道路構造物ジャーナルNET

工程短縮とコンクリートの品質確保に取り組む

国土交通省三陸国道事務所 復興道路・復興支援道路事業が大詰めに

国土交通省
東北地方整備局
三陸国道事務所長

髙松 昭浩

公開日:2020.09.30

1巡目の定期点検で修繕が必要な橋梁は38橋
 修繕完了の橋梁は15橋で進捗率39%

 ――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況は
 髙松 2014(平成26)年度~2018(平成30)年度の5カ年に点検した橋梁のうち、修繕が必要な橋梁は38橋、設計を含む修繕に着手した橋梁が38橋中31橋(進捗率82%)、着工済みの橋梁が38橋中18橋(進捗率47%)、完了済みの橋梁が38橋中15橋(進捗率39%)です。


橋梁長寿命化計画の対策進捗状況

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強の過去3年間の実績を教えてください
 髙松 2017年度には4橋で補修・補強工事を実施しています。国道45号現道の桑畑橋(鋼橋)では、床版断面修復工、上部工溶接補修工、塗装塗替え工を行いました。2018年度は、国道45号現道の浪板橋(PC橋)で上部工断面修復工、表面含浸工を行ったほか、合計5橋で実施しています2019年度は7橋で補修工事を施工し、6橋が施工中となっています。国道45号現道の才の神橋では、上部工・床版・地覆断面修復工を実施しています。


過去3年間の上部工補修履歴

 ――床版防水工の施工状況と今後の施工方針や採用する工法について
 髙松 防水工が施工されていない橋梁は79橋(不明の9橋含む)で、すべて現道となっています。その内訳は、本線橋43橋、側歩道橋36橋です。本線橋はすべてコンクリート床版で、側歩道橋のほとんどがデッキプレートとなっています。


防水工未設置橋梁の割合(左:本線橋・側歩道橋別/右:橋種別)

 来年度以降、三沿道の全線開通によって現道の交通が大きく転換することから、計画的な集中工事が可能と考えています。例えば、一定区間を通行止めにしたうえで、コスト縮減にもつながり工程短縮を含めた施工性や、不要な施工目地をつくらず防水機能を確保する品質確保を両立させた発注方式により、防水工を設置することも想定しています。
 工法では、ひび割れの発生や開閉に対する追従性、舗装施工時の転圧力や輪荷重で破れないこと、接着性、冬期施工でも品質確保できるなどの施工の確実性から、シート防水の流し貼り型を多く採用しています。
 ――塩害やASRなどによる劣化は発生していますでしょうか
 髙松 塩害は凍結抑制剤の散布が原因と推察されものがほとんどで、支承や防護柵、伸縮装置、桁の腐食などが散見されています。ASRによる劣化の報告はありません。

耐震性能2を満足していない15m以上の本線橋は7橋
 そのうち3橋は今年度内に対策完了予定

 ――耐震補強の進捗状況は
 髙松 H24道示で耐震性能2を満足していない15m以上の本線橋は7橋あり、それ以外は対策が完了しています。管理橋梁286橋に対する進捗率は97.6%です。未対策橋梁のうち、今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以上の地域にある橋梁が3橋あり、いずれも今年度内の対策完了を目指して施工中です。26%未満の地域にある未対策橋梁は4橋で、今後施工する予定です。


耐震補強の進捗状況と対策事例

 ――具体的な対策方法は
 髙松 RCや炭素繊維による橋脚巻立てや、落橋防止構造の構築などを行っています。
 ――支承や伸縮装置の今年度の取替え予定は
 髙松 支承取替えは3橋、伸縮装置取替えは6橋で予定しています。
 ――今年度の鋼橋塗替え予定と、PCB、鉛などの有害物を含有する既存塗膜の剥離・処理をどのようにされているか教えてください
 髙松 国道45号現道の嬉石橋で1,930m2、同・片岸橋側歩道橋で140m2を予定しています。嬉石橋では低濃度のPCBが、片岸橋側歩道橋では鉛が含まれていることから湿式塗膜剥離剤を使用して施工する予定です。ケレンダストは処分場に運搬し処分します。
 ――耐候性鋼材を採用した橋梁数と健全度は
 髙松 10橋で採用していて、C2判定(橋梁構造の安全性の観点から、速やかに補修等を行う必要がある)が1橋、C1(予防保全の観点から、速やかに補修等を行う必要がある)が7橋、M(維持工事で対応する必要がある)が1橋、B(状況に応じて補修を行う必要がある)が1橋となっています。C2の橋梁は、建設後22年が経過している三沿道(山田道路)の関谷高架橋で補修は完了しています。C1の橋梁については未対策です。


耐候性鋼材の健全度判定区分と損傷状況

 ――損傷原因と主な対策方法は
 髙松 橋面防水工からの排水ドレーンに導水管がなく、塩分を含んだ橋面水が主桁に飛散したことが要因と推察されます。錆の撤去や水洗いとあわせて、導水管の設置などの局所的な対応を行う考えです。
 ――大規模災害が多発しているなかで、防災に対するお考えを聞かせてください
 髙松 リアス式地形のため、切り立った箇所やのり面対策をしている箇所が相当数あり、点検箇所としてものり面が非常に多くなっています。それらの対策をしっかり行っていくことが肝要だと考えています。
 ――管内の要対策箇所数と対策事例は
 髙松 2019年度の防災点検の結果、防災点検箇所は691箇所あり、そのうち要対策箇所が132箇所(19%)、カルテ対応箇所が559箇所(81%)となっています。また、691箇所のうち、落石・崩落が295箇所と半数近くを占めています。


防災点検の状況、および要対策箇所の内訳と対策事例

 要対策箇所の中には昨年の台風19号による被災箇所が含まれているため、これらの箇所の復旧工事を先行して施工しています。被災箇所は、道路盛土または切土ののり面崩壊がほとんどですので、植生工やカゴ枠工、吹付のり枠工などののり面保護工により施工しています。
 ――ありがとうございました
(2020年9月30日掲載 聞き手=大柴功治)

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