橋梁293橋のうち約半数が供用後50年を経過
トンネルは昭和30年代に建設した古い箇所も
――保全事業について現在の管内橋梁・トンネルの内訳は
渡邊 橋梁は全体で293橋あり、橋種別では鋼橋が94橋、コンクリート橋が199橋です。コンクリート橋に数えているもののうち、60箇所がカルバートボックスです。
橋梁の供用年次別橋数は、1930年代が2橋、50年代が13橋、60年代が103橋、70年代が67橋、80年代が27橋、90年代が31橋、2000年代が43橋、10年代が7橋です。
同延長別は、10m以下が88橋、11m以上30m以下が104橋、31m以上50m以下が36橋、51m以上100m以下が38橋、101m以上200m以下が16橋、201m以上300m以下が10橋、301m以上が1橋となっています。橋梁の約半数が供用後50年を経過しています。
路線別では、凍結防止剤を多量に散布する国道5号が90橋、日本海沿岸地域であり塩害の影響を大きく受ける229号が129橋と2路線で大半を占めます。次いで230号が17橋、276号が29橋、337号が4橋、393号が24橋となっています。
――トンネルは
渡邊 全体で63箇所を管理しています。工種別は、在来工法が22箇所、NATMが36箇所、NATM+在来工法が3箇所、開削工法は2箇所です。
供用年次別は、1950年代が2箇所、60年代が7箇所、70年代が3箇所、80年代が10箇所、90年代が14箇所、2000年代が23箇所、10年代が4箇所です。豊浜トンネルの崩落事故以降に整備したトンネルが3分の2を占めています。それでも、防災事業で取り組んでいる塩谷トンネルは昭和30年代の建設です。島牧防災の2トンネルも同様です。先ほど倶知安余市では新稲穂トンネルを掘っていますが、並行箇所に稲穂トンネルがあります。稲穂トンネルも昭和30年代の建設で、背の高い国際物流コンテナが通れません。新稲穂トンネルに早期着手しているのは、その状況をできるだけ早く解消したいという事があります。
延長別では、100m以下が3箇所、101m以上500m以下が24箇所、501m以上1,000m以下が15箇所、1,001m以上2,000m以下が14箇所、2,001m以上3,000m以下が6箇所、3,001m以上4,000m以下が国道229号雷電トンネルの1箇所となっています。
橋梁 Ⅲ判定が57橋、Ⅱ判定が65橋
プレテンPC橋で主ケーブルの腐食も
――点検を進めてみて、管内構造物の劣化状況について詳しくお答えください
渡邊 橋梁点検は2018年度で、定期点検が一巡しています。Ⅲ判定が57橋、Ⅱ判定が65橋でした。主な損傷としては、鋼橋では伸縮部からの漏水に起因する腐食・防食機能の劣化、PC橋は塩害や漏水による剥離・鉄筋露出、ひび割れが多く確認されています。
孔食が生じ、断面欠損に至っている鋼桁も存在する
部位ごとの損傷としては、桁は上記の損傷、床版は防水機能の未施工に起因するコンクリートの土砂化、下部工では剥離・鉄筋露出、ひび割れ、地覆については塩害および車両の衝突などによる剥離・鉄筋露出、ひび割れ、高欄は塩害による腐食が確認されています。
――PC橋でも鉄筋露出やひび割れが生じているのですか
渡邊 昭和30~40年代に建設した日本海沿岸部の橋梁、とりわけプレテン橋でそうした損傷が発生しています。発錆限界値を超える塩化物イオンが主ケーブルまで到達している事例もあります。
プレテン桁の損傷
プレテン桁のケーブル損傷/ポステン桁の損傷①
ポステン桁の損傷②
撤去したポステン桁の断面
――床版の損傷対策は
渡邊 積雪寒冷地においては、舗装が傷むと防水工を未設置であったこともあり、床版の傷みも進行しています。国道276号の宿内(ソコナイ)橋では床版を取替えました。
宿内橋の取替え前の床版損傷状況
同橋の床版撤去状況
床版を取替え、舗装まで完了した状況
トンネル Ⅲ判定が12箇所、Ⅱ判定が49箇所
NATMで建設した個所でも落下箇所が増加傾向
――トンネルは
渡邊 Ⅲ判定が12箇所、Ⅱ判定が49箇所となっています。
在来工法で建設されたトンネルは、供用開始から30~70年が経過し、老朽化による劣化が顕著になっています。
おもな劣化原因としては、目地部の温度収縮や貧配合コンクリートの集中などによる覆工の目地部の浮きや剥離、乾燥収縮などによる覆工コンクリートのひび割れ、水環境の変化や排水設備の経年劣化、遊離石灰による排水機能低下などによる覆工コンクリートの目地部またはひび割れ箇所からの漏水、凍結防止剤の通行車両による巻き上げや潮風に起因した塩害による附属物の腐食が生じています。
在来矢板工法で建設したトンネルの損傷状況(左:付属物の腐食、右:覆工コンクリートのひび割れ)
在来矢板工法で建設したトンネルの損傷状況②
(左:覆工目地部のうき・剥離、右:目地部またはひび割れ箇所からの漏水)
――NATM工法によって建設されたトンネルの損傷状況は
渡邊 NATM工法で建設されたトンネルは供用開始後10~30年経過しています。供用後20年以上経過したトンネルにおいて劣化箇所が増加傾向にあります。
NATM工法で建設したトンネルの損傷状況(左:付属物の腐食、右:覆工コンクリートのひび割れ)
NATM工法で建設したトンネルの損傷状況②
(左:覆工目地部のうき・剥離、右:目地部またはひび割れ箇所からの漏水)
主な劣化原因は、横断目地部の温度収縮などによる覆工コンクリートの横断目地部のうき・剥離、乾燥収縮などによる覆工コンクリートのひび割れがあります。また、覆工コンクリートの横断目地部またはひび割れ箇所からの漏水は、ロックボルト頭部や吹付コンクリートの凹凸、上半支保工の底版突出部の保護処理不足などによる防水シートの損傷や、排水溝など施工時や覆工コンクリートの打設作業時における排水溝の破損、排水設備の経年劣化や遊離石灰などによる排水機能低下などが原因と考えられます。
在来工法と同様に塩害による附属物の腐食も散見されます。