保全分野を中心とした事業拡大と地方自治体への貢献に取り組む
IHIインフラ建設 森内昭新社長インタビュー
株式会社IHIインフラ建設
代表取締役社長
森内 昭 氏
中期的には保全分野が橋梁部門売上高の6~7割に
――直近の業績は
森内 昨年度の全体売上高は248億円でした。そのうち、橋梁部門の売上高は180億円で保全分野が84億円となっています。
――3年前は、橋梁部門が約120億円で、大規模更新を含めた保全分野が約30億円と伺いましたので、大幅な増加ですね。さらに現在、保全分野は橋梁部門の売上高の半分近くを占めるまでに至っています。中期的にはどのようにお考えですか
森内 安定して全体売上高で300億円は確保したいと思います。具体的には、水門部門で80~100億円、橋梁部門で200~220億円です。橋梁部門では、保全分野が5割を超えるのは当然のことだと考えています。しかし、技術者を育て、技術力を維持していくためにも新設分野の受注を一定量確保していくことも重要です。現在の半分の売上高になってしまうのは良い状況と言えません。保全分野が橋梁部門売上高の6~7割を占めるイメージを持っています。
――グループ会社との連携についてはどのようにお考えですか
森内 IISとは、保全工事への一体の取組、技術者の交流、研究開発での連携に取組んでいます。保全工事では、JVを組んでさまざまな工事を一緒に行っています。もうすぐ終わりますが、首都高速道路で鋼橋の補強・補修を2工事(IISが親)行っています。鋼橋新設の技術はIISになりますので、学ばせてもらって補修・補強工事に活かしています。
床版取替工事では、当社が親となってNEXCO中日本の小田原厚木道路川端高架橋床版取替工事を基本契約で実施しています。今後、協力関係を強化し、さらに保全分野を伸ばしていきたいと考えています。
IHI建材工業(IKK)とは、德山前社長がIKKの社長に就任したこともありますので、さらにプレキャスト製品の製作に関して連携を進めていきたいと考えています。
NEXCO中日本 小田原厚木道路
(左)川端高架橋床版取替工事/(右)風祭高架橋床版取替工事(弊サイト掲載済み)
新型継手「VanLoc」で工期短縮を図る
床版取替機・ISパネル 空間のない箇所での床版取替・補強工事に対応
――技術開発の取組みは
森内 床版取替での合理化、省力化に取り組んでいます。各社さんも取り組んでいますが、新たな継手の開発や、床版取替機の改良を進めています。昨年10月には「VanLoc(Variable axial-force network Loc)」という新型継手を発表しました。
新型継手の「VanLoc」
――NejiLawさんとの共同開発とのことですが、その特徴は
森内 施工性です。床版連結と床版の位置ズレの矯正をボルト1本締めるだけの作業で行うことができます。間詰部の配筋とコンクリート打設も不要のため、約20%の工期短縮が可能です。
――現在の状況は
森内 載荷試験を実施していて、量産化に向けた検討も開始しています。
――実用化の目途は
森内 来年度の工事に適用したいと考えています。
――NejiLawさんとはどのような経緯で共同開発を
森内 IHIグループでは以前からお付き合いがあり、首都高速道路の裏面吸音板などを一緒に開発しています。「VanLoc」もその流れのひとつです。
――床版取替機(右写真。弊サイト掲載済み)は、昨年のNEXCO中日本小田原厚木道路の風祭高架橋床版取替工事で本施工として初採用されました。その後、どのような改良をされているのでしょうか
森内 軽量化と空間的に狭い箇所に対応できるように改良を進めています。今後、都市部の床版取替工事が増加してくると思います。作業空間が狭い箇所の施工ではどのような機材が必要なのかを検討し、当社が提供できるメニューを増やしていきます。その点では、ISパネルも同様です。
――ISパネルは名古屋高速道路・高速1号楠線の新川中橋工区床版等修繕工事で採用されていましたが、展開状況は
森内 都心部では空間的に床版取替工事が困難なところもあります。そのような箇所では、交通規制を行うことなく、コンクリート床版を主桁から軽量な鋼床版で支持することで床版補強が可能なISパネルは、有効な工法のひとつと考えています。しかし、ISパネルを設置することによりその内部が見えなくなることや、水の染み込みで錆の発生が懸念されています。それらをどのように改良していくかを現在検討しています。
ISパネル (左)施工前/(右)施工後
――新規の技術開発では
森内 PC橋の新設では、BIM/CIMの活用を進めています。国道9号湖陵多伎道路・多伎PC上部工事ではBIM/CIMをベースにICTを連携しました。内容についてはMR技術、トータルステーション技術です。従来は、設計段階でのシミュレーションや干渉チェックに3Dを活用していましたが、今回は監理技術者が工程の管理も含めた、4Dに取り組みました。
BIM/CIM活用を推進。4Dでの工程管理にも取り組んだ
多伎PC橋(施工中と完成写真)
さらに、国道158号大野油坂道路・九頭竜川橋では、BIM/CIMモデルとICT技術を連携させデジタルツインを活用することで生産性向上と品質管理の高度化に取り組みました。具体的には、①建設機械の4Dシステムによる取り組み、②UAV撮影写真による配筋検査、③MR技術による型枠・出来形検査の3項目について実施しました。
九頭竜川橋での取り組み事例
九頭竜川橋(施工中と完成写真)
また、NEXCO中日本のトラス橋の補強工事を行っていますが、そのモニタリングの検討を行っています。システムとしてはさまざまな既存の計測システムがありますので、それを活用したモニタリングを行って、応力状態などを調査する予定です。具体的には、既設橋梁が設計どおりの挙動をするか、補強工事や床版取替工事において設計で想定した挙動をするか、を調べていきたいと考えています。
昨年10月にNETIS登録された「透明ボルトアイキャップ」(KT-190082-A)もおかげさまで好評です。キャップを透明化することによって、キャップを取り外すことなくボルトの表面状態を確認できるため、維持管理業務の省力化が図れます。
透明ボルトアイキャップ
水門分野では、「GBRAIN」という点検サポートシステムがありますが、それをさらに改良して点検・診断や補修工事の省力化を目指します。