折木川橋 管内最長の711.5m 送出し中心に架設
P7~A1はP7~P8を仮組ヤードにして施工 降下量を半減
――鋼桁の特徴的な上部工は
小林 折木川橋です。同橋は、橋長711.5mと管内で最も長く、上部工形式は鋼12径間連続非合成2主鈑桁橋を採用しています。架設は、A1~P7間をP7からA1方向に送出し(送り出し量426m、送り出し勾配0.3%、手延べ機48m)、P10~A2間をA2からP10方向に送出し(送り出し量156m、手延べ機48m)、P7~P10間をトラッククレーン+ベントで施工しました。Ⅰ期線は時間があったので、片側からの送り出しだったのですが、今回は全体の工期が2020年度末と短いため、送出し範囲を2箇所とする事で工程短縮を図りました。
現場は冬場の風に苦労しました。そのため風対策として、東京スカイツリーでも使用したスカイジャスターを採用しました。荷揚げ中の桁の回転を制御する装置で多少風が強い場合でも荷揚げが可能となります(大林組)。加えて、風の情報をピンポイントで職員のスマートフォンに送信して管理しました。また、近接するⅠ期線への対策としては、他の橋梁と同様レザーバリアを使用しています。
施工は、P7~P8間をヤード(仮桁を低い位置に設置)にして、同径間に桁を上げて1径間(長いところで64m)ごとに地組して送出していく工程を重ねました。桁吊上げ用に550tオールテレーンクレーン(2ブロックでの吊上げも)を用いています。
計画ではA1からの送り出しで送出し後の桁の降下量は4.9mに達する予定でした。しかし、A1橋台の構築が遅れたことから、P7~P8径間からの送り出しに変更、結果として2.2mの降下量におさえることができました。
A2~P10間はA2の背面をヤードにして送出しました。桁はⅠ期線から渡り線でⅡ期線側に搬入し、A2背面で地組しました。桁の降下量は5.1mに達します。
手順としては、最初に県道上のP9~P10間をクレーン+ベントで架設し、P7~A1架設に着手→その後、A2~P10を施工しました。送り出しは一部、同時に動いた時期もあります。最後は、送り出し桁の降下完了後にP9~P7間をクレーン+ベントで架設し、閉合しました。
現在は桁架設が完了してベントを解体し、プレキャストPC床版の架設を行っています。
A1手前で手延べ桁を解体撤去 残り3ブロックを360tTCで架設
反力管理に注意 100mm横ずれすれば修正
――施工上の難点とその工夫による打開は
小林 各橋脚に送出し装置を設置(ジャッキで受けて、1m出して受け替えを繰り返し)して施工しました。P7~P8は前方台車(120t×2台)と後方台車(100t)を設置して、最初の径間を送出しました。橋脚には送り出し装置があるので3支点になり、その後、送り出し装置は増えていきます。最後は手延べ機がA1を超えられないため、A1手前で手延べ機を解体撤去して、残り3ブロックはA1側から360tトラッククレーンで架設しました。
大変だったのは各支点の反力管理です。P7~P8のヤード上に計測室を設置して、反力と桁の方向を管理しました。横方向100mmずれれば、送出し装置で修正できるようにしました。P7~A1の平面線形は一定曲線(R=2600)ですが、A2側はクロソイド曲線となっています。ただ、A2側は2径間だったので、1径間に到達したらそこで調整ができました。ジャッキは大瀧ジャッキを採用しています。プレキャスト床版は富士ピー・エスのいわき工場で壁高欄と一体で製作したものを採用しています。壁高欄を含めた1ブロックは約20tです。吊上げは350tクローラークレーンと300tのオールテレーンクレーンを使っています。積み重ねができず、トレーラー1台で1ブロックを運ぶ必要があり。近い工場での製作を選択しました。
折木川橋の桁架設
床版架設は野田クレーンの架設機を使用しました。壁高欄一体なので架設機を改造しています。
折木川橋の床版架設(大規模更新で用いているような架設機械だ)/下から見た折木川橋
小久川橋、大久川橋では、PRC連続箱桁橋に変更
浅見川橋は起点側3径間について鋼箱桁から、2主鈑桁に変更
――他にⅠ期線側と変えた箇所は
小林 小久川橋、大久川橋では、PRC連続箱桁橋に変更しています。維持管理性、経済性の比較により、連続箱桁を採用しています。
小久川橋の空撮及び張出し状況写真
小久川橋現況写真/大久川橋空撮写真
大久川橋張出し状況写真
浅見川橋(橋長607.5m、鋼3径間連続2主鈑桁+鋼3径間連続細幅箱桁+鋼6径間連続2主鈑桁)は、施工性及び構造性の比較により、起点側3径間について鋼箱桁から、2主鈑桁に変更しました。終点側2主鈑桁区間についても複合ラーメン構造から支承構造に変更しました。
浅見川橋のクレーン及び送出し架設
ほかの橋梁はスパン割を変えただけで形式変更は特にありません。
――桁の架設方法は
小林 おおむねPCは張出し施工、鋼橋はクレーンと送出し(折木川橋、浅見川橋、北迫川橋を用いています。北迫川橋は両方を同時に施工し、PCの張出し後に手延べ桁を到達させ、鋼桁を降下させて架設しました。現在は床版工を施工しています。
工期短縮を企図し、プレキャストPC床版を採用した橋も
5橋で合成床版を採用
――合成床版やプレキャストPC床版の採用は
小林 北迫川橋の鋼橋区間、浅見川橋、日渡川橋、末続川橋、小名入川橋は合成床版を採用し、折木川橋はプレキャストPC床版を採用しています。
日渡川橋の桁架設状況/浅見川橋の床版打設
――以前、田子前所長は、折木川橋は現場打PC床版を使うと言われていましたが
小林 当初はそうでしたが、工期短縮効果を考慮してプレキャストPC床版に変更しました。
折木川橋のプレキャストPC床版架設状況
――現場打PC床版やプレキャストPC床版の施工について工夫したことは
小林 基本的には早強ポルトランドセメントを用いて強度50N/㎟のコンクリートを用いました。プレキャストPC床版の継手はループ継手を採用しています。プレキャストPC床版の厚さは主桁間隔を含めた経済性から310mmとしています。
床版防水 BLGを下小川橋で施工
施工性や耐久性などを確認
――床版防水におけるBLGの採用について
小林 試験練りと現場施工を7月上旬に行う予定でしたが、降り続いた雨の影響で7月中の施工は断念し、8月5~7日にクッカー車4台とフィニッシャ1台を用いて施工しました。新設橋1橋を3.5mのフィニッシャの幅で施工しようとすると3往復ほどが必要です。そうすると1日450㎡程度しか施工できないため、本当に工程の短縮につながるのか、今回試験施工する結果を踏まえて、全橋梁へ適用するか判断します。今回対象となる橋梁は、下小川橋(橋長129m)でフジタ道路が施工しました。
BLGの施工状況① クッカー車/プライマー塗布状況
通常の高性能床版防水とは異なり、BLGは舗装のレベリング層分の厚さ(40mm)を舗設します。
BLGの施工状況② レベリング層の舗設状況
BLGを含めて防水工は夏から冬の入り口にかけて床版防水は施工していく予定です。
BLGの主たる適用範囲である管理の方は、基層を施工した後に、1日か2日で表層をかけます。しかし新設の場合は、表層を後で一気にかけるため、基層は施工したまま、2~3カ月放置したままとなるため、雨や紫外線の影響でその間に変状を起こす可能性もあります。そこが不安ですので、確認していきます。
BLGの施工状況③ 端部の舗設状況/レベリング層が完了した状態
――橋梁の防食については
小林 鋼橋についてはふっ素樹脂系の重防食塗装を施しています。金属溶射は使用していません。桁端部は漏水の影響を受ける箇所や桁下空間が低い箇所に増し塗り塗装を行います。
コンクリート桁については桁端部の漏水の影響を受ける箇所に表面被覆を施します。
壁高欄のVカット目地部の鉄筋にエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用しています。
――ありがとうございました
(2020年8月21日掲載)