i-Con 登川大橋で3Dプロダクトモデルを採用
銀山大橋P6橋脚でCIMを使って工夫
――3Dモデリングの活用は
渡邊 ここでは「シンフォニー(Symphony)」を用いて3Dプロダクトモデルを作成し、製作や施工上のチェックに役立てています。(以下のCGは日立造船提供)
(左)Symphonyを用いて製作した3Dプロダクトモデル(日立造船提供、以下3Dモデルは同)
(右)CIMモデルによる効率的な照査を実施している
(左)施工段階でのCIMモデルの効率的な活用(プロダクトモデルから、工場製作に必要な図面、指示書、加工用NCデータを作成し、それを元に鋼板へのケガキ(マーキン)、切断、穴開けを自動化した)
(右)CIMモデルによる効率的な照査の実施(桁架設時のクレーン動作を再現した3Dシミュレーションを作成し、作業手順を確認した)
(左)桁架設時のクレーン動作を再現した3Dシミュレーションを作成し、作業手順を確認した
(右)架設順序を反映した3D架設ステップシミュレーションを作成し、地組位置、クレーン配置等のヤード使用計画の妥当性を確認した
施工段階でのCIMモデルの効率的な活用
――下部工などでもi-Conを遣ったりしていませんか
渡邊 銀山大橋P6橋脚の現場で、施工計画の段階において、CIMを活用して、現地の取り合いや仮設的なもの(足場やクレーンを置く位置など)を工夫しました。また鉄筋の自動算出を行っています。また、労務者に対してVRを使った高所作業時の安全指導を行っています。
下部工施工中の銀山大橋
――鉄筋の自動算出とは
渡邊 設計図面の鉄筋に属性情報を与えて、自動算出させているものです。また、東北地方整備局が行っているコンクリート打設の際のチェックシートについてP8橋脚の打設の際に利用しています。
――施工状況把握チェックシートで品質は向上しましたか
渡邊 導入した業者の意識も高く、非常に品質の高いものが出来上がりました。特にチェックシートで指摘するような事項もおきませんでした。
新稲穂トンネルは11月から掘進開始
橋梁は予備設計済みが28橋、詳細設計済みが18橋
――新稲穂トンネルの進捗状況は
渡邊 R側について11月中旬から掘進を始めています。基本的には両側からNATMで掘り進めていきます。L側は未発注です。施工は飛島・中山JVと西松・草別JVです。発注工期は平成2019年2月~2023年2月までの4年間です。
新稲穂トンネルの掘進状況
――水の湧出や蛇紋岩系の岩質の悪さなどはありませんか
渡邊 事前調査では蛇紋岩もなく湧水もそれほどないと見込まれていますが、掘ってみないことには何とも分かりません。
――仁木トンネルは
渡邊 未発注です。
――来年度発注予定の橋梁は
渡邊 数橋を着工予定です。
――来年度発注予定のトンネルは
渡邊 未定です。
――橋梁の設計進捗状況は
渡邊 予備設計済みが28橋で、詳細設計済みが18橋です。トンネルは仁木トンネルも詳細設計済みです。
新稲穂トンネル 中断面トンネルを2本作り、避難用トンネルを省略
第二バンノ沢川橋 高橋脚(62.5m)上の張出施工
――特徴ある形式を有するトンネルおよび橋梁について
渡邊 新稲穂トンネルは、分離2車線の大断面本線トンネルに加え、交通量が多い長大トンネルであるため、防災等級AAに対応した避難用トンネルを併設する大小2本のトンネル構造でした。しかし長大トンネルであるため、避難用トンネルといえども延長は長く、工期・コストとも長く、高くなることは否めませんでした。
そこで上下線を分離した片側1車線の中断面トンネル(LR両側に行き来できる)を2本計画することで、コスト縮減を図りつつ、大幅な工期短縮が可能なトンネル構造となりました。災害発生時には、反対側のトンネルが避難用トンネルとして機能するほか、相互のトンネルを連絡する避難通路は、排煙シミュレーションを行い必要な配置間隔を検討するなど安全性に配慮されたトンネルとなっています。完成2車線の高規格幹線道路で、上下線を分離した片側1車線の中断面トンネルを採用した例は極めて珍しいものです。
橋梁は第二バンノ沢川橋があります。施工予定個所は積雪寒冷地(最低気温は-18℃、最大積雪量は177cm)であり、交差条件として第2バンノ沢川、私道3箇所、沢2箇所のハイピアの長大橋になります。桁高は最大6mにも達します。一部付加車線を設置するため、幅員が変化(12~15.5m)する構造になります。張出し架設を冬季間、山間部の高橋脚(MAX62.5m)上で行うため、資材搬入計画、打設計画が重要となります。また、マッシブな柱頭部は、特に寒冷期において温度応力が発生しやすく、耐久性に影響がないようにひび割れをコントロールしなければなりません。現在は予備設計が完了した状況で、今年度に詳細設計を行っています。
――これほどの高橋脚となると昇降足場付き型枠支保工が選択肢に入りますね
渡邊 そうですね。
コンクリート打設 なるべく条件の良い時期に施工
含浸材塗布やエポ鉄筋を活用 鋼桁端部には溶射も
――打設時期、特に冬季は非常に厳しいですが、ひび割れをコントロールとはどのようなことを指しますか
渡邊 柱頭部は鉄筋が過密であり、コンクリートが回るような(流動性が高い)配合にしますと、発熱量も膨大なものになります。打設は、夏秋の温度条件が厳しい季節ではなく、春秋の比較的条件の良い季節に施工することがベストであると考えています。
上部工についても、基本的にはワーゲンで養生しながら施工するため打設可能なのですが、冬季に施工するとどうしてもグラウトが凍ってしまいます。ですので、冬季はケーブルの緊張までは行いますが、グラウトの注入は暖かくなってからの施工となります。
――凍結防止剤由来の塩害対策は
渡邊 凍結防止剤の散布の影響などは、壁高欄などは、エポキシ樹脂塗装鉄筋の使用で対応しています。橋の構造自体では被りの確保で対応しています。また、シラン系あるいはけい酸塩系含浸材の塗布によるコンクリートの表面保護も行っています。
――鋼桁については
渡邊 桁端部に溶射を施すことによる耐久性の向上を図っています。
――桁端への防食は開発局全体で行われているものですか
渡邊 凍結防止剤の散布量によると思います。当管内は豪雪地帯であり、多量の凍結防止剤を散布しています。そのため特に損傷の受けやすい桁端部に手厚く溶射を施しているものです。
桁端部への溶射施工
倶知安余市道路に関しては、耐候性鋼材を採用した橋梁はゼロです。
――凍結防止剤を多量に散布しますが床版防水はNEXCO管内と同じグレードⅡにしないのですか
渡邊 現在のところ通常のグレードでの施工を考えていますが、今後の技術および耐久性を考慮して変わってくる可能性もあります。
――計画交通量は
渡邊 計画交通量は1日当たり6,600~12,500台を想定しています。
塩谷トンネルは掘進を完了し、覆工コンクリートを施工中
島牧防災 2本の別線トンネルを建設へ
――防災上の観点からの事業は
渡邊 当建設部は、過去に豊浜トンネルで岩盤崩落事故(1996年2月)を経験しています。トンネルの大規模な落盤によってバス乗客など20人の命を奪った痛ましい事故です。この事故を教訓に管内63箇所のトンネルのうち40箇所以上は豊浜トンネルの事故以後に整備を進めました(更新した)。国道5号の一部および229号という海岸部の道路延長はおよそ200kmあり、そのうち約2割に当たる40km超をトンネルが占めていて、42箇所のトンネルが海沿いに集中しています。
現在事業中の防災事業は2箇所あります。
1つは小樽市内の塩谷防災です。延長 約1.5km、総事業費70億円の事業で、2011年度に事業着手しました。昭和30年代に建設したトンネルであり老朽化が進んでいます。また、海外付近に道路があり海岸浸食に伴う崩落が発生した場合、偏土圧によりトンネル崩壊へ直結します。さらにトンネル内にもカーブが入っているなど、線形も悪いため、別線で道路及びトンネル(塩谷トンネル、延長1,063m)を新設することにしたものです。新トンネルは7月に貫通しており、現在は覆工コンクリートの施工を進めています。
12.6mの内空断面、高さ8mの空頭を有し、国際コンテナ車も走れる片側1車線(車道部7m、歩道部2ⅿ)のトンネルとなる予定です。
――施工上の特徴は
渡邊 掘削はNATMを採用しています。全線機械掘削で自由断面掘削機を用いています。
覆工コンクリートは低セメントの高流動コンクリートを採用しています。当初は8割が鉄筋区間と見なされていましたが、地質の詳細調査の結果、D2の一部がD1に見直されたため、鉄筋区間は66%にまで減らしました。コンクリートの打設に当たっては棒バイブや型枠バイブを用いて適切に締固めを行うとともに、アクアカーテンを用いて1か月間養生する(下写真、井手迫瑞樹撮影)など、品質には気を配っています。
――島牧防災は
渡邊 延長約6.1km 総事業費が170億円の事業です。
2016年度から事業着手しています。岩盤崩落等による危険箇所の解消と災害発生時における沿線集落の孤立の解消のための事業になります。山側に1本1km程度の別線トンネル2本を整備するものです。
今年度は測量設計を実施しています。