2019年度は19橋の耐震補強工事を予定
鋼橋塗替えは2019年度に17橋、総面積約14,000㎡を予定
――橋梁の耐震補強の進捗状況は
宮部 緊急輸送道路上の橋梁を優先して実施しています。1996年度に緊急輸送道路として位置づけされた路線上において、「緊急輸送道路の橋梁耐震補強3箇年プログラム」の対象として耐震補強が必要となった172橋については、2015年度までに耐震性能2または3を満足する対策を完了しています。ただ、2014年度に緊急輸送道路の見直しが行われ、新たに15橋の耐震補強が必要になりました。そのうちの6橋が今年度の工事対象になっています。その他9橋については、引き続き優先的に対策を実施していく予定です。
また、対策完了の172橋のうち、耐震性能2にあげる工事は143橋を予定しています。なお、緊急輸送道路上以外の橋梁は含まれていません。
2019年度は19橋の耐震補強工事を予定しています。工事の事例として、国道218号の上司尾橋において、橋脚のRC巻立て補強を実施しています。
国道218号上司尾橋 対策前(左)と対策後(右)
――熊本地震では落橋はしなかったものの大きな段差が生じ、通行不能となる橋梁が少なからずありました。こうした段差防止工に対する手立ては考えていませんか
宮部 緊急輸送道路の耐震補強を進めるなかで、落橋防止構造や横変位拘束構造の構築を行っています。
――橋台背面の段差防止のために背面処理工の事例はありますでしょうか
宮部 ありません。
――県管理のロッキングピアは
宮部 3橋ありますが、すべて高速道路上となりますのでNEXCO西日本さんが施工して対策が完了しています。補強は、レベル2地震動に対する安全性を確保するようRC巻立て補強を行うことで壁化し、橋脚の上下端を剛結化することで対応しています。
――支承交換および伸縮装置取替えについて、2019年度の施工箇所は
宮部 支承交換は3橋、伸縮装置交換は18橋を予定しています。
――埋設ジョイントへの変更はありますか
宮部 一部あります。事例として、津留鹿本線の小坂橋において、MMジョイントDS型を採用しています。
津留鹿本線小坂橋でのMMジョイントDS型の施工
――2019年度の鋼橋塗替え予定について橋数と面積、および具体的な塗替え事例を教えてください
宮部 2019年度は繰越工事、完了工事含めて17橋で総面積約14,000m2の塗替えを実施する予定です。国道218号の平野大橋(1980年建設・橋長167m)では塗膜劣化のため、全面塗替え(塗替え面積:628m2)を実施しています。
国道218号平野大橋 施工前(左)と施工後(右)
――塗替えの際の塗膜処理は
宮部 現場状況に応じて、乾式(ブラスト)や湿式(剥離剤)で行っています。
――PCB、鉛などの有害物を含有する既存塗膜の処理はどのようにされていますでしょうか
宮部 鉛等有害物質が検出された橋は、湿式または乾式による塗替えを行っています。乾式施工を行う場合は、労働者の健康障害防止のため、必ず粉塵対策を行います。
PCBを含有する鋼橋の塗膜処理は、湿式により剥離剤を用いて除去し、鉛を含有する塗膜処理は、湿式もしくは乾式(粉塵対策が可能な場合)で塗膜を除去し、無害化処理施設にて処理を行っています。
――耐候性鋼材の採用している橋梁数とその健全度は
宮部 耐候性鋼材を使用しているのは50橋です。定期点検結果では5橋で判定区分Ⅱとなっていますが、残りの45橋はⅠでした。
――判定区分Ⅱの5橋では耐候性鋼材の劣化・損傷が見られていますでしょうか
宮部 支承の腐食や伸縮装置の劣化は見られますが、耐候性鋼材の劣化・損傷は顕在化していません。
――全国的に異常気象による土砂災害が相次いでいるなかで、防災に対する取り組みと、防災対策の要対策箇所数と進捗状況を教えてください
宮部 熊本地震後、ダブルネットワークの構築とミッシングリングの解消が重要だと切実に感じました。道路管理者の立場として、それらは確実に進めていかなければなりません。同時に、道路を健全に維持していくことも重要なことです。
具体的には、1996(平成8)年度に実施した道路防災総点検の結果をもとに、日常的な道路パトロール結果や緊急輸送道路への指定状況などを踏まえ、優先順位を設定しながら防災対策に取り組んでいます。
県では、予防保全への転換を図り、管理瑕疵事故の削減、計画的かつ効率的な維持補修を実施するため、2014年3月に「道路防災施設維持管理計画」を策定しました。2006年度に改定された点検要領に基づき、フォローアップ点検(要対策箇所の見直し)を実施しており、2019年度に完了する予定です。
現在、要対策箇所は2,049箇所で、2018年度末時点で722箇所(35.2%)の対策が完了しています。要対策箇所のうち、緊急輸送道路については836箇所のうち、322箇所(38.5%)の対策が完了しています。限りある予算の中で、対策の選択と集中を考えた時に、どのような緊急輸送道路から手をつけていくのかという課題はあります。
最終的には、道路をつくるというのは手段で、県民の方々が使いやすくなければなりません。また、つくった道路が途絶することは、生活に直結するのであり得ないことですので、インフラ整備の重要性は根幹にかかわるものとして考えています。
――防災対策の具体的な事例は
宮部 2018年度に完了した落石対策の3箇所があります。国道267号の人吉市古仏頂町地区での高エネルギー吸収型のポケット式落石防護網工(L=48m)、国道445号の相良村四浦地区での高エネルギー吸収型のポケット式落石防護柵工(L=45m)、県道宮崎芦北線の芦北町宮崎地区での現場打ち法枠工(L=131m)です。落石の発生源の位置や大きさなどの現場条件に応じて、工法検討を行い、実施しています。
国道267号人吉市古仏頂町地区の対策前と対策後
県道宮崎芦北線芦北町宮崎地区の対策前と対策後
――新技術・新材料の活用事例は
宮部 2018年5月に開通した三角大矢野道路の一部である天城橋建設工事の補剛桁架設で、架設時に発生する断面力を低減するため、斜吊りケーブルでアーチリブを支えながら補剛桁を直下吊りするという、過去に例のない台船曳航直下吊り工法を採用した事例があります。
天城橋 補剛桁架設
――ありがとうございました
(2020年2月28日掲載 聞き手=大柴功治)