有明海沿岸道路直轄区間約35kmを所管
有明海沿岸国道事務所 (仮称)筑後川橋と(仮称)早津江川橋のふたつのアーチ橋上部工架設が完了
国土交通省
九州地方整備局
有明海沿岸国道事務所長
福崎 昌博 氏
(仮称)筑後川橋 2連のアーチ橋(P4-P8径間)の橋長は450m
上部工工事では3次元のCIMモデルを積極活用
――大川東IC~大野島IC間の構造物は
福崎 構造物では、大川東IC~大川中央IC間の陸上部の高架橋となる(仮称)大川高架橋と、大川中央IC~大野島IC間に位置し、九州最大の河川である筑後川に架かる(仮称)筑後川橋があります。
(仮称)大川高架橋の延長は約2,100mで、上部工架設はすべてクレーン+ベント工法で行い、2019年9月に完了して、現在は床版を施工しています。床版は現場打ちのRC床版で、防水工はシート系防水です。
(仮称)大川高架橋 上部工架設
(仮称)大川高架橋の現況(左:起点側から/右:終点側から)
(仮称)筑後川橋は橋長1,008mで、上部工形式はPC6径間連続中空床版橋+鋼5径間連続非合成箱桁橋+鋼4径間連続(2連)単弦中路アーチ橋+鋼5径間連続非合成箱桁橋となっており、渡河部であるP4-P8径間の450mが2連のアーチ橋です。
(仮称)筑後川橋(P4-P8径間)橋梁一般図(弊サイト掲載済み)
特徴は、緩やかなアーチ形状により、軽快感や広々とした周辺景観との調和、またデ・レーケ導流堤上の橋脚を低くして1つのアーチを橋脚上で2本に分岐するという、国内初となる単弦の2径間連続バランスドアーチ橋を採用したことです。橋梁の色彩も筑後川や筑後川昇開橋(国鉄時代に供用していた鉄道橋で国指定重要文化財)、新田大橋などの周辺風景を踏まえて、淡い桜色となっています。また、アーチの吊材も大川は家具の街で大川組子が有名ですので、それを意識してクロス配置となっています。
――(仮称)筑後川橋(P4-P8径間)の工程と施工上の特徴について教えてください
福崎 2015年2月に起工式を行い、下部工工事に着手しました。下部工における特徴は、土木遺産であるデ・レーケ導流堤中に橋脚(P6)を設置したことです。工事に際しては、デ・レーケ導流堤の一部を解体しましたが、移設ができるように表面の張り石に番号を付けて、その一部を大川市にある筑後川昇開橋展望公園の一角に復元しています。橋脚は、デ・レーケ導流堤の水制機能を阻害しないように導流堤の幅以下である4.5mで構築するとともに、高さを5.6mと抑えた上で、導流堤になじむ台形断面としています。
デ・レーケ導流堤中に設置されたP6橋脚
デ・レーケ導流堤の張り石に番号を付けて、復元できるようにした
上部工は2015年度から桁の工場製作を開始して、2017年10月にP7スプリンギング基部の架設から着手しました。その後、P7-P8径間の補剛桁架設、P6のスプリンギング・補剛桁架設(2018年3月完了)を行い、2018年4月からはP6-P7径間の補剛桁をクレーン+ベント工法(使用クレーンは200t吊クローラクレーン)でP7側から架設していき、同年7月末には桁がP6に到達しました。
P7スプリンギング架設
P6補剛桁架設
P6-P7径間架設完了
P5-P6径間の補剛桁架設は航路を確保するために送出し工法を採用し、同年8月からP6-P8の桁上で送出し設備、手延べ機組立て、送出し桁地組みを行っています。同年10月にはP5橋脚が完成しましたので、P5スプリンギング・補剛桁架設を開始して、2019年1月に完了しました。
P6-P8径間上に地組された送出し桁と手延べ機
P5スプリンギング・補剛桁架設
P5-P6径間の送出しは同年5月に行いましたが、シンクロジャッキなどを使用して送出し長195.4mを3日間で完了させたことが大きな特徴となっています。
2019年6月からはP5-P6径間のアーチリブ架設(7月完了)、同年8月からP4-P5径間の補剛桁架設(クレーン+ベント工法)とP6-P7径間のアーチリブ架設(9月完了)を行いました。その後、ケーブル設置、付属物の設置を行っています。
上部工工事でのCIMの活用も特徴のひとつです。CIM試行対象工事となっていましたので、2次元の設計図面から3次元のCIMモデルを作成して、工事計画や各種協議に活用しました。
干渉チェックや維持管理時の導線確認などにCIMを活用
CIMモデルから4次元施工シミュレーションモデルを作成。合意形成時間短縮、施工および安全管理に活用した
このCIMモデルの作成に際しては、新規の3次元モデル作成ソフトである橋梁3Dモデリングシステム「Click3D」を採用しているほか、関係者間での情報共有にCIMモデルを活用すべく、クラウド上のCIMモデルを多地点から閲覧可能な「CIM-LINK」を導入しています。