道路構造物ジャーナルNET

2019年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑦高田機工

鉄構部門の営業強化へ 部門連携、組織体制強化も

高田機工株式会社
代表取締役社長

髙橋 裕

公開日:2019.09.30

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。今回は、高田機工の髙橋裕社長の記事を掲載する。

 ――2018年度業績は
 髙橋 17年度の橋梁部門の堅調な受注に伴う和歌山工場の生産効率上昇や、18年度の鉄構部門での大型案件の設計変更増額などから、売上高185億円、経常利益10億円と業績予想を上回る結果となった。
 橋梁事業では年度繰り越しの受注残も多い中、昨年9月からは台風21号で被災した関空連絡橋の損傷桁1連を製作(一部再利用)することで復旧工事にも関わった。製作現場の和歌山工場も一部被災の状況下でありながら、無事故で予定通りに計画を進め、地域インフラの復旧に貢献できたことは当社にとっても貴重な経験となった。また、2年連続で東北地方整備局と中部地方整備局から工事成績優秀企業に認定されるなど、多くの工事で優秀工事表彰を受ける成果を上げた。
 一方、鉄構事業は黒字ではあるものの、売上割合は全体の約18%、受注状況も全体の約12%にとどまる結果となった。今後、大阪を中心とした関西での鉄骨需要拡大が期待される中で、鉄構部門に関しては営業面を中心に早急な対策を行う必要があると考えている。
 ――今年度の見通しは
 髙橋 日本橋梁建設協会の資料では、国内の新設鋼道路橋の受注実績は昨年度21万tに達したが、今年度は第1四半期で2万tに満たないという。高速道路会社からの新設鋼道路橋の発注量も減っており、更新工事など保全関係に資金のウエイトがシフトしている。厳しい状況だが、新設鋼道路橋の受注とともに、橋梁ファブとして鋼橋上部の保全に関わる各種工事の受注に向けた体制も整えていきたい。
 鉄構事業では、首都圏での大型再開発案件に加え、関西も2025年に大阪・関西万国博覧会を控えるほか、IR誘致など地域全体での鉄骨需要増加が見込まれている。まずは受注済みの工事を安全・確実に進めつつ、営業・生産部門双方における組織体制の強化を図りたい。
 ――設備投資計画は
 髙橋 今後数年をかけて行う、ブラスト工場の更新と品質向上を目指した全天候型塗装工場の新設計画に着手し、効率向上のためのヤードレイアウト変更工事を並行して行う。全天候対応型の塗装工場は製品の品質や耐久性向上のほか、周辺環境対策の面からも取り組むべき設備投資と捉えている。また、当社では連結部の精度確保のため、橋桁の出来形寸法に合わせたボルト孔あけを行っているが、さらなる品質向上のため連結板用のNC一軸ドリルマシンを更新し、生産効率を見直したレイアウトの変更を行う。
 近年では、トラック輸送の規制強化などの影響もあって海上での鋼板入荷や製品の輸送が多くなり、和歌山工場の第二岸壁の使用頻度が増えているため、岸壁の維持修繕を行う。
 このほか、和歌山工場移転後25年を経た変電設備の更新や、鉄構工場の生産効率向上に向けたH形鋼開先加工機の更新を行う。


梁瀬1号橋(群馬県)

 ――新事業・新製品は
 髙橋 中日本高速道路とFRP製の新型壁高欄ハンドホール「フラップ」を共同開発し、特許を出願している。下面の勾配を変更するとともに空気抜き孔を多数設け、ハンドホール直下のコンクリート充填性を大幅に改善した。軽量で、予防保全を考慮したハンドホールとなっている。このほか各種制振デバイス、高架橋上下線の遊間部からの落下防止用アルミ製塞ぎ板「カルバン」など、自社開発品の販売促進を進めていく。
 製品開発は製造部門の総合的な技術力向上とともに、新規事業進出への足掛かりにもなる。直ちに売り上げに大きな効果をもたらすものではないが、今後も現場の声をもとにした商品開発を積極的に進めたい。
 ――課題と対策・戦略は
 髙橋 今年6月に社長に就任してから、各部門間の積極的な情報交流、連携強化を進めている。これをベースに、まず製造面では橋梁部門と鉄構部門が臨機応変に仕事量の増減に対応できる体制を整備し、効率化につなげたい。さらに営業・管理部門を含めて各部門が日常的に情報交換、連携していく流れを作る中で、新規事業も含めた取り組みを意欲的に進め、魅力ある会社づくりで人材確保など恒常的な課題にもアプローチしていく。
(聞き手=八木香織、文中敬称略 2019年9月30日掲載)

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