ判定24トンネル(約96%)、Ⅲ判定1トンネル(約4%)で、Ⅰ・Ⅳ判定はありませんでした。路線別では、国道16号の18トンネルすべてがⅡ判定、国道246号はⅡ判定6トンネル、Ⅲ判定1トンネルとなります。
――Ⅳ判定となった2橋の詳細は
鈴木 1橋は、小田原市内の森戸川に架かる国道1号親木橋(下り拡幅)で、橋長19.2m(単径間)の歩行者用側道橋です。2019年の台風19号による森戸川の氾濫危険水位を超える増水および高波で支承から主桁が車道部側に逸脱し、Ⅳ判定となりました。
応急措置として既設ブラケットを利用して桁を固定し、現在は支承の交換と支承が逸脱した際に曲がった横構などの交換を行っています。
親木橋の損傷状況と応急処理状況
もう1橋は、横浜市緑区にある国道246号恩田陸橋側道橋です。県道川崎町田線と交差する恩田陸橋の下り線側歩行者用橋梁で、橋長は8.5m(単径間)となります。県道川崎町田線を通行する車両が同橋に接触し、主桁等が損傷してⅣ判定となりました。応急措置として主桁を固定し、現在は架替えを行っています。
恩田陸橋側道橋の損傷状況
――点検を進めての橋梁の全体的な損傷状況について
鈴木 Ⅲ判定となった66橋の内訳は、鋼橋38橋、RC橋(溝橋を含む)12橋、PC橋7橋、複合橋9橋です。主部材の損傷としては、主桁や横桁、排水管などの鋼製部では腐食が目立ち、RC床版、橋台、地覆などのコンクリート部では剥離・鉄筋露出の損傷、また橋梁全体として伸縮装置の劣化などの損傷が目立っています。
――トンネルでは
鈴木 Ⅱ・Ⅲ判定のトンネルではいずれも覆工コンクリートの劣化が確認されています。うき・漏水によるものが多く、大半が経年劣化によるものと推定されます。
判定区分では評価されませんが、漏水にともない照明施設や支持金具、電話ボックスなどの付属施設が腐食している事例も見られています。
トンネルの損傷事例 16号新船越トンネル 覆工表面の破損(左)
16号富岡トンネル うき(中央)/16号田浦トンネル 照明支持金具の腐食(右)
Ⅲ判定の国道246号諸淵トンネル PCL工法で補修・補強
――Ⅲ判定となった1トンネルは
鈴木 山北町にある国道246号諸淵トンネル(延長234m)です。1974年完成でまだ50年未満ですが、2016年度の点検で、トンネル上面の大きな土圧(外力)による変状の進行が原因と想定されるひび割れ段差の損傷が山側側壁部の一部で確認されました。本トンネルの補修工事は2019年度に完了しています。
諸淵トンネルの変状
――どのような補修を行ったのでしょうか
鈴木 PCL(プレキャストコンクリートライニング)工法を採用して施工しました。同工法は、高強度のプレキャストコンクリート覆工版をトンネルの上半に2分割して組立て据付けることにより既設トンネルの補修・補強を行うものです。国道246号は交通量が多く、車線規制による一般交通への影響が懸念されたことから、専門の据付機械を使用することにより工期および交通規制期間の削減が期待される本工法を採用しました。本工法では、補強部材を工場で製作するため、品質の向上および耐候性、耐凍結融解性などの耐久性も期待されます。
諸淵トンネルでの対策工
――諸淵トンネル以外の補修・補強事例がありましたら>
鈴木 2020年度に、Ⅱ判定と評価されている国道16号の長浦トンネル、吉浦トンネル、浦郷トンネルではく落防止工、導水樋設置工などの対策を行いました。
長浦トンネルと吉浦トンネルの対策工
2020年度は19橋のⅢ判定橋梁の補修工事を実施予定
――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況は
鈴木 一巡目点検におけるⅢ判定の橋梁51橋のうち、補修が完了していない橋梁は47橋です。2020年度はこのうちの19橋について補修を行う予定です。残る橋梁ついても、現場状況や実施計画を考慮して引き続き順次補修を行っていきます。
――Ⅲ判定の橋梁の具体的な損傷状況と対策をお教えください
鈴木 国道1号箱根新道白金橋(橋長25.8m)は2018年度の点検で、横桁部分のコンクリートにうきが生じていることからⅢ判定となりました。2020年度内にうき部分の断面修復の工事に着手する予定です。
白金橋(左)と八倉橋(右)の損傷状況
また、国道16号八倉橋(橋長10.0m)は、竪壁部分のはく離・鉄筋露出などが生じていることから2019年度にⅢ判定とされました。2020年からはく離・鉄筋露出部の断面修復などに着手しています。
浮島橋の損傷状況
――上部工補修・補強の過去3年間の実績は
鈴木 過去3年に4橋の上部工補修・補強工事を実施しています。
――床版防水の施工状況は
鈴木 舗装修繕、床版補修にあわせて橋面防水を行っていく予定です。車道部はシート系、歩道部は塗膜系の採用を予定しています。