管理延長は約321km、558橋、21トンネルを管理
熊本河川国道事務所 国道57号北側復旧ルート 2020年度中の開通を目指して工事を展開
国土交通省
九州地方整備局
熊本河川国道事務所長
鈴木 学 氏
熊本河川国道事務所は、熊本地震で九州自動車道をはじめ幹線道路ネットワークが途絶したこともあり、信頼度の高い高規格道路やダブルネットワークの整備に取り組んでいる。地震が発生した2016年の夏に事業化された国道57号北側復旧ルートは2020年度中の開通を目指して工事が進められ、九州中央自動車道、中九州横断道路などの改築事業も進捗中だ。これらの整備事業や保全の取り組みについて、同事務所の鈴木学所長に詳細を聞いた。
災害に強く、通常の経済活動も機能向上が図れる整備を目指す
直轄国道3路線ほか南九道、九州中央道の約321kmを管理
――熊本地震では多くの道路が通行止めとなりました。災害復興に取り組まれてきたことをふまえて、今後の整備方針をお聞かせください
鈴木所長 現在、県知事の「創造的復興」という方針に私たちも呼応して、さまざまな事業を進めています。熊本地震では幹線道路ネットワークが途絶しました。九州道が通行止めになり、国道57号もいまだに寸断しています。北側復旧ルートの整備につづいて、中九州自動車道や九州中央道などの高規格道路を整備し、ダブルネットワークの実現に向けてしっかりと整備を進めていきたいと思います。
今後、津波をともなう南海トラフ等の巨大地震が予測されていますが、熊本には自衛隊の大きな基地である西部方面隊があります。災害時には西部方面隊が中心となって九州各県で活動すると伺っていますので、その際のネットワークの確保は重要になります。そのためにも、1日も早い整備が求められていると考えています。
熊本都市圏では、熊本市内が非常に渋滞することもあり大きな課題を抱えています。渋滞箇所数も全国の政令都市(3大都市圏を除く)のなかで一番多い状況ですので、県や市と一緒に熊本都市圏の道路ネットワークについて検討を始めたところです。災害にも強く、通常の経済活動もより機能が向上していくような整備を目指していきます。
まだ熊本地震の断層が残っていると言われている箇所がありますので、既存インフラの適切な点検を通じて対応していきたいと思います。
――管理道路と事業中の路線は
鈴木 管理延長は320.6kmです。路線では国道3号(150.4km)、同57号(95.7km)、同208号(32.7km)、南九州西回り自動車道(30.4km)、九州中央自動車道(11.4km)となります。
おもな事業中の路線は、国道57号北側復旧ルート、九州中央自動車道、中九州横断道路、熊本天草幹線道路、熊本北バイパス、植木バイパスがあります。
管内概要図と改築事業箇所(熊本河川国道事務所提供。以下、注釈なき場合は同)
国道57号北側復旧ルート 二重峠トンネルではECI方式採用で工期短縮
橋梁13橋は4橋を残し上部工完了
――各事業について国道57号北側復旧ルートから
鈴木 国道57号を復旧させるためのルートとして、別線で二重峠をトンネルで抜くという計画で、熊本地震が発生した年(2016年)の夏に事業化されました。起点は国道57号阿蘇市赤水、終点は同57号大津町引水までの延長約13kmです。
2016年11月に工事用道路などの工事に着手し、2018年夏には地元の方のご協力をいただき、用地取得がすべて完了しました。二重峠トンネルは2019年2月に貫通し、明かり部についても地盤改良等の土木関係工事と橋梁などの工事について鋭意進捗を図っています。橋梁、トンネル、土工の工事が輻輳していますが、施工者の間で調整していただきながら進めることができています。現段階では、予定通り2020年度中に開通する予定です。
――構造物比率は
鈴木 トンネルが28.6%、橋梁が9.2%で合計37.8%です。
――二重峠トンネルの施工は
鈴木 延長3,659mのトンネルで、阿蘇工区(1,820m)と大津工区(1,839m)の2工区で施工しています。ECI方式(設計段階から施工者が関与し、施工の実施を前提として設計に対する技術協力を行う発注方式)を採用したことにより、設計と工事発注手続きを同時進行して工事着手を半年以上前倒しするとともに、早期掘削工法の技術提案を受けて施工期間を1年以上短縮しています。具体的には、2017年3月に契約、同年6月に着工、2019年2月に貫通することができました。同年8月には本坑の覆工が完了し、12月には避難坑の覆工も完了しました。現在(2020年2月時点、以下同)は、監査路や電気施設等を施工しています。
二重峠トンネル概要図
ECI方式の活用
阿蘇工区側坑口/大津工区側坑口
――工期短縮の工夫について教えてください
鈴木 断面拡大した避難坑を先行掘削して、避難坑から本坑側に横坑を掘り本坑へのアクセスとして利用することで、本坑の切羽数を増設することができました。横坑は3本で、両坑口からとあわせて5箇所での同時掘削が可能となりました。
複数切羽による掘削と避難坑の比較
横坑(作業坑)分岐部(阿蘇工区)
また、避難坑の断面を幅員7.3m×高さ6.8mに拡大することで、ずり出しダンプトラックを25~30t積みに大型化できるとともに、ダンプ同士の離合も可能になり、ずり出しの効率化を図れました(通常の避難坑は幅員5.3m×高さ4.1mが一般的で、10t積ダンプトラック1台のみが通行可)。
避難坑のずり出し(阿蘇工区)/本坑のずり出し(大津工区)
本坑切羽(阿蘇工区)/本坑掘削(大津工区)
貫通式典/トンネル内現況(大津工区)
――橋梁の進捗状況は
鈴木 全部で13橋あり、そのうち3橋が同路線と交差する跨道橋となります。現在、下部工は全橋梁で完了、高尾野橋(橋長113m、PC2径間連続ラーメン箱桁橋)と新堀ヶ谷橋(橋長153m、PC3径間連続PCラーメン橋)ではディビダーク工法での架設を行っています。残りの橋梁については上部工架設が完了し、今後、黒川避溢橋の床版工と舗装を施工していきます。