道路構造物ジャーナルNET

工程短縮とコンクリートの品質確保に取り組む

国土交通省三陸国道事務所 復興道路・復興支援道路事業が大詰めに

国土交通省
東北地方整備局
三陸国道事務所長

髙松 昭浩

公開日:2020.09.30

橋梁286橋、トンネル59本を管理
 開通後50年以上経過した橋梁は25%

 ――保全について。全体方針をお願いします
 髙松 長寿命化計画をしっかりと策定して、対策を進めていくことが重要です。定期点検の結果、現在、判定区分ⅡとⅢがかなり多くなってきています。判定区分Ⅲの構造物について重点的に対策を進めていますが、予算的にも追いついていないのが現状です。
 復興事業が大詰めを迎えて、今後は当事務所の事業も保全分野へシフトしていくと考えています。同時に、三沿道の全線開通などにより管理延長が増えますので、省力化や効率化を考えていかないと管理が難しくなります。そのため、点検でのドローンやレーザー試験などの新技術の活用も検討しています。
 ――管理橋梁の内訳は
 髙松 管理橋梁は286橋です。橋種別ではコンクリート橋が53%、鋼橋が45%、混合橋(*)が2%と若干コンクリート橋が多くなっています。開通年別では50年以上が25%を占め、高齢化が進んでいると言えます。最も古い橋梁は大船渡市にある国道45号現道・浦浜橋(橋長18.9m)で開通後67年が経過しています。20年未満は30%で、三沿道および東北横断道釜石秋田線の整備によるものです。延長別では500m以上が4橋あり、最長は国道45号現道の釜石高架橋の681mとなります。路線別では、国道45号現道が214橋と75%を占めています。
*混合橋――ここでは、多径間の橋梁で鋼桁とコンクリート桁が混在する橋梁のことを示す
※橋梁数およびトンネル本数、そのうち内訳、点検結果などは、2020年4月時点


橋種別橋梁割合と管内の主な橋梁

開通年別橋梁割合と数

延長別橋梁数と路線別橋梁割合

 ――管理されているトンネルは
 髙松 59本を管理しており、工種別ではNATM工法が58%、矢板工法が42%となります。開通年別では50年以上が11本あり、19%を占めています。大船渡市にある国道45号現道・三陸トンネル(延長476m)が最も古いトンネルで59年経過しています。20年未満は42%です。延長別では、1,000m以上2,000m未満のものが12本(20%)と一番多く、1,000m以上のほとんどが三沿道および東北横断道釜石秋田線のものです。最長は釜石市と住田町にまたがる東北横断道釜石秋田線・新仙人トンネルの4,491.5mです。整備中のトンネルで新仙人トンネルより長いものはありませんが、1,000m以上のものは13本あります(開通済みの宮古西道路を含む)。路線別では、国道45号現道28本、三沿道26本、東北横断道釜石秋田線5本となっています。


工法別トンネル数/開通年別トンネル割合と数

延長別トンネル数と路線別トンネル数

Ⅲ判定は橋梁で10%、トンネルで24%
 コンクリート橋よりも鋼橋で損傷が多く発生

 ――橋梁とトンネルの定期点検結果を教えてください
 髙松 橋梁ではⅡ判定が48%と一番多く、次いでⅠが42%、Ⅲが10%です。トンネルはⅡが59%、Ⅲが24%、Ⅰが17%でした。


橋梁とトンネルの健全度判定区分割合

 ――橋種別および部位ごとの損傷傾向は
 髙松 橋種別では、鋼橋(128橋)のⅠ判定が30%、Ⅱが53%、Ⅲが17%であるのに対して、コンクリート橋ではⅠが51%、Ⅱが42%、Ⅲが7%となっており、鋼橋に比較してコンクリート橋のほうが健全度が高いと言えます。


橋種別健全度判定区分割合

 部位別の主桁では、C1またはC2判定の部材がある橋梁は鋼橋が62%と多くなっています(PC橋は28%、RC橋は6%、混合橋は4%)。これは国道45号現道が海岸線に近いため、海からの飛来塩分の影響を受けやすいことや、降雪量は少ないものの冬期間には凍結抑制剤を散布することから、その影響により鋼材の腐食が発生していると考えています。
 床版においてもC1またはC2判定の部材がある橋梁は鋼橋が約7割を占めています。主桁間隔がコンクリート橋よりも広い鋼橋が多いため、疲労の影響を受けやすく損傷が進行しているものと推察されます。
 橋脚では橋種間で著しい違いは見られず、損傷内容としては橋脚付け根部の鉄筋露出や竪壁の断面欠損による鉄筋露出などがあります。地覆においてC1またはC2判定の部材がある橋梁は、鋼橋63%、PC橋25%、混合橋12%となっており、鉄筋露出や断面欠損などが見られています。


主桁の損傷状況

床版の損傷状況

橋脚の損傷状況

 ――部位ごとのおもな対策は
 髙松 鋼桁では塗替えおよび断面欠損部分の当て板補強を行っています。床版は上面増厚もしくは部分打換え、橋脚は防錆処理及び断面修復です。
 ――トンネルの損傷状況は
 髙松 Ⅰ判定10本はすべてNATM工法によるものとなっています。Ⅱは35本のうちNATM工法が22本、Ⅲは14本のうち12本が矢板工法です。Ⅲ判定のトンネルのうち、覆工の材質劣化のみが6本、漏水のみが6本、覆工の材質劣化と漏水の両方が見られているものが国道45号現道・水海トンネル(完成後51年経過)と同・摂待トンネル(完成後49年経過)の2本となっています。外力によってⅢになっているトンネルはありません。NATM工法でⅢとなっている2本はいずれも材質劣化でⅢとなっているのに対して、矢板工法でⅢになっている12本のうち、7本が漏水でⅢとなっています。
 矢板工法のトンネルでは、覆工背面の空洞があるトンネルもあり、補修工事を行っているところです。


トンネルの損傷状況

 ――損傷原因として推察されることは
 髙松 乾燥収縮などの拘束によりひび割れが発生して、そこからの漏水が多くなっています。国道45号現道は一次改築も含めて、延長200~300mのトンネルが主体で、外気の寒暖差の影響を受けていることが考えられます。
 ――覆工背面空洞注入を行っているトンネルは
 髙松 延長の長いトンネルでは、1,351mの国道45号・石塚トンネルがあり、無収縮モルタルで充填を行っています。トンネル延長が長いので区間を分けて順次施工しています。

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