2018年度末では約300橋の修繕が完了
角島大橋ではひび割れ補修工を施工中
――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況は
森岡 2012年3月に策定して、策定時の対象橋梁は3,075橋となっています。点検結果に基づいて緊急輸送道路などを中心に修繕を進めていますが、点検を進めれば修繕の対象となる橋梁も増えてきています。修繕実施数としては2017年度末で272橋、2018年度末では約300橋となっています。2022年度での目標橋梁数は500橋です。
――現在対策中のおもな橋梁は
森岡 下関市豊北町神田と角島間の海土ヶ瀬戸に架かる角島大橋があります。橋長1,780m(最大支間長102m)の7+8+6径間連続PC箱桁+3径間連続鋼床版箱桁+5径間連続PC箱桁橋で、2000年に完成しています。完成当初は通行料金が無料の離島架橋としては日本最長でした。2016年度に点検を実施して健全度判定区分はⅡでしたが、RC橋脚に0.2mm以上のひび割れが確認されましたので、ひび割れ補修工を実施しています。
角島大橋全景と橋梁概要図
角島大橋の補修事例(表面保護工)
――補修方法は
森岡 ひび割れ注入工となります。0.2mm程度が主なものなので基本的には注入工として、局部的にひび割れが大きいところは断面修復を行っています。
――損傷はひび割れのみで、鉄筋露出などは発生していませんでしょうか
森岡 そこまでの損傷は発生していません。
――損傷原因と推察されることは
森岡 日本海側に架橋されていますので、飛来塩分による塩害が推察されます。調査では部分的に含有塩分量が超えている橋脚が1基ありました。
――補修工事着手時期と完了予定は
森岡 2016年度から工事に着手しています。海上部であり冬季風浪の影響により施工時期が限られていますので、分割して施工をしています。
耐震補強は2017年度末で110橋が完了
耐候性鋼材は90橋で採用
――耐震補強の進捗状況は
森岡 233橋を対象に緊急輸送道路や離島架橋を優先的に行っています。2017年度末で110橋が完了しており、2022年度末までに140橋の対策を完了させる予定です。いずれも耐震性能2を満足する形で速やかに機能復旧ができる対策を行っています。
――具体的な対策方法は
森岡 橋脚巻き立てによる補強となります。
耐震補強の事例(一般県道福浦港金比羅線 彦島大橋)
――県管理のロッキングピアは
森岡 ありません。
――支承や伸縮装置の今年度の取替え予定は
森岡 最近では支承取替えの実績はなく、今年度も予定はありません。伸縮装置については橋梁全体の補修工事のなかで、取替えていく予定です。
――今年度の鋼橋塗替えの予定は
森岡 主要地方道萩三隅線の橋本橋など4橋で総面積1500m2を予定しています。塗替え事例としては、1963年に建設された国道490号の田ノ小野橋(橋長約73m、幅員7.8m)で、点検の結果、塗膜劣化と鋼材腐食が進行していることから、2016年度に約1,500m2の塗替えを実施しています。
国道490号 田ノ小野橋(施工前と施工後)
――PCB、鉛などの有害物を含有する既存塗膜の処理はどのようにされていますでしょうか
森岡 処理については適切に国の通知に基づいて行っています。現在、有害物質を含有する橋梁の調査を進めており、含有が確認された場合には、原則湿式による作業を実施しています。
――山口県では鋼橋に原則、耐候性鋼材を採用しているとのことでしたが、採用橋梁数と健全度は
森岡 90橋で採用しています。早期措置段階のⅢの橋梁はありません。
――異常気象による大規模災害が多発しています。このような状況に対してのお考えと具体的な対策を聞かせてください
森岡 昨年は7月豪雨があり、本県では10年間で5回の豪雨災害がありました。県としては災害から県民の生命、財産を守るために、重要インフラ機能の維持強化を進めていて、被害の防止と最小化を図ることが極めて重要であると考えています。国の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」等の予算を活用しながら今後起こりうる大規模災害に備えて、集中的に対策を実施しています。ただ、要対策箇所に加え、突発的な崩落箇所などの対策も同時に行っていかなければならないのが現状です。
――新技術・新材料の活用事例は
森岡 活用事例は現在ありませんが、特に、点検や診断、修繕・更新でコスト縮減や工期短縮などの効果が見込まれるようなものがあれば、積極的に検討したいと思っています。