黒川両岸にインクラインを設置して資機材を効率的に搬出入
外周と中間帯鉄筋のプレファブ化で工程を約30%短縮
――渡河部の進捗状況は
大榎 下部工については4基のうち3基の施工が完了して、残るPR2の工事を進めています。上部工についてはPR3からの片持ち張出架設に2019年10月から着手しました。
阿蘇大橋(渡河部)概要図
――2020年度開通目標という限られた時間のなかで、深さ約100mの急峻な谷に架橋しなければならず、大変な工事を進められていると思います
大榎 災害復旧事業ですので、安全かつ速やかに施工することが一番の課題になっています。年末年始などを除き3交代24時間態勢で施工していることに加えて、工程短縮のためにさまざまな工法と技術を採用しています。
そのひとつがインクライン工法です。先に申し上げたとおり、架橋地は阿蘇外輪山で唯一の切れ目の箇所にあり、年間を通して風の通り道となります。強風時においても資機材の搬出入に影響を与えないように、黒川両岸にインクラインを設置しました。長さ(移動距離)は左岸(南阿蘇側)が120m、右岸(立野側)が110m、台車面積は9m×14m、最大積載重量60tで、積載重量は国内最大級のものとなります。
インクラインの概要
左岸(左写真)と右岸(右写真)のインクライン(大柴功治撮影)
――基礎工は
大榎 橋脚の基礎は大口径深礎杭を採用しています。橋台(A2)は深礎杭です。PR1がφ11m、杭長32m、PR2がφ16m、杭長29m、PR3がφ15m、杭長23mとなっています。
――ケーソン基礎は検討しなかったのですか
大榎 地質調査で安全性が確認できたことと施工性を考慮し、大口径深礎としました。
――工程短縮の取り組みは
大榎 急斜面での施工となるため、掘削範囲が抑えられ、大きな重機を必要としない竹割型土留め工を採用しています。柱状節理の風化が進行して崩壊する可能性があったため、それを抑える目的もありました。
竹割型土留め工の施工(左)。柱状節理の崩壊抑制も兼ねて同工法を採用 (右写真:大柴功治撮影)
大口径深礎杭と橋脚の施工では、外周の帯鉄筋と中間帯鉄筋のプレファブ化にも取り組みました。構台上で高さ90cmごとにプレファブ化した後、吊り込み冶具を使用して深礎杭や橋脚に吊り込みます。これにより、軸方向鉄筋の組み立て作業と並行して帯鉄筋のプレファブ化が進められるとともに、高所での作業を削減でき、約30%の工程短縮を図ることができました。
外周の帯鉄筋と中間帯鉄筋のプレファブ化
橋脚高は最大97m。クライミングシステム工法で躯体を施工
張出架設では600t・m級ワーゲンを採用して工程短縮
――橋脚についても同様に教えてください
大榎 橋脚高はPR1が49.5m、PR2が97m、PR3が75mです。PR1とPR3は完成していて、PR2は19ブロックのうち、12ブロックまで完了(2019年12月18日時点)しています。
PR2とPR3では、工程短縮のためにクライミングシステム工法を採用しています。この工法は、足場と型枠を一体化して油圧ジャッキでクライミングするシステムで、下方から足場を立ち上げる必要がないため、工程短縮が図れるとともに、高所での足場の組立が不要となるため、安全な施工が可能になります。クレーンによる型枠材の吊上げと吊り下ろしの工程も削減できます。
――1ブロックのサイズとPR3のブロック数は
大榎 1ブロックは約5mです。PR3は15ブロックとなります。
クライミングシステム工法
PR3の施工
――上部工の張出架設に着手したとのことですが
大榎 張出架設には超大型ワーゲンを採用しています。標準は200t・m級ワーゲンですが、600t・m級の超大型ワーゲンを使用することにより、張出ブロック数を全体で78ブロックから54ブロックに、24ブロック減らすことができ、工程短縮につながります。
標準型ワーゲンと超大型ワーゲンの張出ブロック数比較
PR3からの張出架設①(大柴功治撮影)
PR3からの張出架設②
――架設工程は
大榎 PR3からA2とPR2の両方に張り出していき、その後超大型ワーゲンを転用し、PR2からPR1とPR3へ同様に張り出していきます。
阿蘇大橋 設計・施工会社
完成予想図