いわき工事事務所は、常磐自動車道の暫定2車線区間のうちいわき中央IC~広野IC間約27kmの4車線化事業などを復興創生期間内の2020年度内の完成を目標に進めており、下部工はすべて完了、トンネルも全て貫通済みで覆工コンクリートの施工もほぼ完了した。現在は上部工の施工と舗装の敷設を進めている。事業の現状と特徴について、小林克久所長に聞いた。(井手迫瑞樹)
建設中橋梁一覧(東日本高速道路東北支社いわき工事事務所提供、以下注釈無きは同)
常磐道の4車線化事業延長は26.6km
橋梁区間は6,144m、トンネル区間は1,762m
――管内の事業概要から
小林所長 当工事事務所の所管する事業は、常磐道いわき中央IC~広野IC間の4車線化工事26.6kmと常磐道広野IC~浪江IC間、富岡工区付加車線3.1km(ならはスマートIC~常磐富岡IC間)、常磐道広野工区付加車線 1.2km(広野IC~ならはスマートIC間)です。
構造物の数および延長は、トンネルが2本で1,762m(6.6%)、橋梁が22橋で6,144m(23.1%)、 土工が18,694m で(70.3%)、合計26,600mです。構造物延長は全体の約3割で、相対的に高い区間となっております。
4車線化事業以外に、ならはSIC、大熊IC、常磐双葉ICの新設、広野IC付近延長1.2kmとならはSICの北3km付近の富岡工区延長3.1km、常磐双葉IC付近延長2.4kmの付加車線事業も行っています。
――小名浜道路の一部事業は
小林 小名浜道路全長約8.3kmのうち、福島県からの受託事業として、延長約2.5kmの施工を行っています。区間は(仮称)添野IC~(仮称)山田ICです。
※小名浜道路の構造物、施設名称は全て仮称です(以下、(仮称)を非表示)
――構造物は
小林 本線としては5、6号橋の2橋があります。添野ICに接続するランプ橋として11号橋、いわき小名浜ICに接続するランプ橋としていわき小名浜IC橋もあり、全部で4橋を予定しています。
いわき小名浜5号橋は架設を完了しています。6号橋(小名浜跨道橋)は下部工もこれからです。11号橋は下部工をほぼ完了しており、上部工に入っていきます。橋種は5号橋が橋長213mの3径間連続PCラーメン箱桁橋、小名浜跨道橋は橋長294mの鋼6径間連続非合成鈑桁橋、11号橋は橋長139mの5径間連続プレビーム合成桁橋です。その他いわき小名浜IC橋(橋長105m、鋼2径間連続非合成細幅箱桁橋)がありますが、これは未着手です。
――小名浜跨道橋、いわき小名浜IC橋の架設方法は
小林 小名浜跨道橋は、トラッククレーン+ベントと一部で送り出し工法を実施します。いわき小名浜IC橋はトラッククレーン+ベントと大型クレーンによる一括架設を併用する予定です。
――11号橋はプレブーム合成桁としてはかなりの長さですが、その意図は
小林 ICから現道に取りつく橋であり、桁高を抑える必要があり、福島県が採用したものです。
――4車線化事業の進捗状況は
小林 橋梁下部工が全数を完了しています。上部工も夏ないし初秋までには完成予定で、順次舗装へ引き渡していきます。
舗装も並行して進んでいる
橋梁は、杉内川橋(橋長37m)を除く全てが100m以上の長大橋です。理由としては路線自体が山側に位置していることがあります。折木川橋のP9橋脚が最高で高さは48mに達します。主な構造物としては、好間トンネル(1,236m)、大久トンネル(526m)、折木川橋(管内最長の711m)、北迫(きたば)川橋などがあります。
架設中の高倉川橋/袖玉山川橋
架設中の白岩川橋
――付加車線事業の進捗状況は
小林 広野IC~山元IC間に6箇所の付加車線設置事業があり、内3箇所がいわき工事事務所、残りの3箇所がいわき管理事務所で施工しています。
常磐双葉IC前後の付加車線は、今年3月7日の常磐自動車道常磐双葉ICのオープンに合わせて供用済みです。残りが広野ICに接続する箇所と、楢葉SIC~常磐富岡IC間の富岡工区が施工中です。広野IC付近の4車線化に橋梁はありません。楢葉SIC~常磐富岡IC間の富岡工区に橋梁が1橋(紅葉川橋)あります。紅葉川橋は下部工が完了し、上部工を施工中です。また、常磐双葉IC付近でもオーバーブリッジとして寺沢橋の架設を今秋に予定しています。
追加ICとして大熊ICと常磐双葉IC、ならはSICの建設事業がありましたが、この3つについては、供用済みです。
好間、大久両トンネルは覆工コンクリートまで施工完了
大久トンネル 大規模な抑止杭を本線明かり部に配置
――代表的な構造物は
小林 トンネルでは好間トンネルと大久トンネルです。両トンネルとも既に貫通しており、覆工コンクリートの打設もほぼ完了しました。
施工の面では、とりわけ大久トンネルの北側付近は地滑りの危険性が指摘される区域に入っており、元々あった集水井に加えて、さらにもう1箇所集水井を掘って地下水位を下げて地すべりの安定性を高めています。集水井の掘削土はトンネル上の押え盛土に使用しました。
加えて、大規模な抑止杭を本線の明かり部に打ち、排土工を1万㎥程度に抑えました。同トンネルはNATM工法で掘削機械はツインヘッダーとブレーカーを使用して掘っています。地すべり区間では補助工法として長尺鋼管先受工と長尺鋼管補強工を実施しながら掘り進めました。地滑り区域のため、トンネル内計測の他、地表面も計測しながら慎重に施工を進めました。掘進速度は通常で1日4mほど、地滑り地区は同2m強ほどとなりました。
――コンクリート打設・養生の工夫については
小林 PP補強繊維を0.3%混入した中流動コンクリートを使用しました。スランプは23~24cmです。圧力センサーを仕込みセントルが沈下しないように慎重に施工しました。養生面では30m区間を湿潤状態に保ち、後続はミスト養生しました。貫通後は隔壁バルーンを置き、風の流れを抑制し、乾燥を避けるようにしています。
下部工 折木川橋で鋼管複合橋脚を採用
北迫川橋ではSPER工法を用いて現場工期を短縮
――橋梁について下部工から
小林 当該区間で最も橋長が長く、ピア高が高い橋は折木川橋です。同橋の下部工はⅠ期線と同じく鋼管複合橋脚(鋼管を鉛直に建込、周囲にらせん状にPC鋼材を配置し、コンクリートを打設する構造)を高橋脚のP2~P10に採用しました(A1、P1、P11、A2はRC)。
折木川橋
橋脚自体はスレンダーな形状ですが、靭性は通常の橋脚と同様の性能を保持できます。
コンクリートの打設には一般的な総足場を用いました。今回は時間がないため、数基の橋脚を同時施工しています。橋脚自体の形は、足場が転用しやすいように基本的にはすべて一緒の形にしています。
同様にピア高が高い北迫川橋は下部工でSPER工法を採用しました。
プレキャスト製品のセグメント(工場製作)を持ってきて積み上げていき、内部にコンクリートを打ち込み、合成構造の橋脚を急速施工する工法です。同橋では橋脚高さ約30m~40mの高橋脚となるP1~P4にSPER工法を用いて工程短縮を図りました。
北迫川橋