姫路大橋で鋼桁が広範囲に疲労亀裂
2018年度に44箇所で当て板補強
――鋼部材の疲労亀裂が起きている橋は
磯部 国道2号BPの姫路大橋(橋長252m、鋼単純合成鈑桁×6連)が該当します。主桁を中心に、当初、塗膜割れが4,223個所あり、18年度にMT調査を実施して詳細に調査しました。その結果、783個所で亀裂を確認しましたが大きな亀裂はありませんでした。
さらに、関西大学の坂野昌弘教授からの指導も受けて、厚さ2mmまでバーグラインダーで削り込みを実施し、亀裂の除去を行いました。その結果783箇所のうち88個所で亀裂を除去することができました。
――残りの695個所はどのように対応していきますか
磯部 亀裂は全て点在しているわけではなく、一つの損傷範囲に複数集まっている亀裂もあります。当て板補強で対応する工事の個所数では389個所となります。18年度に対策を始めましたが、同年度の工事では、高力ボルトの調達が難しかったこともあって、44個所の対策に留まりました。今後、残る345箇所の当て板補強についても順次施工していきます。
その中でも施工スペースが狭く、上向きにタッピング型ワンサイドボルトを施工しなければならない箇所が多く残されています。
――現在の疲労亀裂を補強しても、他の個所に力が集中し、新たな亀裂が生じるケースがままあります。神奈川県の湘南大橋の鋼床版対策では、当初当て板補強で対策しましたが、次々に亀裂が発生し、最終的にSFRCを鋼床版上に打設する補強を施しました。姫路大橋は合成鈑桁橋の主桁が主に損傷していますが、予防保全対策はどのように考えていますか
磯部 まずは現在の亀裂損傷個所について、出来るだけ早く当て板補強を行います。新たな亀裂が発生する可能性がある箇所の予防保全の必要については、構造に配慮してバランスよく当て板補強し、応力を分散させるようなことも検討して行きます。
床版防水を舗装の打ち換え時に実施
防水工種は施工性も考慮
――床版防水の設置状況は把握していますか
磯部 床版防水の設置状況について、全ての橋梁までは把握は出来ていませんが、随時、舗装が劣化した橋梁について、床版防水も設置した上で舗装を打ち換えています。
――国道2号BPは姫路BPで11万7千台、加古川BPでも9万4千台に達します。これはNEXCOの東名を超える交通量です。NEXCOは床版の耐久性を向上させるため、高性能床版防水を設置していますが、2号BPに高性能床版防水工を設置する考えはありませんか
磯部 交通量が多い国道2号BPでは、工事規制による社会的影響が大きいため、コスト以外にも施工性や耐久性なども考慮して、床版防水工の種類を決めていきたいと考えています。
――現在、国道2号BPの舗装修繕はどのような規制状況で行っているのですか
磯部 主に、夜間1車線を規制して工事を行っています。夜間でも交通量が多いため厳しい施工環境となっています。
支承取替 魚橋第一高架橋上り線で鋼製支承を免震支承に取替
ASR対策 曽根高架橋で実施
――伸縮装置や支承取替の2019年度実績および2020年度予定は
磯部 19年度は橋梁補修にあわせ損傷が酷かった伸縮装置1箇所の取替を行っています。20年度の予定はありません。支承取替は魚橋第一高架橋上り線の耐震補強工事にあわせて28基の鋼製支承を免震支承に取替えることとしており、20年度に工事を進めていきます。
――塩害や凍害、凍結融解、ASRによる損傷が生じている橋梁は
磯部 国道2号BP曽根高架橋が該当し、塩害、ASRによる損傷が桁、床版、橋脚梁部など広範囲に生じており、補修補強を進めています。
――姫路BPや加古川BPは曽根高架橋と同時期に建設された橋梁が沢山あります。こうした橋梁では曽根高架橋と同じ骨材を使った橋梁もあると思いますが、ASRによる損傷は生じていませんか
磯部 ASRが生じている橋梁は他にもありますが、損傷状況が最も大きな橋梁は曽根高架橋であり、優先して対策を進めているところです。他の橋梁も曽根高架橋で得られた知見を参考に対策を実施していきます。具体的には、床版防水の設置や伸縮装置の更新による止水性の確保を行うとともに、主桁や橋脚等において、雨水の浸透防止やコンクリート内部の水分の排出に効果的なシラン系含浸材の塗布などの対策を進めていきます。
国道29号 凍結防止剤の影響で鋼桁端部が腐食
――国道29号は積雪寒冷地に該当しますが、損傷は出ていませんか
磯部 国道29号では、凍結防止剤を冬季にはほぼ毎日散布しています。凍結防止剤の散布による塩害の影響で、鋼桁端部において腐食などが生じている橋梁がありますが大きな損傷までには至っておらす、点検等により注視しています。
――鋼橋の塗替え実績と2020年度の予定は
磯部 防食性能の向上もあり、塗装サイクルは長期化しており20年度の予定はありません。2018年度に1橋で塗替えを行いました。
――耐候性鋼材を使用した橋梁は管内にありますか
磯部 使用している橋梁はありませんが、現在整備を進めている国道2号相生有年道路等の橋梁で採用する予定です。
災害対策 のり面補強や橋脚周囲にブロック設置
――異常気象による風水害が最近起きていますが、道路分野での対応は。
磯部 急峻な地形を通る国道29号については、波賀町防災事業などでのり面防災を重点的に進めています。また、河川に近接した区間では、大雨などにより護岸が洗掘され、道路が崩れる危険性がある箇所について対策を実施して行きます。
――橋脚の洗堀防止については
磯部 19年度の補正予算で、洗堀を防止するため橋脚周りにブロックを配置するなどの設計を進めていきます。
――国道29号において河積阻害率の高い橋梁はありますか
磯部 揖保川の河川整備計画において、河川阻害率が高いために架け替えが必要となっている橋梁はありません。
NETIS登録工法を積極的に採用
――NETIS登録技術など新技術・新工法の採用やi-ConやBIM/CIMの活用について
磯部 改築事業での新技術活用として、たとえば寒中コンクリートの養生において遮熱養生工法として「ラミパックSD-W」(CB-110047-VE)を2箇所の工事で採用しています。また、コンクリートの打ち継ぎ目のブリージング対策として「ブリード・ボンド工法」(KT-110001-VE)を相生有年道路で用いています。PC桁においては、グラウトの流動性を良くして圧送しやすくするため「太平洋ハイジェクター」(KT-110037-VE)を使っています。
保全事業において、たとえば曽根高架橋で「ハイブリッドシート工法」、「プロテクトシル」シリーズを採用しています。
BIM/CIMについては、相生有年道路の有年橋の建設などで用いることを考えています。
――無人化施工の導入は
磯部 無人化施工は行っていませんが、のり面対策の設計にあたり、危険性が伴う箇所を安全かつ効率的に測量を行うためにドローンを活用しています。
――ありがとうございました