耐震補強優先橋梁14橋のうち4橋が完了
鋼橋塗替えが2020年度に約1,000m2を予定
――橋梁の耐震補強の進捗状況は
藤岡 2013年に策定した耐震補強計画に基づき耐震補強を進めています。計画では橋長15m以上あるいは15m以下でも緊急輸送道路に架かる橋梁が対象になっていますが、そのうち14橋を優先的に補強すべき橋梁として位置づけ、これまでに4橋の補強が完了しており、今年度は1橋について着手予定です。
主要地方道熊本玉名線・新野出橋 コンクリート巻立て施工中と対策後
優先的補強橋梁となっている熊本港大橋(橋長97m)では設計踏査を実施して耐震性能ありと診断されましたので、補強済みの4橋に含めています。また、同じく優先橋梁である九州縦貫自動車道を跨ぐ小畑橋は、ロッキングピアなのでNEXCO西日本で補強実施済みとなっています。
今年度着手予定の1橋は、九州縦貫道に架かるさかえ橋(斜材付π型ラーメン橋)で、鉛直材の鋼板巻き立てによる補強を行う予定です。2020年度はまだ要求段階ですが、通常予算で5橋、国土強靱化3か年緊急対策で5橋を計画しています。計画は国の政策等も踏まえ改定予定で、今後も計画的に耐震補強を進めます。
――小畑橋以外のロッキングピアについては
藤岡 市管理の橋梁として、小畑橋を含めて6橋(立山橋・日向1号橋・戸島橋・北向1号橋・小山橋)あり、すべて高速道路の跨道橋です。NEXCO西日本で補強工事を進めており、完了した小畑橋以外は2020年度および2021年度までにすべて完了予定です。
――支承交換および伸縮装置取換えについて、2019年度の施工予定は
藤岡 支承交換の今年度の事例はありません。2020年度は葛山(つづらやま)橋と小磧橋の2橋で予定しています。
伸縮装置取換えは、7橋(志々水天神免1号橋・下前田3号橋・下前田5号橋・深田2号橋・笛田橋・東須原川橋・小磧橋)で行う予定です。
――埋設ジョイントへの変更はありますか
藤岡 7橋ではありません。
――2019年度および2020年度の鋼橋塗替え予定について橋数と面積、具体的な橋梁名を教えてください
藤岡 今年度は1橋のみで、泰平橋で1,071m2の部分塗替えを実施しました。来年度は安巳(あんせい橋)と行徳橋の2橋で面積は概ね1,000m2を予定しております。
米屋町1丁目本山2丁目第1号線(1級市道)・泰平橋 施工前(左)と施工後(右)
――PCB、鉛などの有害物質を含有する既存塗膜の処理方法について
藤岡 管理橋梁では現段階で基準値以上のPCBを含む塗料を使用したものはありません。鉛等の有害物質を含む既存塗膜の処理に際しては、湿式による除去等を行う予定ですが、現時点での実績はありません。
――耐候性鋼材を採用している橋梁数とその健全度は
藤岡 鋼橋110橋のうち、耐候性鋼材を使用したものは8橋あります。定期点検結果は、Ⅰが4橋、Ⅱが3橋、Ⅲが1橋となっていますが、Ⅲ判定の損傷要因は支承劣化で、耐候性鋼材は比較的健全な状態です。
――防災対策と要対策箇所について教えてください
藤岡 防災対策事業は平成8年の道路防災総点検の対象箇所について実施しています。具体的には、15m以上ののり面や勾配45度以上の自然斜面、高さ3m以上の擁壁等が点検と対策の対象です。
点検箇所数は国県道133箇所、市道118箇所で、2014~2016年に経過観察と継続的な点検をしています。その結果、要対策箇所は県道小天下硯川(おあましもすずりがわ)線の河内地区1箇所となっており、現在、自然斜面とのり面の対策工を計画中です。
――新技術・新材料の採用がありましたら教えてください
藤岡 泰平橋の塗装塗替えでは「モイストップK」を採用しました。塗膜除去の際に、既存塗膜にモイストップKを塗ることによって、ケレンの際の粉塵飛散を抑制する効果があります。同じく泰平橋では中塗り・上塗り兼用塗料「ユニテクト30SF」を採用し、塗装回数やコスト、工期、環境負荷の低減を図りました。
泰平橋塗装塗替えでは、塗膜除去時に「モイストップK」を、
中塗り・上塗りには中塗り・上塗り兼用塗料「ユニテクト30SF」を採用した
また、今年度に補修工事を実施した判定区分Ⅲの餅溝橋(橋長51m)のP1橋脚とP5上の桁部で、ひび割れに対するコンクリート補強対策として「IPH工法」を用いて施工しました。コンクリート内部に存在する空気と注入樹脂を置換することで、微細部までの充填を可能にする工法です。
一般県道熊本浜線・餅溝橋補修工事でコンクリート補強対策として採用された「IPH工法」
――ありがとうございました
(2020年3月9日掲載 聞き手=大柴功治)